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パワードスーツの魔法紋


 ジューネスティーンと、シュレイノリアが言っていた、制御については、体の各部が様々な動作をしている事を言いたかったのだが、カインクムには上手く伝わってなかったようだ。


 体の重心を移動して、その方向に足を出す。


 手や腰、体、頭、体の全ての部分を動かすことで、歩くという動作が成立しているのだが、カインクムには、上手く伝わらなかったようだ。


 そして、カインクムは、歩く事について、考えている。


(自分が、どこに向かうか。 とりあえず、エルメアーナの所に行く事を考えてみると、城門から出て街道を行く。 城門に行くまでには、何箇所も曲がる必要がある。 それに城門を出る際の手続きなどを行うとなれば、そこで止まる。 また、街道にしても直線では無い。 途中で曲がったりしている事を考えれば、ただ進むわけではない。 道沿いに曲がりながら進む事になる。 右に曲がったり左に曲がったりとなる。 ジュネスはその事を言いのか)


 カインクムは、なんとなく理解できたのか、ジューネスティーンの顔を見た。


「まあ、確かに目的地に移動する場合は、道沿いに歩くからな。 道が、真っ直ぐで、平な道とは限らないし、途中に障害物も有るだろうから、そういった物を避けて歩く事になるから、右へ左へ曲がりながらになるってことか。 それに止まる。 そういった当たり前の事を、魔法紋が、中の人に合わせて、動くようになっているってことか」


 そう言って、自分の中で納得しているのを、ジューネスティーンは見て、微妙な顔はするが、直ぐに元に戻る。


「鍛治仕事で熱い鉄を叩く時に、微妙に力加減を調整するが、それが、さっき言っていた制御に当たるのか」


「多分、それが一番分かり易いと思います。 鍛治仕事でなく、ただ叩くだけなら、誰でもできると思いますが、目的の形にするには、微妙に力加減を変えて叩くと思います。 歩くや走るにしても、地面に石が有ったりすれば、それを避けることになりますけど、小さければ跨いで、大きくて跨げない時は、左右どちらかに移動します。 そういう時は、体の動きも微妙に変わります。 それを魔法紋で制御しているのです」


 ジューネスティーンの説明に、シュレイノリアが更に説明を付け加える。


「移動が、特に複雑。 浮いたパワードスーツを、走る・歩く・止まる・曲がるについて、術式に組込む。 複雑。 信号を受けて思い通りに動かす。 全ての術式を入れるので、小さな文字で描く必要があった。 だから、魔法で描くようにした」


 そう言っている間に、ジューネスティーンが、腕のパーツを一つ箱から出して持ってくる。


 持ってきた腕のパーツには、もう魔法紋が描かれていたので、それをカインクムに見せる。


 カインクムは、魔法紋を凝視する。


「あまり、複雑そうには見えないな。 それに書いている文字の数も、それ程多いとは思えないな」


 カインクムは、描かれた魔法紋の感想を述べた。


「その模様と言うか、描かれている円や図形ですけど、その線に見えている部分は、小さな文字なんですよ。 書ききれない呪文を図形のラインとして書き込んでいるんです」


 見た目は、ただの線に見える。


 しかし、よく見ると、線が太かったり細かったりしているように見えるのだが、細い線なので、肉眼では読み取る事ができない。


「じゃあ、そのパーツの魔法紋の、模ように見えるところは、術式が描かれているのか」


「そうなります。 高性能の拡大鏡でも有れば、読む事は可能ですが、人の目には、ただの丸や線の模ようにしか見えないですね」


 肉眼で見ただけでは、模様のように描かれた線は、拡大すると文字になっていると、ジューネスティーンは言う。


 カインクムは、顔を近づけて目を凝らしてみるが、ただの線にしか見えないのだろう、読み取ろうと必死に見ている。


(所々、僅かに線の太さが違っているようにも思えるが、普通に線を描けば、その程度の、線の太い・細い程度は有るだろう。 その程度の物にしか、目視では確認できないな)


 そんな事を考えてみ見ていたので、カインクムは目が痛くなった様で、手で目を抑えると背伸びをしながら、独り言のように喋り出す。


「はぁーっ、恐れ入った。 この考え方も前世の断片的な記憶のお陰って訳か」


「多分」


 考え込むカインクムは、ふと閃いたようにして、シュレイノリアに話しかける。


「嬢ちゃん、そのうちで構わないが、今度、魔法紋を金属に描く方法を教えてもらえなか。 今日は、組立をするから、こっちに集中するので、落ち着いてからで構わないが、うちのやつに、教えてもらえいだろうか」


 カインクムは、フィルランカに、魔法紋を描く魔法を、教えてもらおうと、シュレイノリアに話をする。


(俺は、魔法が使えないので、教えてもらっても、話を聞いただけで終わってしまうが、フィルランカなら魔法が使える。 ひょっとしたら、魔法紋を魔法で描くことができる可能性があるかもしれない。 教えてもらって損は無い。 もし、それが駄目だったとしても、現状と何ら変わらないが、もし、フィルランカが魔法紋を描けるようになったら、自分の作る、剣も防具も、魔法紋付与の特殊な物に変わってくる)


 駄目で元々という気持ちで、カインクムはシュレイノリアに頼む。


「描く方法は簡単。 でも、描く魔法紋の術式は複雑。 落ち着いたら伝授する」


 シュレイノリアは、カインクムの申し出を快諾するので、カインクムはあっさりし過ぎのような気もするのか、一瞬、顔が引き攣ったように見えた。


 ただ、自分の言い出した事なのだからと思えば、良かったと考えた様子だ。


「ありがとう、嬢ちゃん」


 そう言って、カインクムはシュレイノリアに笑顔を向ける。


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