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パワードスーツの足周り


 カインクムは、ジューネスティーンの、説明通りの構造になている事を確認するため、腰回りの様子を舐め回すように見ていた。


 足を左右に開く機能としてのU字のパーツが有り、その可動域を確認しているのだった。


「これなら足も自由が効くな。 左右に足を踏ん張る事も可能だ。 中に人が入るのだから、ジョイント用のパーツを上手く使って人の動きに合わせられるようにしたのか」


 カインクムは、独り言のように呟いていた。


(かかと)周りに有るこのリングだが、これなら足の動きについていけるな。 足を広げても、足の裏がしっかりと地面を面で捉えることも可能だ。 これならフルメタルアーマーの足のガードにも使えそうだが、……。 いやいや、多分、この構造だと、重量の問題で誰も使いそうもないな)


 カインクムは、感心するような表情のまま、パワードスーツの足と胴体部分を見比べていた。


「しかし、よくこんな事が思い付いたな」


 独り言のように言うのだが、声が大きかったこともあり、ジューネスティーン達にもカインクムの声が伝わった。


 ジューネスティーンは、カインクムが興味深く、パワードスーツを見ている事から、もう少し説明をしようと思ったようだ。


「駆け出しの頃に、フルプレートアーマーを使った時期があったのですけど、やはり、関節部分が欠点だったんで結構痛い思いをしました。 そのおかげで、痛かった部分に新しいパーツを自作して取り付けていたんです。 でも、そのうち重量が問題になって困っていたら、シュレイノリアが筋力強化の魔法紋を付けてくれたんです。 それで、動きは良くなったんですけど、魔法紋から出る熱に悩まされたんです。 熱くなりすぎる前に決着をつけなければならなくなったんですが、一度手間取って、チョット火傷をしてしまったんです。 そしたっら、風魔法で冷やせばと言われて、風魔法の魔法紋を外側に第二装甲として取り付けてそれに付与して、取り付けたんです」


 カインクムは、納得するような表情をした。


(やはり、重量的な問題が有ったのか。 だが、その辺の対策も行っていたのだな)


 そして、カインクムは、満足そうな表情を浮かべていた。


「ああ、さっきのホバー機能ですけど、その風で冷やすための装甲板を取り付ける作業の時に、シュレイノリアがその第二装甲を踏んづけてその拍子に魔力を流してしまったのですけど、その第二装甲が、地面をスーって滑るように進んでいったんですよ。 それで風魔法で浮かんで移動したら楽だと思って、こうなったんです。 でも、風魔法だけでは浮かす事ができなかったので、重力魔法で浮かせるようにしたんです。 だから不具合を対策してたらこうなってしまったんです」


 新しい何かを開発しようとすると、どうしても、抜けてしまう何かが現れる。


 それが問題となるのだが、それを克服することが重要となる。


 開発における壁は、開発前に予想できなかった部分にあるのだが、それを克服することで開発は完了に近づく。


 完成までには、その対策を一つ一つ潰していく必要があるのだ。


「ほぉ、トラブル対策の結果がこれか」


 カインクムは、ジューネスティーンが行った対応策に感心した。


「ところで、にいちゃんは王国の出身か。 家族は居るのか」


 カインクムは、突然話を変えてきたのだが、その質問にジューネスティーンは、微妙な表情を浮かべた。


「うちのパーティーは、誰も家族は持っていません。 ただ、エルフの二人は顔貌が似ているので兄弟だと思いますけど、それ以外は天涯孤独です」


 聞いてはいけない事を聞いてしまったと思い、カインクムは思ったようだ。


「すまん。 悪い事を聞いたな」


 人には触れてはならない事がある。


 その事を思って、安易に家族の事を聞いて悪かったと反省しているようだ。


「いえ、自分から話すつもりはありませんでしたが、いずれは分かることです。 気にしないでください。 それと全員、王国の西の砂漠が出身です」


 それを聞いて、カインクムは、その理由に心当たりがあったようだ。


 カインクムには縁の無い人達だと思っていたが、目の前に居るジューネスティーン達が、その共通点である南の王国の西にある砂漠の出身だと言ったのだ。


 カインクムは、それで、このパワードスーツの完成度の高さが納得できたというような表情をした。


「あんちゃん達は、転移者だったんか。 どおりで、いろんな事をできるわけだ」


 感心するカインクムに、ジューネスティーンは、苦笑いをした。


「そうは言っても、記憶がある訳では無いですから、名前も無くて、言葉も分からなくて最初は困りました。 ギルドには、自分達の言葉のわかる人が居なかったので、それでこちらの言葉を教えてもらったんです。 ただ、時々、断片的に思い出す事は有るんですが、その記憶の中に出てくる人達って、皆んな歳上の人たちばかりなんですよ。 自分達と同年齢なんて全然出てこないです。 ここに来た時は、背もまだ低かったので、ギルドの人から登録の年齢は、10歳にしておけって言われました。 そう言えば、数字は教えて貰ったんですけど、計算は自分でやれって言われたんです。 なんでですかね?」


 不思議な事もあるものだと言うようにジューネスティーンが言うと、聞きかじった話の中で、転移者の数学的能力と自然科学に関する知識は、この世界で生まれた者には理解できないほどの知識を有していると聞いた事を、カインクムは、思い出したようだ。


「そりゃあ、計算は転移者に聞くのが一番って言われているからな。 以前居た世界では計算法を教わって体が勝手に反応しているんだろう」


 言われてみて、ジューネスティーンは、今までの事を思い出していたようだ。


「まぁ、そうですね。 簡単な計算なら暗算ですぐに出来ました。 お店で買い物する時とか支払い金額の計算には困らなかったですね」


「そう言うもんだ」


 カインクムは、ヤレヤレといったように相槌を入れるのだった。


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