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帝国で初めての会食 〜それぞれのエルフの事情〜


 ギルドの高等学校と言っても、学校とは名ばかりで、一般教養的な座学は各国の状況や歴史程度で、数学や自然科学のような授業は行われてない。


 ただ、各国の言語は会話を中心に教えている。


 ギルドの高等学校の目的は冒険者の育成にあり、魔法や魔法紋関連、剣・槍の使い方、弓の使い方などの基本を一通り教えた後は、専門分野を中心に冒険者を育てる事にある。


 その為ギルドから専門分野の職員が派遣されていて、ギルド本部に申請し、申請が通れば校内で研究も行う事が可能となる。


 その際にその研究成果はギルドに報告される。


 それなら、ギルドは在校生の実力をかなり正確に把握している事となる。


 卒業後直ぐに死なれるような事をギルドが容認するとは思えない事、今日も直ぐそばにジューネスティーン達を監視するように遠巻きで見ている見かけ無いパーティーは、ユーリカリアとジューネスティーンから聞こえてきた会話からジューネスティーン達と接点があり、何らかの形でギルドが関与していると思える。


 ジューネスティーンとシュレイノリアについての情報は、リーダーのユーリカリアと一緒に居るフェイルカミラに任せて、自分はこの2人のエルフから情報を得る事にする。




 ウィルリーンは、自分の考えがまとまると、長期的にみるとこのパーティーとはカミュルイアンが居なかったとしても、パーティーとして友好的な関係を作っておく必要があると考える。


「2人だけで、突然、砂漠の真ん中に現れて、通り掛かった冒険者に助けられてギルドに連れていかれて本当に心細かったのでしょうね」


「ええ、その冒険者の喋っている言葉が、その時は分からなくて、どうしようかと思っていたんです。 でも、その冒険者の人が背負ってくれるように背中を見せてくれたので、それで2人とも背負われてギルドまで連れていかれたんです。 私達その時は本当に子供だったので、手を繋がれたり、抱き抱えられるより、背中に乗れという格好をされた方が安心できたんですよ。 その時の冒険者の人の背中の温かさを今でも覚えてます」


 昔を思い出すようにアンジュリーンが話してくれたので、好意を寄せてくれるようにするための相槌をウィルリーンは入れる。


「言葉が分からなかったって、それは大変でしたね」


「でも、連れて行かれた先が始まりの村のギルドだったのですけど、ギルドに行ったら、食事と寝る所は用意してもらえました。 それに少し私達の言葉が少しですけど喋れる人が居たので、その人に南の王国の言葉を教えてもらったんです。 多分、私達の教育係だったんだと思います」


 ウィルリーンは、その始まりの村のギルドは、転移者に対して手厚い対応をしてくれるのだと感じていたのだろう。

 何か、考えるような雰囲気を出しながら、アンジュリーンの話を聞いている。


「言葉をある程度覚えたら、冒険者として生きる為に、剣とか弓とかを教えてもらえました。 それで、基本的な事を覚えて、始まりの村付近で魔物のコアを集めて生活してたんです。 それから10年ほどして王都にギルドの高等学校が有るって聞いて、それからは2人でそこに入るための資金集め。 でも、始まりの村付近の依頼だと、何年も掛かってしまうと分かったので、その後は、効率良く稼げるエリアを調べてから、そっちを拠点にして活動してました。 でも、目的の金額に達するまで何年もかかりました」


「随分かかったのですね」


(ギルドも酷いことをする。 当時の2人は、10歳前後なら、人属の5歳程度の子供でしかないのだから、そんな歳の子供を魔物退治をさせるとは……。 でも、ギルドはこの2人になんらかの才能が有ると判断したので、魔物退治をさせたとも言える。 やはり、ここは2人の話を詳しく聞く必要が有りそうね)


 ウィルリーンは、アンジュリーンの話を聞きつつ、話の内容からこの2人の過去をよく聞く必要があると判断しているのだろう。

 かなり、真剣に話を聞いている。


「ええ、私たちは、秀でた物が無かったせいか、あの2人達のようにギルドがお金を出してくれる事も無かったから、費用は自分達で稼ぎました。 エルフのせいもあって体が大きくならなかったから子供扱いされていたので、提供されたギルドの宿舎には、結構長く居る事ができたわ。 時々、現れた人属や亜人の人は、早く出て行ってしまいました。 今思うと、ある程度の体力や筋力が付くまで保護されていたのかもしれません」


 アンジュリーンとウィルリーンが昔の話をしていると、少しカミュルイアンも慣れてきたようだ。

 少し、緊張が解けたのか、話に加わってきた。


「あの時は、大した稼ぎにもならなかったから、お金を貯めるのは大変だったね。 体も小さかったから、パーティーにも入れてもらえなかったし、いつも2人だけだった。 人や亜人の人達は、早く大きくなっていくから羨ましかったよ」


 アンジュリーンの話でカミュルイアンも慣れてきたのかアンジュリーンの話を補足するように話を始めた。




 人と亜人の成長は同じ速度で成長するが、エルフやドワーフは寿命が長い分成長も遅い。


 人や亜人の成人が20歳とすると、それまでにかかる時間は、エルフで60年、ドワーフで40年と言われている。


 ただ、ドワーフについては、成人後の老化速度は、エルフよりも遅いので、30年もすると、同い年のエルフとドワーフの見た目年齢は逆転し、ドワーフの方が若く見えるようになる。


 エルフが人属や動物系の亜人とは違って、ゆっくりと成長する為、10年経っても冒険者パーティーから、子供とみなされてパーティーに2人は入れなかったことをカミュルイアンは思い出したように言ったのだった。




 エルフでも子供の成長は早いとは言っても、エルフの10歳ならば、人属の5歳程度となり、10年経って20歳だったとしても見た目は10歳程度なのだが、その後は成長スピードも鈍化してくるので44歳のアンジュリーンもカミュルイアンも見た目は、16歳程度となる。




 始まりの村で、時々、人や亜人の孤児が冒険者になりたいといって同じギルドの寮に入ることがあったのだが、2・3年もすると何年も寮にいる自分達を追い越してしまう。


 身長・体重、そして冒険者として必要な能力まで追い越してしまうのだ。


 身長も低く、体力にも劣るので、20歳のエルフを仲間に入れるパーティーはない。


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