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ベアリング


 カインクムは、箱から出したパワードスーツの胴体部分を動かした時に、肩と二の腕の動きがスムーズすぎる事が気になった。


 通常のフルメタルアーマーや、稼働させる為に使う蝶番の滑りを思うと、この腕の動きは、非常に滑らかな動きをしていた事に気が付いたのだ。


 すると、おもむろに胸から出ている二の腕を前に出したり、横に広げたりして、動きを確認している。


(腕はスムーズに動く。 これ程、抵抗が無く動く物なのか?)


 カインクムは、そのスムーズな感覚が、今まで自分が目にしてきたフルメタルアーマーなどとは、全く異なっている事に気がついたのか、そのスムーズに動く腕に関心がいく。


 そんな、ジューネスティーンとカインクムの会話の中、レィオーンパードがジューネスティーンに声を掛ける。


「にいちゃん、オイラのも開けてもいいか」


 あまり、人の工房ではしゃぎすぎるのは、どうかと思ってなのか、一度に2種類のパーツを出すのが嫌なのか、ジューネスティーンは、ちょっといい顔はしていない。


「一度に色々開けると面倒だから、チョット待ってろ」


 ジューネスティーンは、浮かれ気味なレィオーンパードにそう言う。


 それを聞いていたカインクムは、レィオーンパードに向く。


(こいつも同じだな。 新しい物とかに興味があるんだろう。 まるで俺の子供の頃のようだ)


 そう思うと、レィオーンパードに気にするなという顔をする。


「構わん。 これ使って、確認しろ」


 そう言って、手に持っていたバールを上げて、これを使って開ける様にと態度で示す。


 レィオーンパードは、ジューネスティーンに待つ様に言われて、少しがったりしていたのだが、カインクムが了解してくれたので、笑顔になる。


「ヤッタァー」


 そういって、レィオーンパードは、カインクムのバールを受け取ると嬉しそうに、壁際の箱の方に、足早に向かっていく。


 その態度を、嬉しそうにカインクムは眺める。




 そのレィオーンパードを見て、ジューネスティーンは申し訳なさそうにする。


「すみません。 カインクムさん」


「いやいや、あの坊主だって、自分の装備がどうなっているか気になるんだろう。 頭の中は、俺と一緒だろうから、開けさせてやれ」


 一心不乱に、バールで箱を開けようとしているレィオーンパードを、嬉しそうに見ながらカインクムは答えた。


「ありがとうございます」


 そんなレィオーンパードを見た後に、作業台の上に置いたパワードスーツをカインクムは気にしだす。


 特に、背骨の方に興味を示している様子なので、カインクムにその辺の説明をジューネスティーンは始める。


「背骨は左右とも、ブロックを二本のワイヤーで繋げて、中心側は固定用、外側は可動用になっているんです。 左右をジョイントした後に動く様にするのに結構苦しんだんです。 それを作る時は、エルメアーナと議論や試行錯誤の連続でした」


「それで、この三角錐みたいな五角形の形になったのか。 それを重ねる事で背骨の動きに対応させようと言う訳か。 そういえば、腕のところは、スムーズに回る様で変な音も出なかった。 あの部分は、どうなっているんだ」


 さっき腕を動かしていたので、今までのものとは全く異なるスムーズさが気になったのだ。


 ジューネスティーンは、やっぱり聞かれたかと思いつつ答える。


「可動部はベアリングが入っているんです。 大小二つのリングの間にベアリングという小さい金属の玉を数十個入れて、摩擦係数が小さくなっているんですよ。 外側のリングは胸側に、内側のリングは腕側に繋がっているんです。 その間にベアリングを入れているので、動く時にはベアリングの球面がリングに当たっているだけなので動きがスムーズになるんです。 それで、擦れる音が違って聴こえたのでしょう」


 カインクムは、初めて聞くベアリングという部品がどんな物なのか気になった。


 説明にあったのは、二つのリングの中に入っているとの事だったので、見てみたいと思ったのだが、覗いてみても、はっきりと見ることはできないでいる。


 ただ、リングの間に小さな球が入っている事は、イメージはできた様である。


「ベアリングって、これのことか。 リングとリングの間に金属の玉が入っているのか。 なる程」


 そう言って、腕の部分を脇の下から覗く。


 完成してないので、うち側のインナーが取り付けられて無い。


 金属の外装骨格だけの状態なので、胸のパーツの先の肩のパーツとの接続部分が見ることができた。


 カインクムも蝶番は使う事があるが、これ程動きのスムーズな物は、今までにお目に掛かった事が無かったのか、肩を動かして動きの滑らかさを確認している。


「なる程、動きはスムーズだ」


「そのベアリングは、稼働部分には全て入れてあるので、動きは良くなってます。 肩と二の腕を結ぶ所、肘、腰、膝、踝、太ももにも入っているので、足を捻ることも可能になってます」


「ちょっと、足の方も確認させてくれ」


「じゃあ、多分22の箱の中に足は入っていると思います」


 そう言うと、21の箱の隣にあった22の箱を開けて、中身を確認するので、レィオーンパードから、バール受け取って木箱の蓋を開ける。


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