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帝国の鍛冶屋 5


 フィルランカが淹れてくれた、お茶はハーブティーだった。


 アリアリーシャが、カインクムとフィルランカが夫婦だということに気持ちがいっている事に、気づいてかジューネスティーンが、その話をさせないようにと思ったようだ。


 アリアリーシャを牽制するように、ジューネスティーンがカインクムに話しかける。


「荷物の中身は、自分達の装備です。 王国を出る前に、エルメアーナと一緒に作っていたのですが、完成が間に合わなかったので、未完成のパーツを完成させてもらって、送ってもらう事にしてあったものです。 恐らく、パーツの状態で送られているので、魔法紋の付与をして、組み立てなければならないので、その組立を、お願いしたいのです。 勿論、お代はお支払いします」


 ジューネスティーンが、仕事の話をしたことで、カインクムは落ち着いた。


「まぁ、そう言った事なら問題は無い。 それで、組立てる物って、何だ?」


 ジューネスティーンが隣に居たシュレイノリアに顔を向ける。


「今、出せるか」


「心配無い。 そこならスペースも大丈夫」


 そう言って、テーブルの先のスペースを指す。


「でも、床が抜けないか心配」


 そのシュレイノリアの心配について、カインクムが答える。


「この家は鍛冶屋なのだから、居間もちゃんと補強してある。 フルプレートアーマーの10や20、置くことも考えているから問題無い」


「では」


 シュレイノリアは、カインクムが、問題無いと言うので、安心して椅子から立ち上がると、数歩、テーブルから離れて収納魔法使う。


 すると、床に光の魔法紋が現れて、その魔法紋の中から、パワードスーツが浮き出てくる。


 それを見たカインクムが、目を見開いてパワードスーツに見入る。




 パワードスーツが床に現れるとジューネスティーンがカインクムに説明を始める。


「これのパーツを、エルメアーナに手伝ってもらって作ったものです。 今回は数体有るので、送られた箱の数も多かったと思います」


 唖然としているカインクムに、ジューネスティーンは少し困ったので、どうしたものかと思って声をかける。


「あのー」


 そう言われて、我にかえるカインクムが慌てた様子でジューネスティーンを見た。


「あぁ、すまん。 つい。 これって、うちの娘が作ったんか?」


 呆気に取られた表情でカインクムは、ジューネスティーンに聞いた。


「基本構造や、パーツの設計は、自分ですが、自分の鍛治技術だと、どうしても作れない所があったので、パーツの一部は、お嬢さんに、お願いしました」


 そこまで聞くと、カインクムが立ち上がって、パワードスーツに近づいて行った。


「あんちゃん。 チョット、触って、良いか?」


「どうぞ」


 カインクムは、一回りして、舐めるように見る。


 そして、関節部分の構造、二重装甲になっている足、腕に取り付けられている盾の形状や材質、そして、腰に付けている、鞘に収まった剣を、マジマジと見つめていた。


「あんちゃん、このゴーレム動くのか」


 パワードスーツは、全身を覆う鎧を内部の人工骨格によって支えられているので、人の形をして立っているので、カインクムは、それを見て、自分の知っているもので、一番近いものとして、ゴーレムと言った。


「中に人が入れば動きます」


 ジューネスティーンとしたら、この世界に無いパワードスーツを開発したので、カインクムの反応を一般的な反応だと思っただけなので、当たり前の事を聞かれた様子で答えた。


「中に入るって、おい、これ、フルプレートアーマーか。 ……。 恐れ入った。 こんな構造にしたのか。 でも、いくらあんちゃんでもこれだと動きが鈍くなるだろ」


 ジューネスティーンの体型は、誰が見ても、筋骨隆々で、体脂肪率も抑えた体が、服の上からでも分かる。


 しかし、誰が見ても、胸を覆う金属の鎧、そこから出ている腕、腰を覆う垂れ、脚も完全に金属で覆われている事を考えると、人が動かせる重量を超えているのではないのかと思われてしまったのだ。


 この重量のありそうなパワードスーツを着て、戦う事は出来ないと、カインクムは考えたのだ。


「内部は、外装骨格と人工筋肉も有りますし、それに、魔法紋で、自分の意思と連動して動くようになってます。 だから、これを着ても、動きは人の動きと、それほど遜色無く動かせます」


 その説明を聞いても、カインクムは、パワードスーツから目が離せないでいた。


「ああ、筋力も、人の筋力以上ありますし、移動速度も、生身の人間より速いですよ」


 ジューネスティーンは、カインクムの様子を気にする事なく、あっさりと話したので、カインクムは、信じられないといった表情で、パワードスーツを見ていた。


「それと、移動ですけど、歩く、走るもできますけど、その足の装甲には、移動の為の機能も備わっていますから、人の走る速さ以上の速度で走る事ができるんですよ」


 ジューネスティーンは、ホバークラフト機能について、濁してカインクムに伝えた。


 この場で、ホバークラフトの機能を説明すると、話が長くなる可能性があると考えた事もあり、詳しい話を控えたようだ。


 そんなジューネスティーンを気にする事なく、カインクムは、ひたすら、パワードスーツを見ていたのだが、今の話を聞いていて、自分には知らない技術なのだと思ったようだ。


 フルメタルアーマーは、人の体に取り付けていくので、人に取り付けない場合は、専用の建具に乗せる事になる。


 しかし、ジューネスティーンのパワードスーツは、ただ、そこに立っているだけだった。


「あんちゃん、とんでも無い物をかんがえたんだな」


 感心するカインクムは、そう言いつつもパワードスーツを見ている。


 こんな物が作れるのかと驚きつつ眺めているのだが、話が進まなくなると思い、ジューネスティーンはカインクムに説明をする事にしたようだ。


「ただ、自分では技術不足で作れなかったパーツは、お嬢さんが作ってくれました。 関節とかの稼働部分は自分だけでは無理でしたので、手伝ってもらえたから完成できたんです」


「そうか、あいつ王国でこんな物まで……」


 目を少し潤ませるカインクムは、自分の娘の成長が嬉しく思うのだが、それと同時に、自分に同じものが作れるのかと、自問自答してしまうのだった。


 帝国に居た時に、エルメアーナには、カインクムが鍛治仕事を教えて、どちらかと言うと、ダメ出しをしていたのだが、それが今、文句の付けようも無い形で目の前にある。


 たとえ、手伝いだったとしても、カインクムには、見たところ、ダメ出しをするような場所は見当たらないようだ。


 カインクムは、それが、嬉しいと思うのだ。


「今回、送られてきたものは、ここ迄、重装甲の物では有りませんが、内部はこれとほとんど一緒です。 内部も見てみますか」


 ルイネレーヌのように情報を入手するのではなく、カインクムは、今後、帝都でパワードスーツの組み立てを行ってもらったり、メンテナンスの手伝いを行ってもらう予定なので、細かな部分も見てもらおうと、ジューネスティーンは思ったようだ。


 カインクムは、ジューネスティーンの言った事が、少し信じられないような様子を見せている。


「あぁ」


 カインクムとしては、願ってもない話だが、こんな最新技術の装備を、平然と見せてしまうジューネスティーンという青年が、何者なのかと考えてしまったようだ。


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