パワードスーツを装着するアリアリーシャ
インナースーツに着替えたアリアリーシャが、恥ずかしそうに工房に入ってきたのを、カインクムは、一瞬見ると、慌てて目を逸らした。
年頃の女子の体にフィットするようなインナースーツに超ミニスカートと大きな胸を小さなベストで覆うだけの姿だったこともあり、あまりジロジロと見る物ではなさそうだと思った様子で、パワードスーツの方に目を逸らしていた。
アリアリーシャは、顔を少し赤くして、工房の中を歩いてパワードスーツの所に来ると、頭に専用の兜を付けてから、パワードスーツの背中に自分の魔力を流した。
すると、パワードスーツは腰の後ろが開き、背中が中央から開いた。
腕にはジューネスティーンのような盾は装備しないので、作業台の上に腕を置くように開かせていた。
パワードスーツは出入りする時、上半身が、少し前屈みになるため、重心が前に移る。
そのため、前に倒れないように作業机の上に手を置くような形で、パワードスーツの背中を開いた。
ふくらはぎの第二装甲が床と平行になるまで跳ね上がると、アリアリーシャは、その上に足を掛けて登ると、開いた背骨に両手を掛けてから腰に足を入れた。
一旦、開いたパワードスーツの腰にお尻を置いてから、滑るように足を入れると、前屈みになっているその先にある両腕の穴の中に胸を入れた。
パワードスーツの腕の中に自分の腕を入れると、アリアリーシャは、魔力を流した。
すると、パワードスーツの上半身は、背中が閉じて、上半身を立てるようにし、腰の隙間も閉じた。
腰と背骨の接続の音がした。
パワードスーツの形に戻ると、今度は、内装パーツであるインナーの中に空気が流れ込む。
シューっと、空気の流れるような音がすると、内装が膨らみアリアリーシャの体とパワードスーツの隙間を埋めるのだ。
ただ、アリアリーシャの小さな体もだが、パワードスーツの頭が無く、顔がむき出しとなっていた。
小さな体に、パワードスーツを装備すると、その頭の小ささが目立ち、パワードスーツと頭のアンバランスさを感じてしまった。
ただ、それについては、工房の中の誰も指摘するようなことは無く、微妙な表情をして、アリアリーシャのパワードスーツ姿を見ていた。
内装パーツに空気が入る音を聞いて、ジューネスティーンが、パワードスーツが稼働状態になったと判断すると、アリアリーシャに指示を出した。
「じゃぁ、姉さん、適当に動いてみて」
アリアリーシャは、ジューネスティーンの指示に従って、指を閉じたり開いたり、肘を曲げる、腕を上げる、足を左右順番に上げてその場で足踏みをする、体をひねる。
パワードスーツの手は、人の手を覆うグローブではなく、腕の中にアリアリーシャの手が有り、その動きを確認してパワードスーツのロボットアームが同じ動きをするように作られている。
指の複雑な動きに連動した装甲を考えるより、内部で動く指の動きに連動したロボットアームの方が、手の保護になるので、手はパワードスーツの腕の中で自由に動かせるようになっている。
アリアリーシャが、一連の動作を行なうとと、今度は、作業机の周りを歩いて一周していた。
その一連の動作が終わると、アリアリーシャは、ジューネスティーンを見た。
「大丈夫みたいですぅ。 重さもぉ、感じませんん。 いい感じですぅ。 それにぃ、変なぁ、引っ掛かるような感じも無いですぅ」
その話を聞いてジューネスティーンも緊張を解いたようだ。
問題がなさそうだと聞いて、ジューネスティーンは安心した。
ジューネスティーンのパワードスーツが、稼働中とはいっても、今組み立てたパワードスーツは、アリアリーシャのものなので、身長も大きく異なる事から、何か欠陥が有ったとなると、残りのパワードスーツに何らかの影響が出ないとも限らないのだ。
設計を修正する必要に迫られたら、計画は大きく遅れる事になる可能性もあったので、アリアリーシャの答えに安堵したのだ。
そんな事を思いつつ、メンバー達は、アリアリーシャの動きを確認していたのだが、カインクムは、初めて組み立てたパワードスーツが、ちゃんと動作するのか気になっていたようだ。
「でもぉ、私のぉ体よりぃ硬いのでぇ、ちょっと違和感がぁ、ありますぅ」
硬いは、体の硬さを言っているようだ。
体を反らしたりして、体をひねったりしている様子から、動かした時にどれだけの曲がり具合なのか、動きの限界を確かめたのだろうが、自分の限界より、パワードスーツの可動域が狭いことに、少し違和感を持っているようだった。
ジューネスティーンは、その指摘に苦虫を噛んだような表情をした。
「それは、外装骨格の限界だから、今は、パワードスーツの性能に慣れてもらうしかないな」
何だか、言い訳をしているような答えをした。
「はいぃ。 これ以上のぉ柔らかさをぉ追求するのはぁ、ジュネスの今後の課題ですぅ」
更に機動性を上げられるようにと、柔らかく言われて、ジューネスティーンは困ったような表情をした。
「あまり、ハードル上げないでね」
ただ、アリアリーシャは、その少し困った様子のジューネスティーンの表情を見て、小悪魔的な微笑を浮かべた。
「うふ」
ちょっと優越感をもつたのか、アリアリーシャは思わず声が漏れたようだ。




