ルイネレーヌとの会食 1
荷物を整理して夕闇が迫る頃に、1階の食堂に入っていくと、直ぐにルイネレーヌがジューネスティーン達を見つけると、合図を送ってくる。
いつもの様に、大きなテーブル席にルイネレーヌが1人で座り、その周りのテーブルを囲む様にメンバー達が座っていた。
テーブルに来ると、すぐに声をかけてきた。
何時もなら、ジューネスティーンに話しかけるのだが、今日はカミュルイアンに声を掛けてきた。
「やあ、昨日はお盛んだった様だな。あの2人に先を越されてしまったのは残念だったよ」
ルイネレーヌに言われて、カミュルイアンは顔を赤くして横を向くと、その態度が面白いと思うと更に追い討ちをかける。
「私は、複数の男と寝る事はあっても、複数の女と1人の男に寄り添う事はした事がないんだ。そういった時に私はどうしたらよいか分からないんで教えてもらえないかなぁ」
面白そうにカミュルイアンの顔を覗き込むのだが、カミュルイアンは恥ずかしそうにして答えようとしないので、ルイネレーヌはカミュルイアンを急かす。
「ねえ。 昨夜は、どうだったんっだよ」
更に聞かれて、カミュルイアンは、恥ずかしそうに答える。
「いえ、僕は、ただ、寝ていただけでしたので、上になってくれてましたから、僕は何もしていません」
すると、ルイネレーヌは、ニヤニヤとする。
「ほーっ、お姉様方に全部お任せだったって訳か。 これはあのエルフも隅に置けないな」
ウィルリーンとシェルリーンが、積極的に迫ったのだと、ルイネレーヌが、その事を強調するように言うので、カミュルイアンは、少し困った様な顔をする。
「いえ、さ、最初だけです。 場所とかも教えてもらいましたから、その後は、彼女達にしてあげました」
かなり恥ずかしいそうに、答えているカミュルイアンを見て、面白がるルイネレーヌが、楽しそうにしている。
「エルフ属は、受胎が難しいみたいだからな。 ちゃんと量も与えてあげないといけないらしいじゃないか、大丈夫だったのか?」
「だ、大丈夫です。 何度もしましたから」
小さな声で答える。
「えっ、何だって? ちゃんと種を与えられなかったのか。 あの2人も可哀想な事をしたみたいだな」
意地悪にルイネレーヌは、カミュルイアンに言うと、それを聞いてムッとしたカミュルイアンが答える。
「大丈夫です。 2人には3回ずつ与えましたから、問題ありません」
少し大きな声で答えてしまって、周りが全員カミュルイアンを見る。
慌ててカミュルイアンは口を押さえる。
それを見たルイネレーヌが驚いた顔をする。
「さすがはエルフだなぁ。 そんなに元気なのか」
そう言って、自分のメンバーのナギシアンを見ると、ナギシアンは驚き気味にしつつ、顔を横に振って否定している。
エルフ属の男性全員が全てそんな強者では無い、自分も一緒だと思わないで欲しいと目で訴える。
「ふーん。 まあいいか」
そんなルイネレーヌにジューネスティーンが、話題を変えようと話しかける。
「その辺にしておいてもらえませんか」
ジューネスティーンにそう言われてルイネレーヌも、揶揄うのは終わりにしようと思う。
これ以上、この話をしたら取り止めもなく続いてしまうかもしれないと、自分でも思っていた様子だったので、ジューネスティーンに止めてもらって正解だと思った様だ。
「そうだな。 こんな話のためじゃなかったからな」
そう言って席をすすめてきた。
ジューネスティーン達が全員が席に着くと、ルイネレーヌが話を進める。
「昨日は、野暮用だったみたいで、話ができなかったが、一昨日の魔物の話だ」
そう言って、カミュルイアンの顔を見てニヤリと笑う。
女子3人は、まだ、かまってくるのかと思い嫌な顔をしており、当のカミュルイアンも俯いていた。
それを見たジューネスティーンが、話が逸れない様に魔物の話を続けさせる様に誘導する。
「魔物の話ですよね。 続けていただいて構いませんよ」
「ああ、そうだったな。 つい、つい、気になってしまって、気持ちがそっちにいってしまってな」
ルイネレーヌはそう言うと、本題に入っていく。
「帝国の東の森の防衛ラインといっても、森に沿って線で軍を配置しているわけではないからな。 駐屯地を設けて、東の森のラインに沿って配置しているだけだった。 その間を魔物が抜ける事は容易い事なんだよ。 それに帝国は国土を東に広げようとしているから、防衛隊と言っても半数は開墾作業を行いつつ魔物の警戒に当たっていた。 だから、隙を縫って、東の森から出てくる事も可能と言うことさ。 それと、最近は、東の森の魔物が頻繁に発生している様だ。 どうも、魔物の渦が活性化していて、発生頻度が高いみたいだった」
ルイネレーヌの情報は、何処から仕入れるかは分からないが、魔物の渦が活性化していると言うのは、何処かから仕入れている様に思える。
それと、東の森から魔物が出てくるのは、防衛戦略の欠陥を突いた事になる。
帝国軍の兵士1人でも魔物と対等に戦えるなら、間隔を置いて配置して、出て来たところを兵士1人で抑えておいて、増援を待つという方法も取れるだろうが、東の森の魔物を倒すには、数十人の兵士が必要となるので、1人の兵士が東の森の魔物と対峙した場合、瞬殺される可能性が高い。
兵力分散せずに、見つけたら駐屯地から向かわせるという方法を取っているだろう。
ただ、東の森の開墾を軍が行なっているとなると、森の境界付近にある魔物の渦の周辺より、魔物の渦から遠い場所に駐屯地を設けて領土の拡大を画策している場合と、兵士の命の危険を低くする為に魔物の夜行性の性質を考えれば、夜襲されない為に、駐屯所は魔物の渦から離れた場所に設定する可能性が高い。
そうなれば、森から魔物が出てくる可能性も高くなる。
ジューネスティーン達が、南の王国からの東街道を通っていて、今回の様に東の森の魔物に遭遇する事も十分にあり得る話である。
そうなると、今後も、東の森の魔物が、帝国内で現れる可能性も高いはずである。
そんな事を聞いていると、昨日ギルドマスターに会った時に、帝国内に出現した東の森の魔物の出現頻度を、ジューネスティーンは、確認しておけばよかったと思った様だが、次にギルドに行った時にルイゼリーンに確認すればよい事だとジューネスティーンは思い直した様だ。
東の森の魔物を倒す機会が増えれば、それだけ帝国軍の目にも止まり、目的を果たす為の依頼を受け安くもなる。
「そういえば、倒した魔物から出た金塊はどうなった?」
「ああ、金塊ならギルドが相場で買い取ってくれました」
ルイネレーヌは、一瞬疑う様にジューネスティーンを見るが、直ぐに表情を戻す。
「そうか、少し色をつけてくれるかと思ったが、違ったみたいだな」
実際には、上乗せ分は有ったが、そんな事は言わずにいるが、ルイネレーヌは上乗せ分について気がついているとジューネスティーンは思った様だ。
だが、お互いにそれ以上の話はしない。




