表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

487/1356

シュレイノリアの恋愛感覚


 学校での寮の話を、アンジュリーンが話題にするのか、シュレイノリアには、よく分からないといった様子で聞いていた。


 聞いていたシュレイノリアが、学校での話を思い出したようだ。


「思い出した。 中央ドームの公演に一緒に行かないか誘われた。 たしか、“黄昏の休日”だった」


 それを聞いて、アンジュリーンとアリアリーシャの、目の色が変わった。


「あの、お話しって女性の為に、作られたような、恋愛ドラマだったわね」


「そうですぅ。 私も、あの主人公の女性みたいなぁ、恋がしたいですぅ」


 その“黄昏の休日”という舞台は、女性に人気の恋愛物語だったのだ。


 アンジュリーンもアリアリーシャも、見てみたいと思っていたのだが、チケットは、直ぐに売り切れてしまい買えなかったのだ。


 その理由についてアンジュリーンは、記憶を辿っていったようだ。


 そして、その顔色が徐々に変化していった。


「ん、あの時って、人気の、あの女優と、相手方の俳優って、超人気の二人が共演するってことで、チケットが、直ぐに完売して、プラチナチケットって言われなかったですか。 欲しくても手に入れられないって言われたやつ。 確か、一席の価格が、中銅貨1枚で、ペアチケットだと、中銅貨2枚だったかしら」


 それを聞いて、アリアリーシャが、その後にチケットの金額が高騰したことを思い出したのだ。


 その事を思い出すように、話していた内容に付け加えるのだった。


「それはぁ、通常価格ですぅ。 買えなかった人がぁ、転売でぇ、確かぁ、チケット1枚が銀貨10枚位にぃ、なったなんてぇ、聞きましたぁ。 でも、ペアチケットならぁ、金貨1枚どころか、それ以上出して買ったとかいう、独身の貴族がいたとかぁ、聞きましたぁ」


 金貨1枚以上出して買った貴族と聞いて、アンジュリーンは難しい顔をした。


 金貨1枚は、最低通貨である白銅貨なら、一千万枚となる。


 それ程の高額取引になってしまっていたのだ。


 アンジュリーンは、何か思い当たるような表情をし、ゆっくりと、シュレイノリアの顔を見た。


 シュレイノリアは、何食わぬ顔で、お茶を啜っているのをアンジュリーンは見ると、話しかけようとするのだが、そのアンジュリーンの顔には、思いああたる節があり、それを本当に聞いて良いのかと、自問自答するようだ。


 アンジュリーンは、その事を聞いてはいけないような気もするのだが、聞かなければいけないのでは無いかと考えているようだ。


 アンジュリーンの表情には、迷いがうかがえた。


 そんなアンジュリーンは、感情が顔に現れつつ、引き攣った様子で、シュレイノリアに聞くのだ。


「それで、誘われて、どうしたの?」


 恐る恐る、アンジュリーンが、シュレイノリアに聞くが、シュレイノリアは、何のことだと言うような顔つきで、アンジュリーンを見た。


 そして、シュレイノリアは、何の事だというように、表情を変える事なくアンジュリーンを見た。


「ん、興味が無かった。 見たいと思ってなかったから、要らないと言った」


 その答えにアンジュリーンは、凍り付いた。


 チケットのプレミア度を聞いて、そのチケットの代金が気になったアリアリーシャも、青い顔をした。


 しかし、アンジュリーンは疑問を持ったようである。


(断っただけなら、あの貴族のボンボンの、落ち込み用は何だったのかしら。 デートに誘って断られただけの、落ち込みようとは、ちょっと違ったように思えたわ。 ……。 まさか、シュレのやつ何かとんでもない事を言ったんじゃないかしら)


 アンジュリーンは、思うところがあるような顔をすると、シュレイノリアに真相を確認する事にしたようだ。


「ねえ、シュレ、ただ、断っただけなの? ……。 あなた、それ以外にも、何か言ったでしょう。 ちょーっと、その時の事を、思い出して話してみてくれないかなぁ」


 そう言われて、シュレイノリアは、面倒くさそうに、思い出すような表情をするが答えてくれた。


「この演劇は、観るべきだからと言ったので、じゃあ、ジュネスに聞いて、ジュネスが行くと言うなら行くと言ったと思う」


 その答えを聞いて、アンジュリーンもアリアリーシャも、その時の貴族の落ち込みようがなんでなのか、その一端が見えたように思えたようだ。


 その話を黙って聞いていたフィルランカは、何か言おうとするのだが、話しかけて良いのか気になったようだ。


(あー、この娘に、男の恋心は伝わらないのかしら)


 それは、アンジュリーンもアリアリーシャも一緒だったようだ。


 シュレイノリア以外の3人は、デートに誘われているのに、別の男を連れて行くと言ってしまった事に、驚きを通り越してしまい、誘った男子に同情してしまったようだ。


 3人の沈黙が続いていると、シュレイノリアは、さらに、思い出したようだ。


「それにチケットを取る時の話をされた。 それ程言うなら仕方がないと思った。 2枚有るのだったら、ジュネスと行くと言った。 それと、その彼には、チケット代を払うと言った、確か金貨1枚だったと言ってたから、後でジュネスに聞いて払う。 私が色も付けて、金貨2枚で、買い取るように言うから、貴方に損はさせないと言ったら、ガッカリしてそのまま帰っていった。 だが、私に観るべき公演だと言ったのに、そのチケットを持ったまま行ってしまったんだ」


 頭を抱えるアンジュリーンとアリアリーシャは、チョット手が震え気味に、気持ちを落ち着かせるために、お茶を啜った。


 シュレイノリアは、フィルランカを見てから、仲間の2人を見ると、不思議な顔をした。


 そして、3人に尋ねるのだった。


「どうかしたか。 私としては、彼に気を使って、買取ろうと言ったのだが」


 当たり前の事を言ったと思っている、シュレイノリアに、アンジュリーンが、自分の虚脱感と戦っているようだ。


 そして、イラついた表情をシュレイノリアに向けた。


「それは、彼が、シュレと、一緒に行きたかったのよ。 確か、一つ上の主席で、かなりの秀才だったはずよね。 魔法も、剣技も、叶うもの無しって言われてたけど、次の年に、アンタら二人が入学してきてから、影が薄くなってたって言われてたわね」


 酷い振り方をしたのだが、シュレイノリアには、その認識が無かったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ