ギルドから狩場への移動
ジューネスティーンは、ルイゼリーンの話を聞き、人気の低い狩場を特定した。
冒険者は、狩場で他の冒険者とのバッティングを嫌う。
それは、冒険者の縄張りの可能性もあるので、不要なトラブルを避けようということなのだ。
「なら、そっちの方で魔物のコアを集めて来ます」
そう言うと、メンバーと一緒にギルドを出て、西門に向かう事にした。
ギルドに入っても、金糸雀亭から付いて来た男は、そのまま、ギルドに入って来て、少し遠巻きにしてジューネスティーン達を伺っていた。
その男は、かなり慣れた感じではあるが、一人で尾行している為、不自然な動きが所々で出てしまっていたので、ジューネスティーン達からは、尾行だと気づかれてしまっている。
しかし、それについて、ジューネスティーン達は、何もするつもりは無いようだ。
男の方としても、本気の尾行なら、人数を掛けて、所々で入れ替わって尾行を悟らせないようにするのだが、この男は一人だけで尾行を行なっていたので、ジューネスティーン達としたら、耳の良いアリアリーシャが居るので、その足音や、動いた時に出る音を確認し、自分達の動きに連動するように聴こえるかどうかで、尾行に気が付くのだ。
ジューネスティーンは、シュレイノリアに、顔を近づけると小声で話しかける。
「あの尾行者が念話を使ったら、内容を確認しておいてくれ」
それに対してシュレイノリアは頷いただけで答えた。
念話を使える程の監視者なのかは、ジューネスティーンには分からないが、その可能性がないとも限らないので、シュレイノリアに注意を促したのだ。
監視者には、ジューネスティーン達が気が付いてないように振る舞って、何食わぬ顔で尾行をさせる。
それによって、ジューネスティーン達は、監視者の様子をチェックするのだ。
シュレイノリアは、魔素を検知できるので、魔法の痕跡から、魔法の念話程度なら、読み取ることが可能なのだ。
意識して、その様子を聞ければ、監視者に対する対応も考える事ができる。
帝国軍の監視なら、東の森の調査の許可を得るために、それなりの情報を与えなければならないのだ。
その加減をするためにも、監視者が、どのような動きをして、報告をあげているのかを知るのは、重要になってくるのだ。
ギルドを出て、しばらく歩いていると、カミュルイアンがシュレイノリアに話しかけてきた。
「なあ、ちょっと、教えてもらいたい事があるんだけど、歩きながらで構わないから話を聞いてもらえないか?」
珍しい光景である。
ジューネスティーンは、意外だと思うが、カミュルイアンが、積極的に話をしてくるのは、良い事だと思ったようだ。
「構わない。 話してみろ」
シュレイノリアは、ぶっきらぼうに言うが、カミュルイアンは、少しモジモジしている。
それを見たシュレイノリアが、不思議そうに見た。
「それは、周りに聞かれてはまずいのか?」
「いや!そんな事は無い……。 だけど、ちょっと恥ずかしいかも」
何だか、はっきりしないカミュルイアンに、シュレイノリアは、とんでも無いことを言い出した。
「何だ、愛の告白なら断る。 じゃあ、話は終わりだ」
そのシュレイノリアの発言にメンバー達は肝を冷やした。
びっくりしたカミュルイアンは、慌ててその話を否定する。
「ちっ、違うよ。 魔法についてだよ。 だけど、ちょっと恥ずかしかったから、それだけだよ」
「だったら、最初から魔法について教えて欲しいと言えば終わった。 お前は変なところで、目的の言葉が抜けている。 だから誤解されるんだ」
カミュルイアンは、魔法の話がしたいと分かりメンバーはホッとするが、ジューネスティーンだけは、シュレイノリアを少し驚いたようにみていた。
(シュレのやつ、ちゃんとした話もできるんだなぁ)
ジューネスティーンは、シュレイノリアには言えそうもない事を思ったのだ。
その事を、もし、口に出したら、また、持っているロットで、脇腹を抉るように突かれた事だろう。
「じゃあ、少し歩きながら話そう」
そう言うと、ジューネスティーンの横に居たシュレイノリアは、ジューネスティーンより少し下がってカミュルイアンと並んで歩き出す。
それと入れ替わってレィオーンパードが、ジューネスティーンの横に来て、ジューネスティーンに話しかける。
「珍しいね。 カミューが魔法について、話を聞きたいなんて、珍しい事もあるね」
「ああ、この前の東の森の魔物と対戦した時に、何か感じるものがあったんじゃ無いのか。 魔法の話を聞きたいって事だから、付与魔法を強化したいとかじゃ無いのか」
「ふーん」
レィオーンパードが、気のない返事をするので、ジューネスティーンは、その時の事を指摘する。
「お前、あの時、最初の一撃が、魔物に入らなかったんだけど、それについてはどう考えているんだ?」
ジューネスティーンに痛いところを指摘された。
嫌な事を言うなと、顔に出るとレィオーンパードは答える。
「ああ、あれは、あんなに硬い鱗に覆われているとは思わなかったからだよ。 情報不足だったんだよ。 だけど、その後に姉さんが斬るから刺すに変更できたんだから。 次は、オイラも剣で刺すことにするよ」
ちょっと膨れたように言う。
「そうだな。 次は期待しているからな」
「分かったよ」
レィオーンパードは少し膨れながら、ジューネスティーンに答えるのだった。




