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帝国で初めての会食 〜アンジュ達とジュネスの出会い〜


 そんな話をしていると、料理が運ばれてきてテーブルに置かれたので、料理を食べつつ4人のエルフは話を進める。


「ギルドの宿舎に居た頃は、自分達は、どこのパーティーにも相手にされなかったから、いつも2人で近所で狩ってたんだ」


 ウィルリーンは、2人の表情を見て、話が重くなりそうだと思い、話を切り替える。


「ところで、ジューネスティーン達とは、何処で知り合ったの?」


 話が切り替わった。


 辛かった時の事なので、思い出したく無かったアンジュリーンが話に乗ってくる。


「ギルドの高等学校だったわ。 入学して最初のパーティーを組む時に、私達は体力的にも普通以下だったし、魔法も使えなかったから、やっぱり相手にされてなかったの。 ジュネスはシュレとレオンと一緒に組んでいたのよ。 それにジュネスも入学当時は、あんなに筋肉質な体型では無かったし、って言うより、ヒョロヒョロだったわ。 周りからは、ジュネスがなんで特待生なんだって声も有ったから、少し反感も買っていたわね。 それで、余っていた私達と、それと、アリアリーシャは、あの見た目の身長だったし、当時はかなり細かったわね。 胸も含めて」


 入学当時の事を思い出して、在学中にグラマラスな体型に変化したアリアリーシャを妬ましく思っているのだろう。

 わざわざ、入学当時の体型について説明した事が、それを物語っているように思える。


「それにアリーシャは、学費を稼ぐのに、ずっとソロで活動してたって言ってたし、仲間に自分から入ろうって感じでもなかったし、それに入学当時は、あの身長で、頬も痩けてガリガリだったから、周りの生徒から戦力的にどうなのかと思われてたみたいだったから、私達とアリーシャの3人をジュネスが誘って、それが初めてだったわ。 あぶれ者達をジュネスが拾ってくれたって感じね」


 アンジュリーンが呑気な感じで話す。


「でも、良かったわね。 良い人と交流が持てたことは、良かったですね」


 ウィルリーンは、昔を思い出し少し変な顔をする。


「ええ、同じ年にジュネス達とギルドの高等学校に入れたのはラッキーでした。 入学金集めに時間が掛かったおかげですね。 そう言えば、アリーシャも入学金集めと授業料集めで、食べる物も節約していたって聞いた事があるわ。 それで、あの時はあんなに細かったのかしら」


 アンジュリーンは、自分の話している内容から、アリアリーシャの入学前の様子を、自分なりに想像しているような雰囲気を出す。

 そんなアンジュリーンに、ウィルリーンが話しかける。


「何が幸運になるかは、時間が経たないと分からないけど、不幸だと思って諦めたらそこで終わりだ。しかし、不幸な環境の中でも、それを乗り越えようと考える事で未来は開けるから」


 少し悲しそうな顔でウィルリーンは言うと、アンジュリーンが思い出したように言う。


「ああ、それ、ジュネスも同じような事を言ってました。 ピンチの状態というのは改革のためにあるから、その状態を切り抜けるために知恵を絞るんだとか。 そこで諦めなければ必ず道は開けるとかよく言いますね。 私にはあまり実感のない言葉なのですけど、同じような事を別の人からも聞くと本当にそうなのかもって思えます」


「ええ、生きている限り、きっとそうだと思うわ」


 ウィルリーンは、少し寂しそうな顔をする。


 アンジュリーンは、触れてはいけない事を言ってしまったように感じる。


 場の雰囲気が悪くなったと思い、カミュルイアンの方を見るが目を逸らされる。


 後で覚えていろと思いつつ、ウィルリーンに話をする。


「あ、あのー、そう言えば、あなた方の生まれた所には男の人は居なかったのですか?」


 昔のことを思い出していたのか、少し黄昏ていたウィルリーンがアンジュリーンに聞かれて、ハッとなって答える。


「生まれた村に居たわよ。 父親と、その養子がそうだったわ。 でも、私はその父親とは住んで居なかったから、言葉は交わした事は無かったわ」


 それを聞いて、アンジュリーンは、複雑な家庭環境に触れてしまったのでは無いかと考え、更にまずい事を聞いたのではと思うが、隣からシェルリーンが普通に話に加わってくる。


「私は、彼が2人目に見た男性エルフです。 私の父も別の家に住んでました。 私の父もその村の村長でしたよ」


 アンジュリーンは、転移した後、殆ど人属の庶民の世界で暮らしていて、一夫一妻に慣れていたので、今の話に驚いている。


 母親が父親と離婚して母親と暮らしていたのかと、それを見たシェルリーンが、里の事情について説明する。


「エルフは女性が多い社会ですから、村に男性エルフが1人しか居ないとか普通ですよ。 その1人の男性エルフから種を分けてもらうわけですから、村の子供は全て腹違いの姉妹です。 私の村には、男子が誕生してこなかったので、母の世代のエルフ達は村長の子種を順番に貰いに行ってました。 私は、村長の子供ですから、流石に父親の子種をもらうわけにはいきませんので、別の男性を見つけるしかありません。 男子が誕生すると、別の村の男子と交換で養子縁組して、養子として向かい入れられた男性が、次の世代の子孫のための子作りをするんです。 なので、男子が誕生しなかった場合は、村の存続に関わるんです」


 それを当たり前の事のように言うシェルリーン、それを聞いて何とも言えない顔をするカミュルイアンと、かなり引き気味のアンジュリーン。


「そうよね。 実の父親の子種を貰うなんて事になれば、血統が同じになってしまうわね」


 唖然としつつ、答えるアンジュリーンを気にせずシェルリーンは話を続ける。


「でも、副リーダーの所は、村長の養子って事は、村に男子が誕生して交換がなされていたのだったら、わざわざ村を出る事は無かったのでは無かったのでは?」


 それを聞いて、寂しそうな顔をするウィルリーンが答える。


「私の母は、流れ者だったの、詳しくは聞かなかったけど、母の元居た村で母の世代に男性エルフが生まれなかったんだと思うわ」


 村に男性エルフが居なくなったりすると、その村の女性は村を出る事が多い。


 どこかから男性を連れてくるにしても、若い男性エルフを他の村が出すことは無い。


 女性だけの村になってしまったら、その世代でその村は絶える事になる。


 そんな場合は村を出て別の村に移住するのだが、移住先が快く受け入れることは少ない。


「すみません。 余計な事を言いました」


 シェルリーンは、ウィルリーンに詫びる。


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