ウィルリーンの別れと出会い 〜仲間との出会い 2〜
ウィルリーンは、旅の最中は、常に師匠である老婆の占いに出てきた運命的な出会いについて考えていた。
運命的な出会いとなったら、自分の旦那様になる男性エルフだろうと思うことにしていたのだ。
そして、自分の旦那様になる人は誰かと考えていたのだが、現れたのが、ドワーフの少女かもしれないと思うと、期待はずれ感が大きかったようだ。
しかし、最初に出会ったのは、ドワーフの少女だったのだが、ひょっとすると、これが運命の出会いの可能性があるとウィルリーンは思ったようだ。
その少女は、ウィルリーンの様子を気にすることは無かったようだ。
「それに、私も冒険者になって、お前を助ける。 斧なら、兄貴達と一緒に木を切っていたから使える。 きっと、役に立てるはずだから、だから、一緒に連れて行ってくれないか」
ドワーフの少女は、自分の言いたいことを言った。
(木こりだったのね。 それと、少し図々しくないかしら)
ウィルリーンは、少しがっかりした様子をした。
これが、師匠である老婆の占いに出た運命の人なのかと思うと、少し、やるせなさがあるようだ。
「分かった。 首都まで、道案内、お願い」
ウィルリーンは、少し残念そうに答えた。
「その先は? それにこの国に入ったのは何でなのだ? お前、エルフだから、この国には大した用事も無いのだろう」
ドワーフの少女は、ウィルリーンがエルフであることから、ドワーフの国で暮らすために来たとは思ってなかったようだ。
村を出たエルフは、国に帰ることは無く、ドワーフの国は、ドワーフ以外が住むには、外国と貿易を行う商人以外には、住みにくい国である。
そんな事もあり、ドワーフの少女は、ウィルリーンが、この国を通過するために入ったのだろうと思ったようだ。
その事から、ウィルリーンは、自分の旅の事が、ある程度見透かされていると思ったようだ。
「わかった。 この国だと、あなたは、自由が無さそう。 私は、北の王国、一緒に行く」
すると、そのドワーフの少女は、便乗できると思ったのか、表情を綻ばせた。
その表情を見たウィルリーンは、マズイと思ったようだ。
「ただし! 」
条件があると思うとドワーフの少女は、綻んだ表情が不安そうに変わった。
「北の王国まで、試用期間、その間、私が認めなければ、そこで、お別れ」
条件は、ウィルリーンの眼鏡にかなう事になった。
さっきの話から、ウィルリーンは、冒険者になると分かっていたので、ドワーフの少女は、冒険者として使いものになるかどうかなのは、直ぐに理解できたようだ。
「ああ、かまわない。 それでいい。 だが、お前だって、冒険者として一人前とは言えないだろう。 私と同じ位の年頃だろうし、経験だって大して変わらないだろう」
ムッとした様子で、その話を聞くと、ウィルリーンは、右手を地面に掲げて呪文を唱えると、そこに光で描かれた魔法紋が現れる。
そこには、魔物のコアが何個も山になって浮き上がってきた。
「私が、修行中に集めた。 魔物のコア。 これ、ギルドに持っていく。 換金する」
ウィルリーンは、旅の途中で倒した魔物のコアを見せたのだ。
その魔物のコアをドワーフの少女は、驚いた様子で見ていたので、ウィルリーンは、イニシアチブを握ったと思ったようだ。
「よろしく。 私は、ウィルリーン。 ウィルリーン・エルリン・ウィルラン」
魔物のコアを見ていた、ドワーフの少女は、ウィルリーンが名乗ったので、お互いに名乗ってなかったことに気がついたようだ。
「ユーリカリア。 ユーリカリア・ソルボ・アメルリアンだ」
つられて、ユーリカリアも自己紹介した。
「わかったわ。 ユーリカリア、それじゃ、まず、首都に、……」
ウィルリーンは、ユーリカリアの服が、火事の影響でボロボロになっている事が気になった。
流石に、その格好でズーッと街道を歩いていくわけにはいかないと思ったようだ。
「それより、近くの村か街で着る物を調達する必要があるわね」
それを聞いて、ユーリカリアは、困ったような表情をした。
「そうだろうが、私は、この身一つで逃げてきたから、お金も代価になるものも無いぞ」
「ああ、お金なら、私が出すわ。 それに、ドワーフの女性だと分かると、誘拐される可能性もあるわ」
ウィルリーンは、現実味を帯びてきたようだ。
若い女性ドワーフが、単独で街道を歩いて行くのは、目立ち過ぎると思ったようだ。
「それなら、エルフになってもらおうかしら」
そう言うと、ウィルリーンは、呪文を唱えた。
呪文が終わると、ユーリカリアの耳が、エルフの耳変わった。
「魔法で、エルフの耳にしたから、これで、周りからはエルフが2人旅をしているみたいに思われるわ」
ユーリカリアは、言われて自分の耳を指でいじくりだした。
「おおー、ウィルリーンと同じ耳だ」
そして、驚いたように答えた。
「これなら、エルフの女性で通せるな」
ユーリカリアは、満足そうに答えた。
「それなら、街道を歩いていても、ドワーフの女性だと思われないわ。 早いところ、服を買う事にしましょう」
そう言うと2人は、移動を始めた。
そして、首都に向かって歩き出した。




