帝国で初めての会食 〜ウィルリーンの魔法と、ジュネスの学校生活〜
エルフの男性出生率は、10%以下と言われている。
村の人口が100人だったとしても男性エルフは10人も居ない。
場合によっては男性エルフは1人だけという事もある。
長命なエルフと言われているが、男性出生率の低さからエルフの種を絶やさない為に長命になったとも言われているが定かでは無い。
また、男女の出生比率の偏りの有る種族、ドワーフもダークエルフも人や亜人より長命である事から、この世界では男女の出生比率の偏りのある種族は長命とか、長命だから男女の出征比率が異なるのだと言われている。
エルフの世界では、生まれた男子は、その母親と一緒に別の村の男子親子と交換されるのが常であり、エルフの近親相姦を避けるための処置である。
その為、男性エルフが生まれると大事にされる。
それは、他の村の男性エルフとの交換を行う為である。
行った先でも母と子は、村長宅で、母親は第二夫人として、子供は村長の養子として育てられ、村長が産ませた村の女の子達に種付けする事になる。
中には、それが気に入らない女子もおり、年頃になると村長の息子が気に入らない時は、村を出る女子も居る。
しかし、村を出た女性エルフが他のエルフの村で受け入れられはするが、暖かくは受け入れられない。
村で生まれた女子が外に出た時にどうなるかの見せしめにするので、受け入れられた後の生活は、以前の村に居た時より悪い事になる。
しかし、村によっては、新しい男子が誕生する前に1人だけの男性エルフが死んでしまう事もあるので、新たな夫になる為の男性エルフを求めて、やむを得ず村を出る若い女性エルフも居る。
その後の暮らしを考えると女性だけになったエルフの村では、子供を産む事を諦めるか、他の村に行き肩身の狭い思いをして暮らすしかないのだが、男子が誕生しなかったエルフの村から来た女性に男子を孕む事ができないと思われているが、新たな男子が誕生するまでは種をもらう事ができる。
もし、流れ者でも男子誕生をさせる事ができれば、その後の暮らしは一転するので、その100分の1程度の確率に賭ける女子もいるのである。
シェルリーンはそんな事を思いつつ、ウィルリーンに詫びたのだ。
「昔の事よ。 今の私は、冒険者として生きて行くだけだわ」
「そ、そうですね」
シェルリーンは後ろめたさを感じつつ自分の皿から料理を口に運びながら思考を巡らせる。
シェルリーンは何か別の話題を出して場の空気を変えようとして閃くとすぐに言葉にする。
「あ、ああ、あのー、そう言えば、副リーダーの魔法は凄いですよね。 いつも感心させられるんですけど、どこで覚えたのですか?」
なんとか、話を逸らそうとして出た苦肉の話題だった。
「ああ、魔法は、村を出た後に、元冒険者と言っていた人から教えてもらったの」
アンジュリーンもそれに乗る事にした。
「どんな人に教わったのですか?」
「うーん、エルフのお婆さん。 その時に聞いたのは、300歳を超えた後は歳を数えてないって言ってたけど、多分400歳近い人だったと思うわ。 生まれた村を母に言われて出る事になって、北の王国で暮らしているって言う母の妹の所に行く途中で、道に迷った時に助けてもらったのよ、そのお婆さんに」
ウィルリーンは、そこまで話すと、一つため息をついた。
魔法の修行について何か思うところがあるような雰囲気を表情に出す。
「なんで道に迷ったか聞かれて話たからそれまでの経緯を話たら、それなら日常生活に使える魔法を教えてくれるって事になって教わったんだけど、最初に教わった魔法を私が試したら、それを見て、冒険者用の魔法を覚えたいかって聞かれたので、それで教わったの。 まあ、生活の為に冒険者になるのも手かなって思って、覚えておいて損はないだろうと思って安易にお願いしたら、結局そのお婆さんのところで15年も魔法を教わったのよ。 1ヶ月もあれば覚えられると思って答えたら15年よ。 私、村を出たのが20歳の時なの、だからこんな位しか無かったのよ」
そう言って右手で肩の高さ位を示す。
テーブルに座った状態で胸ほどの高さを示すので、身長1m程度である。
エルフは長命なので、人や亜人より成長も遅い、エルフの見た目年齢は人より若いので、20歳は人の10歳程度で、35歳でも人の13歳か14歳程度である。
「うーん。15年はちょっと長い。 でも、まあ、その頃なら丁度良い時期に魔法を覚えられたんじゃないですか。 その年代なら、物を覚える時期としては最適だったかもしれませんね」
今まで口を挟まず、ひたすら料理を食べていたカミュルイアンが話に口を挟んできた。
「ええ、そこで、かなり色々な魔法を覚えたわ。 最後にお婆さんから私の魔法は全部教えたって言われたわ。 でも、そのお婆さんは名前を教えてくれなかったのよ。 好きなように呼んで良いって事で、お婆さんって何時も呼んでたの。 そう言えば、私が現役だあった時は魔法で右に出る者は誰も居なかったとか、国の魔法省に指南したとか色々言っていたわ。 その時は、何となく聞いていただけだったので、へーとか、はーとか言って聞いてただけだったけど、実際に冒険者になって使うようになったら、かなり強い魔法を教えてもらったのだと感謝しているわ」
話に乗ってきたカミュルイアンにアピールするためか、自分は魔法が使えるようになった事を話す。




