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帝国の鍛冶屋 1


 昨日、帝国風の服を購入したジューネスティーン達は、今日も狩に出るではなく、ジュエルイアンに紹介された鍛冶屋に行くことにした。


 その鍛冶屋を見つけて、店の中に入る。


「こんにちは」


 店の奥に聴こえる様に挨拶をして、店内の商品を眺めていると、店主らしき人が出て来た。


 ジューネスティーンは、ジュエルイアンの紹介状をポケットから取り出すと、挨拶をする。


「初めまして、ジューネスティーン・インフィー・フォーチュンと言います。 ジュエルイアンさんから紹介されて来ました」


 ジューネスティーンは、挨拶しながら、ジュエルイアンから預かっていた紹介状を渡す。


 店主は、紹介状の内容を確認すると、連絡を受けていたパーティーだと理解すると大きな声で答えた。


「おお、あんた達だったのか。 俺は、この店で鍛冶屋をしているカラン・レンリン・カインクムだ。 ファミリーネームが最初にきている。 だから、その後にミドルネーム、ファーストネームとなっている。 俺の事は、カインクムと呼んでくれ」


 ジューネスティーンは、ちょっと苦手なタイプなのかもしれないと思うと、顔を少し引き攣らせた。


 それを見て、カインクムは、ジュエルイアンから、呉々も丁寧に扱う様にと、念を押されていたことを思い出したのだろう、少し大きな声だったと反省しつつ、交流を深めるために自分の事を、さっきより小さめな声で話をする。


「ああ、ファミリーネームが最初になるのは、この大陸で帝国だけだからな。 俺は、先祖が帝国に移住してきた時からなんで、俺は違和感がないけど、南の王国から来たなら、まだ、慣れてないかもしれんな。 まあ、ジュエルイアンから話は聞いているから、いつでも利用してくれて構わない、それに秘密も守るから気にせず使ってくれ。 それと、ジュエルイアンから色々と荷物が届いている。 うち宛の荷物だったが、中身はお前さん宛のものだから荷物はそのままにして有る。 ただ、毎回、そこの入り口から入られると困るのでな、後で店に入る方法を教える。 次からそっちを使ってくれ」


 そう言って、玄関から入られるのを周りから見られるのは困るといった感じで、入口を指さす。


(エルメアーナは、随分、早く、仕事を終わらせてくれたな。 まあ、外部装甲だけだったから、それなら、パーツの製作も、それ程、時間も掛からないのか。 でも、もう少し先になると思っていたけど、それに、ジュエルイアンさんも、早馬を使って、帝国に送ってくれたのか。 途中で荷物に抜かれたってことだよな)


 届いた荷物がパワードスーツの組み立て前の状態のものが、もう届いているので、ジューネスティーンは、エルメアーナの仕事に感心する。


「ああ、荷物、もう届いてましたか。 ちょっと無茶なお願いだったのに間に合わせてくれたんだ。 エルメアーナに感謝だな」


 そのジューネスティーンの発言にカインクムの顔色が変わる。


「お前、エルメアーナと、今言ったか」


 ジューネスティーンは、カインクムの感じが変わったので、なんだと言った顔で答える。


「えぇ、エルメアーナです。 ご存知でしたか」


 カインクムは、ジューネスティーンの二の腕を両手でつかみ。


「ご存知も何も、俺の娘だ。 王国に行ったきりで、手紙もよこさなかった。 そうか、お前の知り合いだったんか。 それより、アイツ、元気にしてたか? って、ジュエルイアンのやつ、俺にはそんなこと、何も言ってなかったぞ。 そういう事なら、言っといてくれればいいのに」


 カインクムの剣幕に気圧されながら答える。


「ええ、元気でした。 それに、今回の荷物は、殆んどがエルメアーナの作った物です」


 その一言にカインクムの態度が豹変する。


「なに〜ぃ! おい、中身見て良いか。 アイツ、どんな仕事をする様になったんだ。 お前、直ぐ一緒に荷物を開けろ」


 自分の娘が、南の王国で、どんな仕事する様になったのか、同じ鍛冶屋であって、基本は自分が教えたのだ。


 それが、家を出てからどんな仕事をする様になったか、親として、師匠として知りたいのだ。


「ちょっ、ちょっと、待って頂けませんか。 今日は、そのつもりできたのでは無いので」


 ジューネスティーンの言葉に、今日は中身を確認しないつもりだと分かったのだが、それだと、今日は中身が見れない事になる。


 そうなると次に店に来るのがいつになるのか、早くても明日以降になる。


 それまで、自分の娘の仕事を見れない事になるのだが、工房に積んである荷物が娘の仕事だと分かっていて、そのまま放置するだけと、カインクムは考える。


 次にジューネスティーンが来るまで、工房に、娘の作ったものを置いて、見る事も出来ずに放置するのかと思ったら、夜も眠れなくなりそうだと、カインクムは思ったのだ。


 カインクムは、何としても中身を確認したいと思った様子で、ジューネスティーンに食ってかかる。


「お前、俺に犬の様に、お預けさせるのか? 俺は、お前のペットじゃ無い!」


 ドスを効かせた声で、ジューネスティーンを睨みつける。


「いえ、そういった訳では無いのですけど」


 その勢いに、ジューネスティーンは少しビビる。


「じゃあ、どういった訳で待たせるんだ。 俺はお前のペットで、お前は、食べ物を目の前に置いて、お預けしているご主人様なのか」


 カインクムは、とんでもない事を言い出す。


「いえ、決してその様な訳では無くて、監視の目が有りますから、それで……」


 そう言われて、カインクムは、ジュエルイアンから、言い含められている事を思い出す。


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