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フィルランカの馴れ初め


 その孤児院という言葉で、3人が不思議そうな表情をしたのだが、その表情には、フィルランカも気がついたようだ。


「あ、私、孤児だったんですっよ。 以前の、お店は帝都の旧市街の方で、直ぐ近くに、私の居た孤児院と教会が有ったんです。 その孤児院で、私、物心ついた時から暮らしていたんです。 ですから親の顔も知らないんですよ」


(あのオヤジ、孤児の幼女を誑かしたんか)


 どうも、幼女をたぶらかせたオヤジの、印象が抜けない3人に、フィルランカは続ける。


「エルメアーナは、まだ小さい時、父一人娘一人だったんで、近かった事もあって、時々、孤児院に遊びに来てたんです。 その時に気が合って、時々、こちらにも遊びに来ていて、色々、食べさせてもらったりしたんですよ。 優しいお父さんだったんですよ。 それに、私にも良くしてくれたんです。 エルメアーナが、学校に行けなくなって困り果てていて、そしたら、“お前、代わりにお前行ってこい!” そう言って、私を代わりに学校に行かせてくれたんです」


(孤児を、学校に入れてくれたんだ。 あの親父、良い所も有るのか)


「それで、必死に勉強して、卒業して、この店に、住込で働かさせて貰うようにしてもらうのでと言う事で、孤児院を出たんです。 孤児院のシスターも喜んでいました。 それから、しばらくは、エルメアーナも一緒に暮らしていたんですよ。 でも、私が、旦那のことが、好きだと自分の気持ちに気が付いて、お嫁さんにして欲しいと言ったら、エルメアーナが、余り口を聞いてくれなくなったんです」


(そりゃあ、親友が、自分の親に恋心を持っていたら、娘は引くわぁ)


「それから、ちょっとギクシャクしてしまって、どうしたものかと思ったのですけど、それなら既成事実を作って仕舞えばと思って、旦那様の部屋に入って、押し倒してしまいましたぁ。 キャハ」


 そう言って、紅くなった顔を両手で覆いモジモジするフィルランカを、アンジュリーンが、突っ込むのだが、余裕が無い様子だ。


「それは、諦めろよ。 もっと、良い人を見付ければっ! 年齢も親子程違うし、親友の父親なんだぜ」


 思わず、汚い口調で、口に出してしまうアンジュリーン、その剣幕に、一瞬、驚くフィルランカだったが、気を取り直した笑顔で答える。


「でも、好きになってしまったので、つい、勢いが止まらなかったと言うか、なんと言うか」


 フィルランカは、そう言いながら、その時の事を思い出しているのか、俯きながら、モジモジしながら、手を膝に戻して、自分のスカートを摘んで、お尻をムズムズと動かしている。


 その話を聞いて、頭に片手を当てるアンジュリーンなのだが、見た目年齢は子供なのだが、エルフ属なので、この4人の中では最年長となる。


「あー、この人ダメな人だ。 やってらんない。 そこまでしたら、そりゃぁ、エルメアーナも、家を出るわ。 それより、なんであんな親父を好きになったの」


 アンジュリーンは、今まで言葉にできなかった、鬱憤を晴らすように、質問を始めた。


「だって、本当に、美味しそうに、私の料理を食べてくれんるんですもの。 その姿がなんだか嬉しくて、つい」


(ついは、無いだろ)


 何か突っ込もうとした、アンジュリーンだが、すぐに諦めた様子だ。


「ではぁ、後妻になったのはぁ、ここ数年の事なんですかぁ」


 沈黙を守っていたアリアリーシャが口を開いた。


「4年程前ですかねぇ。 その頃だったと思います。 二十歳は過ぎていましたよ」


 それを聞いて、ため息を3人は吐いた。


 アンジュリーンとシュレイノリアは、解脱したように、ホッとした表情を示した。


「私は、年端もいかない幼女を後妻にしたと思った」


 シュレイノリアがボソリと言う。


「ああ、私もそう思ってたわよ。 子供が後妻に入ったと思ってたわよ」


 いつもなら、アンジュリーンが、突っ込むところだが、話が話だったので、緊張の糸が解けたように、ぐったりしていたこともあり、シュレイノリアの後に、自分の思っていた事を話した。


 ただ、そう言われて、フィルランカは、驚いたような表情をした。


「まぁ、私ったら、ごめんなさいね。 なんだか、誤解を招く言い方をしてしまったみたいで」


 フィルランカが言うと、喉の支えが取れたというか、緊張が一気に解れたと肩の力を抜く3人に、話を続ける。


「いくら何でも、そんな小さい時から妻の役目なんて致しませんわ」


 その幸せそうなフィルランカの表情を見て、苦虫を噛み潰したような顔をするアリアリーシャは、相手はともかく、自分の好きな人と一緒になった事を羨んでいたのだろう、悔しそうな表情を浮かべている。


 また、やってられないという顔をするアンジュリーンは、これだけの美人が、あんな歳の離れた親父に惚れたのか、もっと良い身の振り方もあったろうにと思ったのだろう、やりきれないといった表情をしている。


 その中で、妻の役目って何だろうと考えるシュレイノリアが、それを聞いてしまう。


「妻の役目とは?」


 それについてフィルランカが答える。


「それはもう、夫婦が行う事っていったら」


「ストーップ」


 アンジュリーンが、フィルランカの言葉を遮る。


「この娘は、まだ、そう言う話は分からないんです。 なんせ、いつもジュネスと一緒に寝てるんですけど、そういった事は全くしてないんです。 お互いに温かい抱き枕位に思っているんですから」


 アンジュリーンの言葉に、驚くフィルランカであったが、すぐに温かい表情になる。


「まぁ、そうでしたの、うちの人は結構激しいんですけど」


 その話に片肘をテーブルについて、その手に頭を乗せて、苛々しているアンジュリーンに、シュレイノリアは、キョトンとした表情で話しかける。


「あいつの体温は心地良い暖かさで、気持ち良く眠りにつけるぞ」


 キョトンとした顔で、言い放つシュレイノリアに、イラッとしたアンジュリーンが少し紅くなった顔になる。


「お前はぁ〜っ! もうこの話は終わり、あんたもそれ以上この話を突っ込むな」


 納得できないのか、軽く首を傾げるシュレイノリアが、更に突っ込む。


「寝ている時に、激しいとは、何だ」


 その言葉に、アンジュリーンとアリアリーシャが椅子から立ち上がって、シュレイノリアの顔を覗き込むように覆いかぶさる。


「あんたは知らなくて良い!」


 鬼のような形相に気圧されて、アンジュリーン達と反対の方へ体を逸らし、両手を胸の前に掌を相手に向けて、引きつらせた顔のシュレイノリア、意味が分からないが、二人の形相に負けて、納得したと言うように答える。


「わっ、分かった」


 その剣幕を、目の前で見ているフィルランカは、どうしたものか、不味いことを言ってしまったのか、自分の言葉を思い出しているようだ。


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