シュレイノリアの寮生活
シュレイノリアが、ジューネスティーンと、いつも一緒だった事が、転移してきた時、ジューネスティーンとだけ、言葉が通じた事からだと、アンジュリーンとアリアリーシャは、納得した様子をした。
しかし、自分の納得を置いておいて、アンジュリーンは、フィルランカに2人の話を続ける。
「それで、学校の寮で、一人だけだと眠れないとかで、そうなってしまったらしいんですよ。 それでジュネスが、どちらかが相手の部屋に行けば良かったんでしょうが、何故か寮のエントランスのロビーで二人で毛布に包まって寝てたんです。 それを寮監に見つかって怒られてたんです。 ジュネスが、どうしてそうなったか寮監に、お話ししたのですけど、流石に信じてもらえなかったみたいです」
聞き入っていたフィルランカが、2人の関係を、自分達夫婦と置き換えられたらと思った様子で、そんな状況なら、自分はどんな行動を取るか考えているようだ。
とても2人だけで、ただ寝ているだけとは思えないようだ。
「そうですねぇ、私は、その状況ですと、その寮監さんが考えていた事をしていたでしょうね。 どちらかというと、私は、自分から乗っかってしまいましから」
その言葉に、アリアリーシャとアンジュリーンが、なんとも言えない顔で聞いている。
だが、フィルランカがどうも違う方向に話を考えているように思えるので、アンジュリーンは、その後の話を続ける。
「寮監に怒られた後は、二人とも自分の部屋に戻っていったんですけど、数日して、また、同じようにロビーで2人が寝てたんですよ。 それで、2度目はもっと叱られたみたいだったけど、それでも、2・3日もすると、直ぐに同じ事をするんですよ。 何度か続いて、何かしているわけでは無く、ただ、二人で抱き合って寝ているだけだったので、寮監も調べたみたいなのです。 シュレが、ジュネスに添い寝じゃないと眠れない事情が理解できたらしく、諦めて、寮監の隣のふた部屋が、この二人にあてがわれたんです。 しかも、隣り合う部屋の中に、隣の部屋と繋がるドアまでつけさせたんですよ。 入口から何方も入らない事、夜は中のドアを使って、寝床に付くようにって念を押されたらしいですけど。 まぁ、他の寮生の手前、シュレが、夜にパジャマ姿でジュネスの部屋へ入って行く所を、誰かに見られたら困るでしょうから、それに寮監の近くの部屋は、人気が無かったから常に空き部屋だったのと、この二人は、ギルドから特待生として、学費も寮費も免除で入って来ていたから、寮監も常に監視が出来るとでも思ったのでしょう」
それを聞いて、シュレイノリアも当時のことを思い出した。
「あぁ、そんな事もあった。 それと、変な声を聞いたら直ぐに入って行くからと言われた。 寝るのに変な声とは、不思議なことを言うと思ったが、いびきか、寝言か、そんな事を言ったのかと思ったので、気をつける事にした。 だが、寮にいた時は寝ている間に、寮監が入ってくる事は一度も無かった」
信じられないと言う顔で、苦笑いのフィルランカと、その話を知っているアリアリーシャも変な顔をしている。
いらっとするアンジュリーンが、右拳を作って、好きな人といつも一緒にいるシュレイノリアを羨ましいと思う事と、それを平然と言ってのけ、周りの反応など、お構いなしに言う態度に、苛立ちを覚えたのだろう。
アンジュリーンが、眉間に皺を寄せて、その苛立った気持ちをシュレイノリアに思わずぶつけるように口を開いた。
「あんたって人は」
だが、直ぐに、横からアリアリーシャに肘で軽く突っつかれて、頭を冷やすアンジュリーンに、笑顔のフィルランカが、余裕を持ってシュレイノリアに話しかける。
「そうだったんですかぁ。 面白い関係なんですね。 でも、愛の形は人それぞれですから。 そんな愛の形が有ってもよろしいのではないですか」
フィルランカは、ジューネスティーンとシュレイノリアの話を聞いて可愛い恋愛だと思い、笑顔で答えるので、その笑顔が、突き刺さるアリアリーシャは、その言葉に心中がおだやかではなくなるのか、ジト目でフィルランカを見る。
(この人、自分が幸せだと思って、余裕ブッこいてる)
そう思いながら、テーブルのカップを持ち上げて、お茶を啜るアリアリーシャは、その手が僅かではあるが震えて、中のお茶僅かに波打っている。
「でも、誰もそのことに、気がつかなかったんですか。 部屋が中で繋がっていることを」
その通りなのだ、通常なら、何らかの交流があるだろうから、友達が入ってくることもあるだろうが、ジューネスティーンとシュレイノリアについては、話が違ったのだ。
その事を思い出すと、ため息を吐くアンジュリーンは、あまり面白くもない話をするのだと思うのか、その当時の事をしかた無さそうに話だす。
「見ての通り、この性格です。 それにジュネスにしても、同級生から、授業についてとかは、聞かれてはいたけど、パワードスーツの開発に夢中だったから、必要以上に他とは交流は持って無かったわ。 それに、今の話でも分かったと思いますけど、シュレも、魔法の事とジュネスの事しか興味が無いみたいなので、この娘の友達は、私達二人位です。 まぁ、中には、この娘に言い寄る男の子も居たんですけど、この性格ですから、告白だと思わずにキョトンとして、とんでも無い言葉を掛けたんじやないかと。 大体、ジュネスと一緒だったから、声を掛けられなかったと思うけど、一人になった時を見計らって、声を掛けてた男の子もいたわ。 一度教室で、声を掛けてた男の子が居たけど、でも、直ぐに、ガッカリして戻っていった事があったわ」
時々、シュレイノリアに言いよる男子は居たのだが、そういう事に鈍感なシュレイノリアの学校生活を思い出して項垂れる。




