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ジュネスの剣の作り方


 ジューネスティーンは、カインクムに、剣の作り方について話を始める。


「剣は、大きくは、芯に軟鉄を使って、刃には硬鉄を使っています。 その2種類の鉄を、それぞれ、熱くして叩いて伸ばしたら折り曲げて重ねてまた叩く、それを、何回か行って中に含まれる不純物を叩き出していくんです。 それが終わったら、柔らかい鉄に、コの字型の硬い鉄を合わせて、叩いて剣の形にします。 それと、硬鉄を叩く時は、藁を使って暑く熱せられた表面を何度か擦り付けてあげます」


 鉄の純度はそれ程高くは無い。


 中には、様々な元素が含まれているので、熱して叩く事でその不純物を取り除く。


 不純物は、叩いた時に火花のように飛び散り徐々に鉄の純度が上がる。


 その工程を行った後に2種類の鉄を貼り合わせているのだ。


 剣で斬る時は、手元から的に触れた部分には、てこの原理が働くので、硬い物を斬る時には荷重が掛かり、その荷重に耐えられなければ剣は折れてしまう。


 それを補うために軟らかい鉄にコーティングするように硬い鉄を充てる。


 ジューネスティーンの説明はさらに続く。


「その後は、剣の焼き入れを行う事で刃の部分を更に硬くするのと、更に剣に弧を描くようにする事で、折れにくくしてます。 なので焼き入れの際は、刃には薄く棟には厚く土を塗って焼いてから一気に水の中に入れるのです。 これによって、薄く土を塗った部分は焼き入れが入り、硬い部分が更に硬くなります。 棟は厚く土を塗ってますので、刃より温度が急激に下がらないので、刃側よりゆっくり温度が下がります。 その時の下がる温度の違いによって、棟の部分は刃の部分より縮みます。 自分は刺す剣より斬る剣の方が好きなので、その時に変えた土の厚みで鉄の冷める温度差で曲がりを作ってます。 それで刃は硬く芯は軟らかい剣になってます。 もし、硬度を調べることが出来れば、硬度の違いは、数十倍の違いが出ると思いますよ」


 ジューネスティーンの説明を頭の中で組み立てながら、その状態の素材が硬い物を斬る事を想像するような態度のカインクム。


(どんなに硬い物でも、細く長くすれば簡単にしなる。 コの字にして、叩いて伸ばしていくと鎬の部分は硬い鉄は薄く、刃の部分は硬い素材が残る。 中心部から棟にかけて軟鉄になるのか、それに、焼入れは瞬間的に温度を下げるが、焼き鈍しはゆっくり下げる。焼入れの際に土を表面に塗る厚みで刃と棟の温度低下を調整するって所も面白い。 この方法は、他にも転用可能かもしれない。 剣としてはどうだ。 一般の剣なら剣の硬さのお陰で柔軟性が無いから衝撃には弱いが、中心部から棟に掛けて軟鉄を使っている事で、切った時に当たる衝撃をその素材が衝撃を吸収するのか、それで衝撃を剣が吸収してくれるってわけか。 面白い)


 カインクムはジューネスティーンの話の内容から自分なりに頭の中で整理をしているようだ。


 それを見て、ジューネスティーンが、少し心配そうな顔をする。


「チョット簡単過ぎましたか?」


 カインクムに聞くが、カインクムは右掌をジューネスティーンに向ける。


「いや、大丈夫だ。大凡見当はついた。直剣は剣での斬り合いには向いてないのは、斬った時の衝撃をモロに受けるからだ。 通常は剣の硬度を上手く見つけるのが刀鍛冶職人の腕なのだが、あんちゃんの作り方なら、その両方を備えられるから、刃は硬く、それでいて芯の軟らかさが斬撃を吸収するから、折れ難くと斬れ味を両立した剣になっているんだな。 これなら剣の幅がこの程度でも分厚い直剣とも渡り合えるな。 剣が軽量化出来れば剣速も上がるから、斬れ味も良くなる。 俺の剣とこの剣で戦ったら、剣士の腕が互角なら、俺の作った剣が折れる、いや、剣を斬られてしまうかもしれん」


 カインクムは真剣に語るので、ジューネスティーンはその結論に少し困ってしまう。


「さすがにそれはどうかと思いますけど……」


 苦笑いしつつ答える。


「ありがとう、あんちゃん。 この御恩は親子共々忘れない。 新たな技術を簡単に教えてくれた事、決して忘れない。本当にありがとう」


 そう言って、ジューネスティーンに深々と頭を下げてきた。


 その姿を見て驚くジューネスティーンは、慌てて話をする。


「頭をあげて下さい。 これだけの説明で理解してくれたのですから、御主人の腕は超一流の鍛治職人だと分かりました。 こちらとしても、それだけの腕を持った人に仕事をお願い出来るのですから、こちらこそ、願ったり叶ったりです」


「ありがとう、あんちゃん」


 一時はどうなるかと後ろでヤキモキしていたフィルランカが、このやりとりを見て目を拭っている。


 メンバーの女性陣も安堵している。


 おそらく、話が長くならなくて良かったと思っているに違いない。


 そんな事を気にせず、頂いたお茶菓子を食べ終えて、満足しながらお茶をすする男二人も居た。


「今度、空いた時間に今の話の内容を試してみるよ」


「そうですか? 娘さんも今の話から自分で試行錯誤して作ってました。 それが大ヒットしていると言ってました」


「なら、あんちゃんのお陰で娘も完全に独立できたみたいだな。ありがとう」


 カインクムはジューネスティーンにお礼を言う。


 そして南の王国で独り立ちした娘の事を思いを寄せたように黄昏れてしまうのだった。


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