帝国の鍛冶屋 5
フィルランカは、このパーティーが、設立してから、エルメアーナとの付き合いになったのだと、なんとなく、分かった様だ。
エルメアーナも変わっているが、目の前に居るシュレイノリアも、クセのある喋り方をするし、恋愛観もかなり変わっている事も分かった。
ジューネスティーンが、エルメアーナを訪ねていった時に、追い返されたのは、自分にも原因があることをフィルランカは認識している。
フィルランカ自身も、その時の事に触れられたくないので、話を逸らすために、質問した。
「ところで、皆さんは、パーティーを組んでいますけど、それは、もう、かなり長く組んでいるのですか?」
その質問を聞くと、アンジュリーンが答える。
「ああ、ギルドの高等学校に入って、間も無くかな。 授業でパーティーを組む事になって、その時からだから、ほぼ、3年になるわね」
「その時からですぅ。 でもぉ、私達、全員、他のパーティーには、入れてもらえなかったんですぅ」
アリアリーシャが、その当時の事を思い出して、少し寂しそうな顔をする。
「ふん。 あんな奴ら、誰も見る目がなかったのよ」
アンジュリーンは、恨めしそうに、吐き捨てる様に言った。
「私たちの成長は、ジュネスとシュレのおかげですよ。 もし、あの時、アンジュもジュネスの誘いに乗らなかったら、あそこまで、成績は上がらなかったですぅ」
「まあ、そうなんだけど」
アンジュリーンも、学校での成績が上がったのは、ジューネスティーンに教わったこと、それとシュレイノリアの魔法を見てもらえたことが大きいと、自覚はしている様だが、なんとなく、釈然としない自分の気持ちがある様だ。
アンジュリーンがクラスの中で浮いていたのは、戦力として使えるかと、考えられていた事もあった。
それは当時の、アリアリーシャにも言える事だった。
ギルドの高等学校と言っても、最低年齢条件をクリアーしたところで、入学するのは、貴族の子弟が、自分のステータスのために入学してくる程度で、お金の余裕のある者達だけである。
大半が、冒険者として稼いだ、お金を元に入学するので、最低年齢で入ってくる冒険者は、数年に1人程度となる。
アリアリーシャの様に、入学金、学費、寮費を貯めている間に、大人になってしまった冒険者は、多いのだ。
入学に必要な最低年齢を遥かに超えてから、入学するなどは、あたりまえなのだ。
ある程度、冒険者として、それなりのランクになってたとしても、上のランクに上がるのは、並大抵の努力では上がることはできない。
そのため、一般の冒険者の9割は、Eランク止まりで、まれにDランクに上がれる程度なのだ。
ギルドの高等学校を卒業すると、Dランクを与えられるのであれば、誰もが、入りたいと考えるのだが、費用面の関係から、なかなか、一般冒険者には、敷居が高い学校となっている。
もう一つの方法というのは、上位ランクの冒険者パーティーに弟子入りして、一緒に、上位の魔物を倒す事で、経験を積んで、ギルドの試験に合格して上がる方法があるが、上位ランカーが、はいそうですかと、簡単にDランクやEランクの冒険者をメンバーに入れる事は無い。
それなりの能力が有ると判断されれば、パーティーメンバーに入れることもあるが、各国に多くても2・3パーティーしか存在しないとなれば、競争率は、100倍以上になる。
まして、Aランクの冒険者が居ない国も有るのだ。
そう易々と、メンバーに入れてもらえる事はない。
ただ、例外が一つある。
それは、ユーリカリア、ウィルリーンの2人なのだが、ウィルリーンが魔法に長けていたこと、ウィルリーンが冒険者として、一通りの武器の扱いに長けていた事、それと、エルフとドワーフといった、長命の種族だった事で、数十年かけてAランクになったのだ。
人属なら、もう引退を考える時期になったとしても、2人は、まだ、20代の人属と変わらない。
それも、ウィルリーンが、冒険者として一通りの武器の扱いに長けており、それをユーリカリアに伝えた事と、魔法に長けているウィルリーンなら、他の冒険者の中に居る魔法職を遥かに凌ぐ魔法力によるものが大きかった。
そんな幸運の様な話は、そう簡単に有るなんて事はない。
ギルドの依頼を、熟せるだけの能力のある冒険者は、そう多くは無い、独学で冒険者になったとしても、Eランク止まりで引退する冒険者が、大半なのだ。
上のランクに上がりたいが、ギルドの高等学校に入るための資金が調達できない冒険者は、Aランクの冒険者のパーティーに入れてもらって、実績を付ける方法が有るが、Aランクのパーティーでは、余程の能力が無ければ、パーティーに入れてもらう事は不可能に近い。
いくらでも居る、Eランク以下の冒険者なのだ、そんな中、Aランクのパーティーに認められるのは、並大抵ではない。
少し程度の能力なら、いくらでもいる。
それを超える何かを持つ者だけが、Aランクパーティーの目に叶うのだ。
そんな狭き門を狙うのなら、地道に、お金を貯めて、ギルドの高等学校に入った方が、ランクを上げる可能性は高い。
独学の冒険者には限界があるので、上位ランクを目指す者は、ギルドの高等学校に入学する。
そうでない冒険者は、弱い魔物を狩るのを専門として、ランクを上げるまでには至らないのだ。




