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ギルドに提出したパワードスーツ


 カインクムは、ジューネスティーンが、工房で見せたパワードスーツを見せたが、それ以外にもパワードスーツと同じようなものを作っていると聞いて、顔つきが変わった。


「って、おい、あんちゃん、これは何台目になるんだ」


 カインクムとすれば、これだけの物を、何台も作ってしまったジューネスティーンに、驚いたのだろう。


 ただ、ジューネスティーンからしたら、そんな事はどうでも良かったようである。


「さっき、ここで、見せたのが3台目で、組み立てて貰うのが4台目と5台目です」


 平然とカインクムの質問にジューネスティーンは答えた。


「お前、前の2台はどうしたんだ。 有るならそれも見せてくれ」


(完成形になる前の、試作品の作りを見れば、その設計者が何処に苦労したのかや、初期と現在の違いを見ていく事で設計思想が見えてくる)


 カインクムは、何か思惑がありそうな様子で、ジューネスティーンが、どのようにして今の形になったのか気になったようだ。


(試作品を見たい。 段階的どんな変更をして、この形になったんだ。 分かれば、自分もこのようなものが作れる?  いやいや、そんな事は無いが、今後、自分の技術の向上を考えれば、見ておいて損はない。 きっと、シュレの収納魔法の中に入っているのだろうから、見せてもらって損は無い)


 しかし、そのカインクムの言葉を聞いて、ジューネスティーンは、困ったような表情をした。


「それは、チョット無理です。 卒業の少し前に、ギルドに渡しちゃいましたから。 その2台とも、今ではギルド本部の預かりになっているそうです。 それに、ギルドには、ギルドの高等学校の費用とかも出して貰ってますし、学校で作ったパワードスーツも、費用は全て出してもらってますから、仕方が無いです」


 それを聞いて、カインクムは、期待を裏切られた様子でガッカリした。


(ギルドもしっかりしている。 いや、考えていることは、俺と一緒なのか)


 資金の提供を行うことで、たとえ初期のプロトタイプと言えども、この世に無い物を手にするのは、大いに有効である事を、ギルドも、そう感じていたのだと、カインクムは考えたのだ。


 ただ、ジューネスティーンが卒業と同時に作っている物なら、今後自分が組み立てる2台目も、さっき見た3台目と、そう大差は無いと考えられるのだ。


 そう思うと、仕方がなさそうな顔をカインクムはした。


「うーん、ギルドも考える事は一緒のようだな」


 そのカインクムの一言が、ジューネスティーンには、引っ掛かったようだ。


「と、言うと?」


 ジューネスティーンとしては、入学前に使っていたプロトタイプなどは、フルメタルアーマーのバージョンアップ程度の物だと思っており、使わなくなった古い機体など、スクラップにする位に考えていたので、カインクムの言葉に、よく分からないように発言をした。


(プロトタイプの代金にしては、気前よくお金を出してくれた程度に、考えていただけなんだが、……。 カインクムさんの様子を見ていると、あれにも価値があったのかなぁ)


 ジューネスティーンが、不思議そうな顔をしているが、カインクムは、意外そうな顔をしていた。


(結構、頭が良さそうだと思ったが、意外と年相応の反応をする事もあるのだなぁ)


 カインクムは、ジューネスティーンの反応が、パワードスーツのような、この世にない全く新たなコンセプトで作られているのに、その重要性について、無頓着な様子が、大きなギャップのように思えたようだ。


「お前さん、こいつの価値が、まだ、掴めてないみたいだな」


 それを聞いて、ジューネスティーンは、キョトンとした。


 ジューネスティーンとしてみれば、入学前の物など、フルメタルアーマーの発展型程度に考えていたので、価値があるとは思っていなかったのだ。




 ジューネスティーンの表情を見て、ちゃんと説明した方が良いと考える、カインクムが話しを続ける。


「あんちゃん、お前は断片的な前世の記憶を繋いで、あのゴーレムのようなパワードスーツを作っただけかもしれんが、それだけじゃない。 あのパーツだが、どれ一つでもこの世界には、ノウハウどころか、概念も無いものばかりなんだ。 さっきのベアリングだけでも一財産になる。 それと、お前の持っているパワードスーツだが、あれが1000体有ったらどうなると思う」


 そう言って、カインクムは、カップのお茶に口をつけて少しお茶をすする。


 ジューネスティーンは、カインクムの言葉の意味を考えているようだ。


 そんな、ジューネスティーンの様子を見ながら、カインクムは話を続ける。


「あれが1000台もあれば、各国の軍事バランスが、大きく崩れてしまう。 今、軍事力の一番高いのがこの大ツ・バール帝国と言われている。 それは、東の森の対応の為、仕方が無く帝国は軍事力を上げざるを得ない。 もし、他国と同じで有れば、東の森の魔物への備えだけで終わるか、東の森を無視して国境警備用にしてしまったら、帝国は魔物に蹂躙されてしまう。 帝国は絶えず東の森の魔物の脅威に対応させられている分、他国より軍事力が高い」


 その話を聞いて、ジューネスティーンも、もっともな話だと思ったようだ。


 カインクムは、自分の話を、真剣に聞くジューネスティーンを見て、更に話を続ける。


「あんちゃんのゴーレムだが、東の魔物を倒せるレベルなら、帝国軍の10人か20人、いやそれ以上の力となる訳だ。 ギルドも、その辺の事を考えて、あんちゃんのノウハウが流出しないようにしたのだろう。 これで、うちの周りに警備が配置されたのも、表立って、あんちゃん達と接触させるなという、ジュエルイアンの話も頷ける」


 ジューネスティーンは、そう言われて考える。


(さっき、この店に入り口から堂々と入った時に追い出されたのって、予め取り決められていたのかもしれない。 外部にこの店と自分のつながりを知られたくないので、ジュエルイアンが予めカインクムに言い含めていたのか。 そうでなければ、隣の店からこの店に繋がる隠し通路とか、あんな物がなんで用意されていたのか?  何だか、俺の知らない何かが働いているのかもしれない。 だが、パワードスーツにしても、渡してしまったからといって、直ぐにコピーなんて不可能だろう。 魔法紋をコピーして作る技術がシュレ以外にないのだから、研究用程度で、量産して実用することは無理だろう)


 シュレイノリアの魔法の能力については、ギルドの高等学校の教授陣でも、舌を巻いていたのだ。


 この大陸で、シュレイノリアの魔法について、理解できる人が居るとは思えないのだ。


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