時間潰し
カインクムの店に顔を出した翌日、ギルドに顔を出すため、金糸雀亭を出る。
パワードスーツの組み立ては、治具の作成のために、1日掛かるので、今日は、ジューネスティーン達は、時間が空いてしまったのだ。
その時間を利用して、ギルドの仕事を請け負うか、周辺の魔物の様子を知る為に狩に出る事にしたのだ。
ジューネスティーンは、胸に革鎧を当てただけの物と、膝下までのロングブーツ、腕に金属の板を数本組み込んであるグローブを付けて、左腰に太刀と脇差を付けている。
他のメンバーも同じ様な装備だが、前衛職であるレィオーンパードとアリアリーシャは、両方の腰に短刀を1本ずつ付けて、アンジュリーンとカミュルイアンは、剣は腰に1本短剣を付け肩に弓矢と弓筒を付けている。
シュレイノリアは、魔法職の帽子、腰を隠す長さのマントと、50センチ程のロットを持っている。
装備は、全員が軽装備である。
宿を出ると、向かいの宿の前にいる男が目に入るが、気にせず、そのままギルドに向かう事にする。
金糸雀亭に泊まって、翌日から、ジューネスティーン達を監視している男が、今日も、金糸雀亭を出た、ジューネスティーン達の、後をつけて来るのに気がついた。
アリアリーシャが、ジューネスティーンの背中を指で挿す。
ジューネスティーンは、後ろを向いて、アリアリーシャに話しかけながら笑顔で声を掛ける。
その時に視線を合わさないように、後ろの男を確認している。
(あの歩き方は、冒険者とは違う。 軍人みたいだ)
そう思いつつ、ジューネスティーンは、何食わぬ顔で前を向く。
カインクムとの約束は翌日なので、今日はギルドに行って訓練がてら狩をする事にしたのだ。
(1日で完了出来る依頼はあるだろうか?)
仕事があれば引き受けるつもりで居るのだ。
ギルドに入ると、ジューネスティーンは、まっすぐルイゼリーンのところへ行くと、付いて来た男もギルドに入って来て、受付のカウンターにジューネスティーン達が向かうのを確認すると遠巻きにカウンターの角の方で待つような態度をして、こちらの話を伺う様な態度をしている。
ジューネスティーン達が、入り口から入ってくるのを、見ていたルイゼリーンの視線は、僅かに後ろの男に視線を向けるが、直ぐにジューネスティーンに視線を戻す。
ジューネスティーンは、ルイゼリーンに挨拶をする。
「おはようございます。 ルイーゼさん」
そう言って、胸の前で、跡をつけて来た男の方に、男に、見えない様に人差し指を差す。
「おはようございます。 今日はどの様なご用件でしょうか」
その先に男がいる事は、分かっているルイゼリーンは、横目でも見ようとはせず、笑顔を一度作ってからジューネスティーンに話しかけた。
「この近所で、何か依頼は有りますか。 今日、1日でこなせる様な仕事があれば引き受けたいのですが」
ルイゼリーンは、冒険者が顔を出す前に、全ての依頼は、確認している。
そして、この時間であれば、渡ってしまった依頼も把握しているので、その中にジューネスティーン達が、1日でこなせる様な依頼は無かった事を知っている。
それに、そんな都合の良い依頼は、他の冒険者に渡っている。
「あいにくですが、今日の依頼は全部、他の冒険者に渡っており、今は御座いません。 ただ、あなた達には、簡単に倒せる弱い魔物なら、城壁を出たところにも居ますので、そちらの魔物のコアなら持って来て頂ければ、相場で引き取る事も可能です」
ジューネスティーン達は、お金を稼ぐ必要に迫られてない状況なので、朝食をとってゆっくりと出てきたので、都合の良い依頼は無くなっているのだ。
しかし、一般的な冒険者なら早めにギルドに行って、我先に、効率よく稼げる依頼を引き受けてしまう。
依頼にあぶれた冒険者は、魔物のコアを集めに出る。
それも高額なコアを選ぶ様にするので、高額コアの魔物の狩場は、多くの冒険者が居る。
「じゃあ、今日はそうします。 ところで、城壁の外には、冒険者同士の縄張りみたいなものは有りませんか。 あまり、トラブルにはなりたく無いので」
ジューネスティーンは、他の冒険者とトラブルを避けるため、人気の無い場所をルイゼリーンに尋ねた。
「そう言う事なら、城壁の外なら特に問題は無いと思います。 今は、あの辺りの魔物のコアを、買い取って欲しいというパーティーも、殆どいませんので、多分、今日は、西門の先なら、空いていると思います」
魔物の発生する魔物の渦は、必ず同じ魔物が発生する。
魔物によって、そのコアの価値も変わってくる。
ギルドは、魔物のコアを使い、労働力の提供を行なっている。
需要の多い魔物程、魔物のコアの買取価格は高くなる。
場合によっては、弱い魔物でも、市場が必要としていれば、ランクの高い魔物のコアより高く売れるものもある。
そんな狩場は、必ず、冒険者がいる。
逆に、需要の少ない、高ランクの魔物については、その国の依頼によって、冒険者へ依頼という形で、魔物の処理を行なっている。
増えすぎると困る魔物も居るので、需要の少ない魔物は、時々、国から依頼書が発行される。
冒険者は、それを確認して処理する事になるのだ。




