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帝国で初めての会食 〜もめる2人のエルフとカミュルイアン〜


 しかし、2人の会話に入れなかったシェルリーンは、ムッとした顔をしている。 

 そして、ウィルリーンに、愚痴を言う。 


「副リーダー、ずるいです。 自分だけいっぱい話した。 私も、もっと、お話しがしたいです」


 そう言って、自分もアピールしたいとせがむが、ウィルリーンは、余裕の顔つきで答える。 


「それは、お前が悪い。 今まで、何も考えずに来たから話せないのだよ。 いつも物を考えろと言ったのは、こういった時に、ちゃんと話ができるようになんだ。 今、カミュルイアンが話した内容を頭の中でイメージできたか?」


 シェルリーンは、頬を膨らませて黙り込むので、ウィルリーンは続ける。 


「考えないから、相手の話を理解できない。 理解できないから話せない。 何をするにも考える事、微妙な変化を見逃さない観察眼、特に、自分の体調に、僅かな変化がある事を気付けないのは致命的だ」


「うーっ、副リーダーは酷い。 そこまで言うことはありません。 私だって傷付きます」


 そう言ってそっぽを向いてしまった。 


 それをみたカミュルイアンが、流石に、これではまずいと思ったのか、今のウィルリーンの話から、ジューネスティーンに言われた話を思い出すと、その話をシェルリーンにしてあげようと思うと声をかけた。 


「これは、ジュネスの受け売りなんだけど、全ての行動には必ず次が有る。 その行動の後に、何が起こるのか? 自分でも他人でも、その行動を起こす前に、その後の結果を考えろ。 そうすれば、行動した後のイレギュラーも見えるようになる。 失敗も減る。 だからいつも考えるんだ。 そんな事を言ってました」


 そこまで言うと、シェルリーンの表情から、少し難しかったのではないかと思ったので、カミュルイアンは少し考えてから、今の話をもう少し説明したほうが良いと思う。 


「つまり、考える癖を、つけておけば失敗も減るし、余計な事をする必要も無くなるし、忘れることも減る。 だから、常に考える。 そして、考えるのは、自分の行動の後に、どうなるのかを予測する事から始めれば、徐々に考える力はつくようになる。 そんな事だと思う」


 カミュルイアンは、ジューネスティーンの言葉を、自分なりに翻訳して、シェルリーンに伝えた。 


 シェルリーンは、自分を心配してくれたカミュルイアンの言葉が嬉しくて、顔をくちゃくちゃにする。 


「ありがとうございます。 今の言葉、心に刻んでおきます」


 嬉しそうに答えたのだが、今までのシェルリーンを知っているウィルリーンは、本音を漏らす。 


「今の言葉、どこまで理解できたのやら」


 そう言われて、シェルリーンは、ウィルリーンを睨みつける。 


「だが、考える力をつけるには、自分の行動の後にどうなるかを考えるのか。 これは良い事を聞いた。 うん。 面白い」


 ウィルリーンは、自分で言って自分で納得していると、シェルリーンが、涙目で自分を見ている事に気がつく。


「酷いです。 今の言葉は、カミュルイアン様が、私に言ってくれた言葉なのにい。 副リーダーが、横取りするなんて、ずるいです」


「ああ、分かった。 お前の為の言葉だったな。 ちゃんと心に刻んでおけ。 その方が私も楽だ」


 心に刻んでおけ、までは、よかったのだが、その後の、私も楽だと言った事に、妙に引っかかっているシェルリーンが、ジト目でウィルリーンを見上げている。 


「その方が、私も楽だって、どう言うことですか。 私が、考えてないみたいじゃないですか」


 ウィルリーンは、何を当たり前の事を言っているのだ、という顔でシェルリーンを見る。

 

 少し下から、見上げるように睨み付けている、シェルリーンの顔が赤くなっているのが、正面に座るカミュルイアンに分かる。 


 ウィルリーンは、シェルリーンが、本気で怒り出している事に気がつき、まいったなと顔に出す。 


「まぁ、その通りと言えばその通りなんだが、お前が、今以上に、考える事ができれば、うちのパーティーももっと魔物を倒せるし、依頼もこなせるんじゃないかと思ってな」


「やっぱり、副リーダーは、私の事を無能だと思っているんだ。 酷いです」


 そう言って膨れているので、2人が喧嘩にならないかと冷や冷やしながら、アンジュリーンもカミュルイアンも、ウィルリーンとシェルリーンを見る。 


 どうしようかと思い、何か別の話題に、すり替えなければと思い、アンジュリーンが、カミュルイアンを、突っつくのだが、カミュルイアンは、アンジュリーンの顔を見ると、首を横にブルブルと振る。

 

 前に座る2人を見ると、シェルリーンがウィルリーンを睨み付けており、ウィルリーンは困った顔をしている。 


 ウィルリーンもチラチラとアンジュリーンとカミュルイアンを見ており、やはり、助けを求めている。 


 すると、カミュルイアンは、ギルドで、シェルリーンが、弓を背中に背負っていた事を思い出すと、話を変えるには、丁度、良いと思ってシェルリーンに話しかける。 


「そう言えば、シェルリーンさんも弓を使うみたいでしたけど、メインに使う武器は弓なのですか?」


 それを聞いて、ウィルリーンを睨んでいた顔が綻び、目が輝き出して、ゆっくりと、カミュルイアンの方に顔を向ける。


 カミュルイアンの言葉に、安堵のため息を漏らすアンジュリーンとウィルリーンなのだが、シェルリーンは、一瞬アンジュリーンが安堵していたのを見てから、何か思うところがあったのか、パッとウィルリーンの方を向きじろりと睨む。 


 そのシェルリーンの顔を見て、ウィルリーンは慌てて反対の方を向いてしまう。 


 その態度が気に喰わないでいると、カミュルイアンが、心配そうに声をかける。 


「あのー」


 シェルリーンに恐る恐る尋ねる。 


 シェルリーンは、カミュルイアンが、自分にチャンスをくれたのだから、ウィルリーンを相手にするのでは無く、カミュルイアンに自分をアピールしなければ、ウィルリーンに負けてしまうと思い、改めてカミュルイアンに笑顔を振る。


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