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約束の朝


 カインクムとの約束の日の朝、ジューネスティーンは、自分たちが使っている、4階の部屋の窓から外を見た。


 そして、顔を向けずに視線だけで下を見ると、昨日と同じ男が、向かいの金の帽子亭の入口にある、ラウンジに座って、金糸雀亭の入り口を気にしていた。


 今日はパワードスーツの組み立ての為、カインクムの店に行く予定となっている。


(見張りを引き連れて、隣の道具屋から入る予定だけど、毎回道具屋に入っているのを見られるのは、怪しまれるはずだな。 ……。 なら、今日は、あの男を、まいてしまった方が得策だろうな)


 ジューネスティーンは、向かいの金の帽子亭の店の入り口付近のテラスに座っている、昨日の監視役を見つつ、そんな事を考えていたのだ。




 ジューネスティーン達は、朝食を済ませると、ロビーの受付に居た、金糸雀亭の女主人であるルイセルに聞いてみる事にしたようだ。


「見張られているみたいなので、裏口から出たいのですが、よろしいでしょうか?」


 ジューネスティーンは、不安そうにルイセルに聞くと、彼女は慣れた様子で答えてくれた。


「ああ、分かっています」


 そんな事かと、当たり前のように、笑顔をジューネスティーンに向けた。


「ジュエルイアン様から、そう言う事もあると、聞いていますから、厨房の出口を使ってください。 裏道を使って行けば、店の前の道を使わなくても、大通りに出れます。 ああ、裏道は、業者用の通路なので馬車も通れる位、広いので問題は無いと思います。 それと、外の人に、何か聞かれたら、今日は部屋にいるように言っておきます」


 そう言って、厨房へ向かうためにカウンターから出て、ジューネスティーン達を厨房に向かう扉の前まで案内してくれた。


「ありがとうございます」


 お礼を伝えて、厨房にジューネスティーン達は入って行った。




 厨房に入ると、そこには、ジューネスティーン達を、ジロリと見る男性が居た。


 料理を行なっているインセントが、何しに来たという顔をして、ジューネスティーンを見るのだった。


 ジューネスティーンは、初めて見る男の人に困ったような表情をした。


「あのー、ルイセルさんに言われて、厨房の出口を使わせてもらいたいのですが、……」


 ジューネスティーンが言うと、その男の人は、何か言いたそうにしていたのだが、何も言わず、ジューネスティーン達を見ていた。


 すると、厨房の奥から、女の人が現れた。


「兄さん、どうかした?」


 ルイセルがさっきと違う方向から顔を出してきたと、ジューネスティーン達は思ったようだ。


 それにしては、早すぎるのではないかと思ったのか、不思議そうな表情を()()()()の方に向けた。


 ジューネスティーン達は、ついさっき受付のカウンターで、ルイセルと話をしていたので驚いたのだ。


(ルイセルさん、いつの間に厨房の奥に移動したんだろう?)


 ジューネスティーン達は、全員にそんな疑問が頭に浮かんだのだ。


 そんな態度を見た()()()()が声をかけてきた。


「ごめんなさい、私と姉さんは双子なの、よく似ているから間違われるんですけど、そういえばあなた方が、ここの食堂で食べている時、私と姉さんが一緒に出た事無いわね。 私の名前はアイセル、よろしくね。 それで、あっちに居るのがインセントで私達の兄です。 ちょっとと言うより、かなり無口なので、お客さん達に話す事は無いと思うけど、料理の腕は良いから安心して」


 そう言うと、アイセルは、ちょっと考えるような表情をした。


「あ、そう、私は、食材の買付けとか、兄さんの手伝いとかしているのよ」


 アイセルも、予めジューネスティーン達の事は聞いて知っていることもあり、ましてや、このホテルを手配してくれたジュエルイアンからの紹介であることも知っているので、何か有ったと思ったようだ。


「それで、厨房に何の用かしら」


 ジューネスティーン達は、ルイセルと双子の妹のアイセルだと聞いて、全員が納得できたという顔をした。


 ジューネスティーンは、自分の用事を済ませる事にしたようだ。


「ルイセルさんに、厨房のドアから出れば裏道に出れると聞いたので、……」


「あぁ、お客さん達、ジュエルイアン様の、お知り合いの人達だったわね」


 アイセルは、そう言って納得すると、さっきよりも更に親切そうに笑顔を向けた。


「なら、厨房から外に出るドアはあそこよ。 その先に塀があって、塀の脇のドアから裏道に出れるよ。 それと、この辺りの都市計画は、ジュエルイアン様が行なっているんだ。 裏道は尾行だったら確実に見つけられるようになっているから安心して使って」


 そう言ってドアの方を指し示した。


「ああ、そのドアは、内からは開くけど、外からは鍵がかかっているからね。 ドアだけ閉めてくれたら、それで構わないよ」


 ジューネスティーン達は、アイセルとインセントにお礼を言うと、さっさと厨房を出ていった。




 塀のドアを出ると、裏通になるが、宿の裏通りと言ってもそれなりの広さは確保されている。


 荷物の搬入用の馬車も通れるようになっているので広さも確保されている。


 宿屋とその隣の建物も塀が繋がっており、人が隠れるスペースがどこにも無い。


 住宅街であればゴミを集めるスペースなり、物置のような建物も有るが、完全に商業施設のみとした事で、そういったものは回収業社が、それぞれの建物を回って回収してくれるため、裏道には何も障害物は無かったが、その裏道を、大通りからは見えないように、裏道に入るにはどちらも、クランクを通って入るようになっているので、裏道に入ったら、何処に人がいても確実に分かる。


 また、その周りの建物には、ジュエルイアンの商会とそこに所属する人物達で固められているので、ここの道を通る人は、何らかの形でジュエルイアンの息がかかっているのだ。


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