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過去の転移者の資料 2


 メイリルダは、転移者のリストと資料を照らし合わせながら確認をしていた。


 エリスリーンは、転移者の少年が見ている転移者の資料が気になっているようだったが、適当な資料を手に取って中身を確認するような様子をしつつ少年を観察していた。


 メイリルダは、正面にいるエリスリーンの様子を気にする事もなく、ひたすらリストと資料を照らし合わせていた。


(リストには、死亡した年も書いてあるわ。直近の5組の転移者は、生きているみたいだけど、それ以前は、亡くなっているわね。まあ、年齢的に、……。ああ、その前はの人は、87歳か。……。まあ、そんなに高い年齢になってしまったら、生きていくだけで精一杯よね。こんな人に10歳の子供の世話なんて任せるわけにはいかないわね)


 リストを見て、その人の資料を確認するが、軽く目を通して気になる部分だけをチェックすると、直ぐにリストを確認していた。


(うーん、転移してきた人は、ほとんどが人属ね、その次が亜人か。ドワーフとか、エルフとかって、少ないのね。ふーん。あ、エルフが居た。これは、ギルド暦616年、あ、計算が面倒ね。今が、801年だから、184、……。ああ、185年前だから、今は、195歳なのか。エルフのこの年齢なら、……。人属の43歳位かしら。この人なら、お母さんに丁度良い年齢みたいね。それに、死亡とは書かれてないから、まだ、生きていらっしゃるのよね)


 メイリルダは、その資料を手に取ると、その人の資料を見た。


(へー、この人エルフの里に入って、普通のエルフとして生活しているのね。 でも、エルフって男性が著しく少ないから、女性エルフが後から里に入るのは、大変なはずなのに大丈夫だったのかしら)


 そして、チラリとエリスリーンの顔を見るが、直ぐに、資料に視線を戻した。


(あ、でも、この人出産しているわ。それに子供の名前はウィルリーン、で冒険者をしているのか。ん? 何処かで聞いた名前? ……。まっ、いいか)


 そして、それ以前の転移者には、長命なエルフもドワーフも載ってはいるが全て死亡となっていた。


 冒険者となった者が、ほとんどだったのだが、中には、一般人として暮らしている人も居た。


 そして、資料を見ると人属や亜人属は1年前後で寮を出ていき、それぞれ、思い思いの国に移って活動をしていたようだが、冒険者として稼ぎ、そして、ある程度の年齢になると引退して隠居生活をするもの、たまに、大きく稼いだことで、土地を購入して農園の経営を行うものもいた。


 それ以外には、ギルド本部に入って、その後は、自身の断片的な記憶を呼び覚ましたことで、新商品の開発をおこなっている者などだった。


 この冒険者と、ギルド本部に入った者が転移者の行く末だった。


 ただ、先程のエルフのように、一般人として生活しているものもあれば、貴族の側室や商家の後妻になったりした女性もあった。


 だが、そのように一般人のように暮らす人は少数だった。


 メイリルダは、リストを中心に、過去の転移者が、その後どのような人生を送ったのかを確認していた。




 メイリルダは、最近の転移者の方から見ていたのだが、少年の持っている資料を確認して無かった事に気がついて少年が見ている資料を覗き込んだ。


 それは、一番古い資料で少年は食い入るように見ていた。


(まだ、見ているわ。……。でも、なんでなんだろう。文字は読めないはずなのに、なんで、こんなに真剣な表情で見ているのかしら。……。私なら、何も分からない文字の本なんて、ザーッと見たら終わりよね)


 メイリルダは、不思議そうに少年を見るが、少年は資料をジーッと見つめていた。


 そして、そんな少年が気になり少年と資料からリストを見た。


 不思議そうに少年を見るメイリルダを、エリスリーンが気がついた。


「お前も気がついたようだね」


 エリスリーンが、メイリルダに声をかけると、メイリルダは、顔を少年からエリスリーンに向けた。


「さっきから、ズーッと、同じ資料を、その少年は、見ているんだよ。文字は読めないはずなのだけど文字には興味があるみたいだね。……。これは、ひょっとすると言葉を話すのも文字を書くことも早いのかもしれないね」


 メイリルダは、エリスリーンの言葉を聞いて、だから何だというような表情をしていた。


 その様子を見てエリスリーンは、メイリルダが、今の説明だけでは理解できてないと判断したのか笑顔を向けた。


「話をしたり文字を覚えさせるなら、子供用のカルタがあるだろう」


「ああ、木札の表に絵が書いてあって裏に文字が書いてある、あれですね」


 それを聞いて、エリスリーンは、メイリルダが自分の考えていることを理解したようだとホッとした表情をした。


「そうさ。それを使えば、多分できるはずだ。絵を見て、その絵を言葉にして教える。そして、木札の裏の文字を見せてあげれば、案外早く話ができるようになると思うわ」


 その話を聞いて、メイリルダも、少年に文字を教える時の様子を、想像しているみたいだと思ったようだ。


「木札のカルタは、寮に置いてあるはずだから管理人に確認するといいよ」


 ギルドの寮は、今までも転移者が来るたびに使われていたのだ。


 転移者の子供達に言葉を教えることが最初の仕事になるので、それなりの物は用意されている。


 ただ、メイリルダの前任者は、ギルド本部に移動になっていることもあり、そして、メイリルダは初めて転移者を任されるのだから、そんな細かな事まで知る事は無かった。


 エリスリーンの言葉で、これから、どうやって少年と接して言葉を教えたら良いのか方針が決まった。


 その事を、メイリルダは喜んでいた。


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