帝国で初めての会食 〜カミュルイアンと2人のエルフ〜
中央の席にいたフェイルカミラが、後ろからカミュルイアンに声をかけてくる。
「カミュルイアンさん、そちらも食事が終わったみたいですけど、この後はどうしましょうか?」
カミュルイアンは何のことを聞かれたのかよくわからないていると、フェイルカミラが恥ずかしそうにして俯きながら、上目遣いでカミュルイアンに聞いたのだが、カミュルイアンが何のことか分からなそうにしているので、どうしようかと思う。
ウィルリーンもシェルリーンもその事を気にしているのだが、自分からは言い出したくないので、フェイルカミラに言わせようとしているのか、俯いたままでいる。
カミュルイアンも何のことか分からない様子で、当事者のフェイルカミラもシェルリーンも言い出せそうも無いとなると、この後の事を進めるには自分だけだと思い、勇気を振り絞って本題を伝える事にする。
「今日は、この後の夜伽のお相手はどうしましょうか? 当方としては2人を一緒に相手をして貰った方が、今後、2人の後腐れが無くて助かるのですがいかがでしょうか?」
フェイルカミラは、顔を耳まで赤くしてカミュルイアンに伝える。
その件については、どちらのメンバーも興味があったので、全員がカミュルイアンが何と言うのか興味津々で聞き耳を立てていた。
話に夢中になっていたので、その事を忘れてしまっていたカミュルイアンは顔を赤くして、どうしようかと思うのだが、フェイルカミラとしては、ウィルリーンとシェルリーンが後先で揉める事になるので、手っ取り早く一緒に相手をしてもらう方が助かると考えている。
カミュルイアンの年齢なら一度に何回でも出すものは出せるだろうから、最低でも2人を順番に相手をしてもらえればよいと考えた。
多分、今日そういう事になれば、エルフの性格的に受胎の為に2・3日はゆっくりすると言い出し、狩も依頼も受ける事にはならないと思われるので、一人一晩で相手をされるより二人同時に相手をしてもらった方が、パーティー的にはありがたい。
「いえ、そのー、自分の部屋は、あそこのレオンと一緒ですので、さすがにあいつの前でそういうことはできないので、そのー」
そういう話をするだろうと予想していたのでフェイルカミラも抜かりはない。
予め一番近くのメイドを見つけていた。
「でしたら、部屋はこちらで用意いたします」
そう言ってフェイルカミラはメイドを呼ぶように右手を上げると、その右手をカミュルイアンが慌てて下させる。
「いえ、まだ、そのような事は、それにメンバーの皆んなに知られて部屋に行くなんて、そのー」
これからメンバー全員に2人のエルフの相手をするから別行動になると認識されて部屋に行く事に抵抗があるので、断る方向で話を進めようとしているのだ。
その恥ずかしさを誤魔化すためならと思い、フェイルカミラはもう一つ提案をする事にした。
「それなら、ご一緒の部屋のレィオーンパードようにも娼館から1人お呼び致しましょう? 流石に私やうちの亜人達にそのようなことを強要はできませんので、別々に二部屋ご用意致します」
そう言って、カミュルイアンに持たれた右手を上げようとするが、カミュルイアンが抵抗する。
先の席に居るレィオーンパードもフェイルカミラがカミュルイアンに話していた事を聞いて、面白がっていたので、降って沸いた話に面食らって、なんで自分の話が出てくるのかと、ジューネスティーン達のテーブルを見ている。
フェイルカミラは、良い配慮をしたと思うのだが、それでもカミュルイアンは不服なのかと思い、カミュルイアンの顔を見ると、耳まで赤くして答える。
「すみません。まだ、そう言う事には慣れていませんので、今日はご容赦ください。時々こうやって食事をしたり話をして、もう少し気持ちを落ち着かせてからお願いします」
カミュルイアンは下を向いたまま、そう言うのだが、自分のメンバーの2人が今のカミュルイアンの話を聞いて寂しそうな顔をしている。
彼女達としても、とても恥ずかしいお願いをしている事だったのに、それを相手のカミュルイアンに断られてしまい、なんとも恥ずかしい思いに陥っている。
「私はそれで構いませんが、あの2人の顔を見ていただけませんか」
そう言われても、自分がどんな顔で2人を見て良いのかという思いと、恥ずかしさから、フェイルカミラに言われてもウィルリーンとシェルリーンの顔を見る事ができない。
ウィルリーンとシェルリーンは、恥ずかしさもあるが、このままこれで終わってしまったら、次が有っても今日と同じになってしまうのではないかと思うと、すがるような顔でカミュルイアンを見ている。
カミュルイアンは、その顔を見る事が出来ないまま、フェイルカミラの右腕を持ったまま、どうしようかと悩んでいると、その情けないカミュルイアンの態度を見たアンジュリーンが痺れを切らせ、ヤレヤレと思い最後の一押しをするために話だす。
「もう、諦めた方がいいんじゃない。誰にでも最初はあるんだから。2人に教えてもらってきたら」
アンジュリーンがカミュルイアンにそう言うと、場の空気が固まる。
その空気にアンジュリーンは頬を赤くする。
「姉として弟にお願いします。彼女達の願いを叶えてあげてください」
そう言われて、カミュルイアンが、いつもの口調で反論する。
「誰が姉だ! 妹のくせに、兄貴の事に口出しするな」
そう言われて、アンジュリーンが一瞬思惑ありげな顔をするが、すぐに元に戻る。
「あんたの気持ちは分かった。でも、彼女達の気持ちはどうするの! 恥ずかしい事を種族の繁栄の為に子孫を残すためだけで、あなたにお願いしたの。私には恥ずかしくてこんな行動を取れないわ。だけど、彼女達は恥を忍んであなたにお願いしに来たのよ。それをあなたは追い返そうとしているのよ。2人に恥の上塗りをさせたい訳!」
捲し立てられて黙って俯いてカミュルイアンを、アンジュリーンは睨むように見ていると、踏ん切りが付かないのか、未だにフェイルカミラの右腕を持ったままの状態を見て、アンジュリーンは一番近くにいる猫系亜人のミューミラを手招きで呼び寄せる。




