帝国の鍛冶屋 6
リビングで、女子トークが、炸裂する前に、カインクムに引っ張られて、工房へ向かったカインクムとジューネスティーンは、パワードスーツのパーツの確認をすることになる。
組み立てるにあたって、何かと入り用になる物もあるので、早いうちに揃えておいた方が、良いと考えていた、ジューネスティーンではあるが、パワードスーツを見て、豹変するとは思ってなかった様子で少し戸惑っている。
カインクムは、ジューネスティーンの腕を握って、大股に廊下を歩く。
工房の入口のドアを開けて入ると、ジューネスティーンの腕を離して、反対の壁に歩いていく。
その先には大きな木箱が置いてある。
カインクムは、その箱を示しすと、ジューネスティーンに話し出す。
「それが、お前さん宛の荷物だ」
そこには、木の板で組んだ大きな箱が6箱、隅の方に二段づつ、綺麗に重ねて並べて置いてある。
二人分のパワードスーツを収めた箱、長さ1.5メートル幅1メートル高さ80センチ程の木箱で有る。
一般的な木箱では、入れる事が出来なかったのか、その木箱は新しく作られた様に、使い古された時、特有の、表面汚れ、木目の変色の様なものは見当たらない。
既製品の木箱では、サイズが合わなかったのか、送る段階になって慌てて用意した様だ。
箱には、数字が大きく書いてある。
11・12・13と21・22・23となっている。
箱の見えている面には全てに数字がふってあるので、少なくとも底以外の5面には数字がふってあると考えられる。
カインクムが壁に掛かったバールを取って、ジューネスティーンに了解を取る。
「俺が開けても良いか」
カインクムの顔は、ダメとは言わせないといった表情をしている。
ジューネスティーンは、だめと言ったら、最初に会った時の事を思い出し、あんな感じで、また、捲し立てられるのかと思うと、ダメとも言えない。。
ジューネスティーンは、向かいの壁の方に有る箱を見て、どの箱を開ければ良いか考える。
どの箱を開けようかと、考える様に6個の箱を見ながら、エルメアーナが、その番号を振った意味を考える。
「じゃあ、21の箱が上にあるから、その箱にしましょう」
カインクムは、箱の側面に21と書いてある木箱に向かい、木枠の蓋と箱の間にバールを入れて、箱の蓋を外す。
木枠から釘が抜ける嫌な音がするが、カインクムにしてみたら、そんな音は、荷物が運ばれてくれば、開ける時に必ず聞く音なので、気にすることもなく、慣れた手つきで作業を進めている。
蓋に打ち付けてある釘の位置を確認しながら、手際よくバールで釘の刺さった蓋を外すと、蓋を箱に立てかける。
ジューネスティーンも箱の側で、カインクムの作業を見ていると、カミュルイアンとレィオーンパードも工房に入ってくる。
2人は、ジューネスティーンの後ろに来ると、カインクムの作業を一緒に見る。
カインクムは、中のクッション材を詰めた袋を、無造作に外に放り出して、出てきた中身を確認する。
それは、中身を早く見たいので、そのクッション材を詰めた袋が、煩わしく思っている様だ。
クッション材を詰めた袋を、箱から出していくと、胴体の骨格部分が現れる。
箱の中には、胴体部分が入っているので、カインクムは、ジューネスティーンの顔を覗き込む。
その顔を見ると、その胴体部分を外に出して確認したいと訴えている。
「じゃあ、その作業台の上を使わせてもらっても構いませんか?」
ジューネスティーンが、仕方無さそうにカインクムに尋ねる。
「ああ、構わない」
「じゃあ、2人で持って、移動させましょう」
そう言うと、ジューネスティーンとカインクムの2人で、パワードスーツの胴体を引き上げて、中から取り出すと、作業台の上に、ゆっくりとパワードスーツの胴体部分を置く。
背骨に胸当て、そして、腰までの胴体部分、胸から肩と二の腕の状態のものを、箱から取り出して、作業台の上に置いた。
パワードスーツは、肘から先と、腰から下の足は外してある。
胴体部分だけのパーツ、そこには、リビングで見た装甲も取り付けてなかった。
腰は前から見るとT字になっている。
Tバック下着が金属で作られた様になっており、そして、U字のパーツが組み付けられているが、足は取り付けられてない。
それをまじまじと見つめるカインクムの横に、ジューネスティーン行き、現れた中身を確認する。
首から腰迄と二の腕部分が取り付いている。
胸の部分は金属でできており、肋骨の少し上辺りまでを覆う様に作られているので、人の肋骨より少し小さ目になっている。
ただ、その胸のパーツには、二つの膨らみがついている。
アリアリーシャの体型に合わせた為、胸は二つの膨らみがあり、彼女の体型に合う様になっているのだ。
Hカップの胸を覆う様に作ることで、胸の締め付けを抑えているのだ。
「これアリーシャ姐さん用の胴体の骨格です。 あの人身長130センチ位しかないので、さっき見た、自分のものより小さく作ってあります。 それと、胴には鎖帷子を使う事になりますので、胸の装甲から垂らす感じになります」
「って、おい、さっきのウサギの嬢ちゃん用なのか、まあ、胸があるから女性用とは分かるけど、嬢ちゃんに怒られないか」
感心しているのか、驚いているのか、分からない表情で、パワードスーツの胴体部分のパーツを見つめるカインクムが、この中に先程一緒に居たアリアリーシャ用と聞いて、少し気が引けている。
メンバーの中では、身長が130センチと一番小さいのに、体系的には、腰も胸も大きく、女子3人の中では一番女性らしい体系をしているので、その体型に合わせて作られているパワードスーツなのだ。
しかも装甲が外れていて、内部の体を固定するパーツを見て、何とも表現し難い気分になる。
「そう言った事は、ほっときましょう。 まだ、完成してませんから」
弄られキャラでもあるアリアリーシャなので、何か言われてもどうと言う事はないと考えているジューネスティーンは、そのまま説明に入っていく。
「それと、今回は、俊敏性重視なので、かなり軽量化してます。 特殊な軽量金属をギルドから入手出来たので、大分軽く出来てますけど、加工が大変だと、よく、娘さんに愚痴られました」
そう言いながら、ジューネスティーンが箱の中から胴体部分以外の骨格を取り出して、床に立てる。
「アイツが弱音を吐く様な金属だったのか」
「いえ、愚痴りましたけど、余計に意欲が湧いてくる。 愚痴と言うより、言葉に出して自分を鼓舞してたのかもしれません」
「そうか」
少し嬉しそうにカインクムが言うのだが、ジューネスティーンは、カインクムの表情を気にすることもなく、話を続ける。
「今回のパーツは、ここまでは殆どエルメアーナに組み立てて貰いました。 娘さんの腕前を、よく見てあげてください」
カインクムは、なんとも言えない。
笑顔になって良いのか、目の前の未知の装備を、組み立てた事で、自分を超えたのでは無いのかと思いつつ、その骨組みを見つめている。




