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ホバーボードの魔法紋の契約


 それは、ジューネスティーンも理解しているのだろうが、ホバーボードには少し問題がある様子だ。


 いい顔はしていないジューネスティーンは、仕方無さそうに答える。


「一応、ジュエルイアンさんと相談してみないと、勝手に作るなと言われているので、……」


 ホバーボードに関する製造や技術の権利は、ジュエルイアンとその商会、それとジューネスティーンとシュレイノリアとの間に契約があるのだ。


 パワードスーツや、シュレイノリアの魔法や魔道具の類はジュエルイアンと技術提供という形で権利を売っている為、無闇矢鱈に、今まで作った物を、何処でも作って渡すことはできないのだ。


「うーん、ジュエルイアン絡みか」


 まいったなといった感じで、少し考えるカインクムだが、ホバーボードについては諦めきれないようである。


「分かった。 じゃあ、ジュエルイアンの了解は俺が取るから、だから、作ってくれ」


 カインクムは、妥協案を出すのだが、それでもジューネスティーンは、いい顔はしない。


「じゃぁ、了解が取れたら、作ります」


 ジューネスティーンが意外に硬い事を言ってくる。


「今、作ってくれないのか」


 カインクムは、ガッカリするので、ジューネスティーンがなだめる。


「さすがにこればかりはジュエルイアンの了解が無いと、今回の支払いとか旅費とかを頂いていますので、こればかりは、ちょっと」


「そうか、しょうがない、じゃあ、嬢ちゃんのこれを俺にくれ」


 カインクムは、子供の我儘のような事を言い始めた。


 アリアリーシャのホバーボードを譲って欲しいと言ってきたのだ。


 ジューネスティーンも、流石にその発言には驚いた。


「さすがにそれは無理です」


 諦めたのかと思ったら、アリアリーシャのホバーボードをよこせと言ってきたので、それも即答で断るのだが、カインクムの様子は、まだ、何か無いかと考えているようだ。


 だが、手に入れるアイデアが、無いと思ったのか、ため息を一つつく。


「うーん、仕方が無い、ジュエルイアンに了解を取る。 取ったら、連絡するから、直ぐに作ってくれ」


 カインクムは、仕方なさそう言う。


 そんなジューネスティーンとカインクムのやり取りが終わり、カインクムがガッカリしていると、シュレイノリアが2人に話しかけてきた。


「今ある物に、魔法を付与するなら問題無い」


 そのシュレイノリアの提案に驚いたのは、ジューネスティーンだった。


 ジューネスティーンは、シュレイノリアの言ってきた内容を考えて、少し眉を動かす。


 自分には、抜け道が思い付かなかったのを、シュレイノリアは、気がついていて、大丈夫だと言ったので少し驚く。


 だが、シュレイノリアの事だから、何か秘策があるのかと考えたのだが、ジューネスティーンは、本当に大丈夫なのか、心配そうにシュレイノリアに聞く。


「って、おい、大丈夫か」


「大丈夫、契約は、このホバーボードと同じ魔法付与した物を作ることだった。 厳密にはホバーボードについてだ。 出来ている物に魔法付与は契約に入ってない。 それに、重いものを乗せても軽く動かせるようにするだけなら、完全に契約から外れる。 それに、重い物でも軽く動かせる物が、この工房にだけ有ったとしても、ジュエルイアンには分からない」


 今の話を聞いて、ジューネスティーンは、考えている。


 カインクムは、黙って、ジューネスティーンとシュレイノリアの話を聞いていた。


 カインクムとすれば、良い方向に話が進んでいるのだが、ジューネスティーンの結論次第では覆る可能性があると考えたのだろう。


 そのジューネスティーンの反応を心配そうに見つめている。


「浮かせないで、軽くするだけってことか」


 腕を組んで、右手を額に当てて人差し指で額をトントンと叩く。


 契約の内容を思い出して抜け道を確認している様子である。


「それなら、行けるなぁ。 シュレ、荷物を積んでも軽く動かせるだけで、浮いたりはしないんだな」


「浮かない」


 ジューネスティーンは、カインクムに向き直って、結論を伝える。


「この家に有る台車に魔法紋を刻むなら大丈夫です。 浮いたりしませんが、重い物を乗せても、軽い力で動かせるようにするだけでも良いですか」


 心配していたカインクムの不安が一気に吹き飛んだ。


 カインクムは鍛冶屋なので、重量物を扱う。


 重量物を運ぶのに台車を利用しているが、それでも物によっては、押すのに一苦労する事もある。


 それが、軽くなるのであれば、重量物を乗せれても、動きはスムーズに動こかせる。


 工房で作った装備などを店に運ぶのにも、フルメタルアーマーのような重量物を運ぶのには、苦労している。


 また、重い物を乗せると、どうしても車輪の痛みが速くなり、車輪を交換する必要が出てくる。


 だが、台車に乗せた重量物が軽くなれば、移動させるのも楽になるし、台車の車輪の寿命も延びる。


 カインクムは、その妥協案でも大いに助かると考えたのだろう、表情が明るくなると、ジューネスティーンに答える。


「あぁ、良いとも、それで、問題無い。 重い物の移動が、簡単に出来るならそれで良い」


 そう言うと、カインクムは、工房の隅の方から、手押しの台車を持ってきた。


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