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帝国で初めての会食 〜シェルリーンの矢〜


 その態度にウィルリーンは、少し悪戯心を出してシェルリーンに聞く。


「じゃあ、何で、今話したのかな」


 尋ねると、前に座る2人の方を向いて、少し恥ずかしそうにすると小さな声で話だす。


「だって、この2人は何だか真剣に聞いてくれるような気がしたから」


 語尾の方になると声がさらに小さくなってしまい、顔は下を向いてしまう。


「ああ、悪かった。ちょっと、信じられない話だからな。 自分には見えないものは話を聞いてもいまいちピンと来ないんでな。 でも、あんた達2人はこいつの話を最初から真剣に聞いてたよな」


 アンジュリーンとカミュルイアンを交互にみる。


 ウィルリーンは2人に助け舟を出して欲しいと視線を送った。


 それを見てカミュルイアンが少し慌て気味になって答える。


「あっ、ええ、どんなことでも話はしっかり聞くようにしてます。 その話が嘘なら、色々と質問していく中で嘘が剥がれてくるから、話を続けていけば分かります。 嘘は、途中で辻褄が合わなくなるから、それで嘘だと分かるけど、真実なら何処まで話をしても辻褄が合わなくなる事はない。 ……、です」


「まあ、それもジュネスの受け売りですけどね」


 カミュルイアンが言った事にアンジュリーンが、横からジューネスティーンが言った言葉だとバラしてしまうので、カミュルイアンは、アンジュリーンを睨むので、アンジュリーンは、そっぽを向いて舌を出す。


 それを聞いてシェルリーンは気持ちが落ち着いた。


「あ、でも、ありがとうございます。 お二人が真剣に聞いてくれたので、嬉しいです」


 2人が、ちゃんと話を聞いてくれた事に素直に喜ぶ。


 シェルリーンの気持ちが、元に戻ったと思ったアンジュリーンは、シェルリーンの話の中で気になったことを聞く事にした。


「ねえ、ところで、そのモヤや光点が見えるようになったのっていつ頃からなの?」


 質問されて、自分が最初にモヤが見えた時のことを思いだしていた。


「結構、早かったです。 子供の頃に親に連れられて行った狩りとか、村の合同の狩りに行った時とか、母や他の人の弓が当たるのとか外れるのとかも見えました」


 弓が当たる外れるが見えた。


 しかも、ほぼ最初の狩の時から、その言葉が引っ掛かるが、今の話を総合すると見えてくる結論は、シェルリーンは生まれつき未来予測ができたという事になる。


「それって、生まれつき見えたって事みたいだわね」


「何かの天恵かもしれない」


 そう言って、アンジュリーンとカミュルイアンは顔を合わせる。


 自分には、そんな物は見えてないが、相方は見えているのだろうかとお互いに思いつつ顔を合わせた。


 その表情を見ると、お互いに見えてない事が分かる。


 何故、シェルリーンには、そのモヤが見えるのか、どんどん興味が増してくる。


「ねえ、見えたきっかけとかは何か無かったのですか? もっと何かあるでしょ。 もう一度良く思い出してみて。 何か薄っすらとした事とかでも良いから思い出してみて」


 カミュルイアンが真剣にシェルリーンに質問すると、シェルリーンは少し驚く。


「えっ、ええーっ、そう言われましても、獲物を狙うとか誰かが狙いをつけているのを横から見ていると見えてくるんですよ」


 シェルリーンが、困ってしまうのを見て、アンジュリーンが、カミュルイアンを抑える。


「そんな言い方しないの」


 カミュルイアンもアンジュリーンも今の話が気になっているので、何かヒントになる事が欲しい。


 もし自分にもシェルリーンのような光が見えたら自分達の弓の精度も上がるのだが、もっと上手く聴かなければ、追い詰めるような利き方ではなく、ソフトな感じで聞かなければ、思い出せないと感じる。


「ねえ、さっき周りの人の矢が当たるか外れるかも見えたって言ったわね。 その矢の先はどんな感じで見えたの?」


 少し落ち着いたシェルリーンが思い出しながら答える。


「矢の先は、モヤと言うよりは一本の線に近いです。 透明な矢の色のようなと言うか薄い茶色のような線が伸びてました」


「と、言う事は、自分の矢の軌跡もそんな感じで見えているの?」


「はい。 その軌跡と光点が交わった所で弓を射るんです。 そうすると、獲物に当たるんです」


「それじゃあ、風が吹いている時とかはどうなの?」


 矢は風の影響を受け易いので、風の影響を受けた矢は必ず軌道に変化が起きる。


 風によって矢が流されるので、その影響で矢の軌道は動いてくるのだ。


 その時の影響が気になって聞くと、シェルリーンは、また、思い出すように考える。


「うーん。 風が強いと、矢の軌跡は途中から薄くなってしまうんですよ。 それで遠くの方になれば、矢の軌跡は消えてしまうんです」


 アンジュリーンは聞いた内容を精査するように考え込む。


(未来予測をしているなら、風が吹いていても風の向きや速さで軌跡は描かれても良さそうだけど、風が強いと薄くなって見えなくなるってどう言う事なのかしら? 一般的な予測って、確か微分で求めるはずだから、矢の描く放物線と風による影響を計算すれば良いだけなのだから、もし、それが外部の何らかの働き掛けならどんなに風が吹いていても軌跡は見えても良いはず。 でも強い風だと見えない。 ん。 見えない。 見えないのなら)


 そう考えると、アンジュリーンはシェルリーンに自分の疑問を尋ねる。


「ねえ、矢の軌跡や獲物の進む先が見えるなら、風は見えないのかしら」


 風と言われてシェルリーンは、呆気にとられてしまう。


「風ですか?」


 思わず聞き返してしまった。


「そう、風」


 しかし、アンジュリーンは真剣に聞く。


 その真剣さに困りつつも、弓で射った時のことを思い出す。


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