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帝国の鍛冶屋 3


 シュレイノリアのロットが、ジューネスティーンの脇腹に、抉るように入ったのを見ていた、店の主人に心配されるジューネスティーンだが、流石に鍛え上げられた肉体なので、倒れるようなことは無かった。


 ただ、店の主人の後ろに居る兎の亜人は、その様子を見て、自分が同じようになったらと思うと耐えられないと思ったのか、両手で口を押さえ、血の気が引いて青い顔をしていた。


 ジューネスティーンの脇腹に突き刺さるようにロットが入っていったところをモロに見てしまった、その兎の亜人は、明らかに普通じゃない、ロットの入り方だったので、大丈夫なのかと心配したのだ。


 ジューネスティーンは、引きつった顔で、右手を上げてジェスチャーで大丈夫と伝える。


「そ、それ、より、……。 案内を、頼みます」


 店の主人は、少しビビリ気味に、店の奥を手で示した。


 そして、店の主人は出てきた兎の亜人に、話しかけた。


「少し、店を見ていてくれ」


 兎の亜人は、青い顔をしてまだ、口を手で覆いながら、頷いて答えるしかできなかったようだ。


 その横を通り過ぎて行くジューネスティーン達に、兎の亜人は、ジューネスティーンのわき腹と顔色を目で見比べていた。


 アリアリーシャが、兎の亜人の前を、通り過ぎざまに笑顔を向けた。


「大丈夫ですぅ。 何時もの悪ふざけですからぁ。 お気になさらずぅ」


 兎の亜人の店員は、アリアリーシャに声を掛けられるが、ジューネスティーンに、ロットが脇に入った瞬間、えぐられるように入った所を見てしまったので、直ぐには立ち直れないでいた。




 奥には、少し高級感の有る食器や鍋のような調理道具が並んでいた。


 壁には、ガラスケースの中に形も長さも違う様々な包丁やナイフが並んでいるのを、アンジュリーンとアリアリーシャが、何か物思いにふけったように見ていた。


 全員が中に入ると、その扉を閉めて、店の主人が、ジューネスティーン達に声をかけた。


「すまんかった。 ちょっと演技が臭かったが許してくれ。 にいちゃんには悪いことをしたな」


 店の主人は、わき腹を抑えているジューネスティーンにわびた。


「いえ、自分がつまらない事を言ったのが原因ですから、お気になさらず」


 チョット、ムッとした顔の、シュレイノリアが横にいる。


「にいちゃん、女心が分かってない」


 カミュルイアンに言われると、脇の痛みのせいなのか、余裕が無かったのか、いつもならスルーするカミュルイアンの、“にいちゃん”に反応したようだ。


「お前に、にいちゃん呼ばわりされるような年齢じゃ無いんだが」


 わき腹を抑えて、ジューネスティーンがカミュルイアンに言った。


 それは、エルフのカミュルイアンは、見た目は、ジューネスティーンより幼く見えるが、実年齢としたら、ジューネスティーンの倍になるはずなので、兄ちゃん呼ばわりされるのは、違うだろうと思ったからなのだ。


 しかし、そんな事に触れる事はできないのだ。


「そうですぅ。 あれは、シュレが可愛そうでしたぁ」


「私でも同じ事すると思うわ」


 女性二人にも言われてしまうので、ジューネスティーンは、カミュルイアンに、それ以上のツッコミを入れることができずにいた。


 そんな反応をよそに店主は、ジューネスティーンを心配そうに見ているが、隣のカインクムの事を考えると、急いだ方が良いと思い話を促すのだった。


「じゃあ、お隣に移動してもらうんで」


 店主がそう言って、入ってきた方とは反対の壁の扉を開けて、こっちに来いと言うように合図をした。


 扉の先は、工房だった。


 店の主人は扉を開けたまま、ジューネスティーン達を奥へ案内すると、扉を閉めて鍵を掛けると、壁に掛けてある道具の一つを手に取って、2歩下がった。


 すると、しゃがみ込み、床の穴にその道具を差し込むと、ゆっくり、床を持ち上げた。


 隠し扉になっており、下に降りる階段が現れた。


「こっちだ」


 そう言って、主人は階段を降りるので、ジューネスティーン達も後に続いた。


 それは、地下室に繋がる階段だった。


 階段を降りると、右側の壁に有るランプに火を灯すと、中は、何の変哲も無い地下倉庫だった。


 棚に予備の商品が乗っているだけだった。


「さっきの亜人の娘は、俺が帝国に来る前に世話になった人の孫なんだ。 訳あって面倒を見ているが帝国だと亜人は余り良い顔をされないのでな。 隣のカインクムもそうだが、この辺の住人はジュエルイアンと関わりのある連中だけだ。 帝国を面白く思ってない連中の集まりなんでな。 何かあった時用に、お隣とはつながって居るんだ」


 男は話しながら壁に有る棚を横にずらすと、そこにも扉があり、扉をノックすると、その扉が開いた。


 そこには、隣のカインクムが顔を出し、ジューネスティーン達を確認した。


「さっきは、すまんかったなぁ。 さぁ、こっちに来てくれ」


 ジューネスティーン達にそう言うと、道具屋の主人を、カインクムは見た。


「ありがとうな。 助かったよ」


「なぁに、良いてことよ」


 道具屋の主人はカインクムに答えると、カインクムはジューネスティーンに話しかけた。


「早く、あのでっかい木箱を見させてくれ。 ジュエルイアンに連れて行かれた後、エルメアーナが王国でどれだけ腕を上げたか確認したいんだ」


「おぉ、そうだったんか。 この前の届いた荷物は嬢ちゃんの物だったのか」


 店主もカインクムとエルメアーナが、2人だけの親子と知っているので、カインクムの話を聞いて、エルメアーナの親孝行だと思い、ジューネスティーン達を促すのだった。


「ささ、早く行ってあげな。 親一人、子一人のカインクムだから、娘の仕事がどんなだか知りたいだろう」


 お礼を言って、扉をくぐるジューネスティーン達。


 全員が扉を潜ると道具屋の主人は隠し扉を閉じた。


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