帝国で初めての会食 〜ユーリカリア達のファン〜
持ってきてくれたメイドは、フロントで会った亜人のリアミーシャとは微妙に違うウサギ系亜人の亜人と猫の亜人だった。
ただ、先ほど見たリアミーシャなのか別人なのか、それとも姉妹なのかと考えてしまう。
その様子をウサギの亜人は、感じ取っていた。
ジョッキを配り終わると、ジューネスティーンとユーリカリアのテーブルの前に立って礼をする。
「「本日はご来店いただき誠にありがとうございます」」
2人が声を揃えて挨拶すると、自己紹介をしてきた。
「これから先、当店をご利用いただいている間、誠心誠意、ご奉仕させていただきます。 私は、ミューミラと申します。 御用の際は何なりとお申し付けください」
年上の猫系の亜人が最初に自己紹介してきた。
終わると、リアミーシャなのか微妙な感じのウサギ系の亜人が自己紹介する。
「私は、アズミーシャと申します。ご来店の際には妹のリアミーシャが、お客様のお相手をさせていただきました。 御用の際は妹のリアミーシャ共々一生懸命対応させていただきますので、よろしくお願いします」
ジューネスティーンは、疑問が解けた。
よく似た姉妹だったのだと理解した。
すると、2人の亜人は、ユーリカリアにもお礼を言う。
「ユーリカリア様、本日はパーティーの皆ようにご利用頂き、誠にありがとうございます。 料理長もユーリカリア様が当店を使ってくれると言う事で、いつもより料理に身が入ると言っておりました。 よろしければ、今後ともご贔屓にしていただけるように、精一杯努めさせてもらいます」
そう言うともう一度礼をして厨房の方に戻っていった。
2人のメイドが戻っていくのを不思議そうにユーリカリアが見てからジューネスティーンに話しかけた。
「ここのメイド達は、丁寧な対応をするのだな」
ユーリカリアが感心して、つぶやくように言うので、
「あれは、きっと、ユーリカリアさんに名前を覚えてもらおうと思ったんでしょう」
「へーっ、そうなのか?」
それを聞いてジューネスティーンは、ユーリカリアの意外な一面を見たように思える。
「おそらくですけど、金糸雀亭の女性はあなた方のファンだと思いますよ。 帝国でAランクの女性だけのパーテイーですから、憧れている若い女性は多いみたいですよ」
面倒くさそうに、ユーリカリアは頭をかくが、それはどうも照れ隠しのように思える。
すると、ユーリカリアは、場の空気を変えようとして、置かれたジョッキを持つ。
「お、硬い話は終わりにして、乾杯しようか」
ユーリカリアは少し言葉を噛んでしまった。
飲んで、気を紛らわそうとしていたのだが、上手くいかなかったのだ。
ただ、その言葉に、ジューネスティーンは少しこまった顔をする。
ジューネスティーンが、申し訳なさそうにユーリカリアに伝える。
「すみません。 うちのメンバー達は、酒を飲まないので、アルコールの無いものに変えてもよろしいですか?」
それを聞いたユーリカリアが、少しがっかりする。
夕食には必ず酒を用意して、夕食をとるより酒量の方が多い。
久しぶりにメンバー以外と、しかも他種族とはいえ異性と一緒の席なので、うまい酒が飲めると思っていたのだが、ジューネスティーンも他の2人も酒を飲まないと聞いて、少しがっかりするが、せっかく持ってきてくれたのなら自分が飲もうと、そのメイドに伝える。
「何だ、お前達は飲まないのか。 なら、持ってきたジョッキは私に回してもらって、新しい物を持って来させよう」
そういって、ユーリカリアがメイドを呼ぶと、ミューミラがすぐに気がついてテーブルに来る。
後ろに居たアズミーシャが少し悔しそうな顔をしている。
「すまないが、6人分のソフトドリンクを追加で頼む。 それと飲まない人のジョッキは全部私に回してくれ」
「かしこまりました」
ミューミラが直ぐにアズミーシャを呼ぶと、アズミーシャは喜んで近付いてくると、小声で、何か指示を出すと、直ぐに厨房の方に帰っていく。
ミューミラは、アリアリーシャたちのテーブルから二つのジョッキを、ユーリカリアに渡すと、ジューネスティーンとシュレイノリアの二つと合わせて五つになる。
アンジュリーンの机にいくと、アンジュリーンとカミュルイアンがジョッキを渡すのをみて、ウィルリーンとシェルリーンも慌てて自分達のジョッキを渡して、自分達もカミュルイアンと同じ物にするように頼んだ。
ユーリカリアの前には、全部で9杯のジョッキが並んでいる。
それを見てジューネスティーンとシュレイノリアが少し驚いていると、隣に座っているリザードマンのフェイルカミラが、ジューネスティーンの様子を見て、説明をするように話す。
「ジューネスティーン殿、気にしないでくれ。 今日はアルコール度数の低いビールだが、何時もなら燃えるほどの酒をこんな感じで飲む人なんです。 本気の時なら立て続けに全部飲んでしまいますから、お気になさらずに」
「まあ、硬い事言うな。 初めて一緒に食べる人の前では少し位、私だって遠慮する」
そんなフェイルカミラの説明に横槍を入れると、早速ジョッキを手に持って、軽くジョッキを上に掲げてから1人で乾杯の音頭を取ると、ユーリカリアが、ジョッキを一気に飲み干す。
ドワーフは酒好きと聞いてはいたが、ジョッキを一気に飲み干すとは思ってなかったので、ジューネスティーンは少し驚いた。
このユーリカリアのようにメンバーも一緒なのかとジューネスティーンは思い、隣のフェイルカミラを見ると、ユーリカリアとは違い一気に飲み干す事は無かったので、酒好きは、ユーリカリアだけなのだろうと理解する。
「くー、ヤッパリ、夜はこれがないと始まらないな」
すると、直ぐに置いてあった別のジョッキを手に取って飲み始める。
それを呆気に取られてシュレイノリアが見ていると、前に座っているフェイルカミラが、シュレイノリアに説明をしてくれる。
「うちのリーダーは、食事もたいして取らないで飲んでいるから、気にしないで下さい。 それと、飲み比べなんてしない方がいいですよ。 私もこのパーティーに入ってそこそこ長い方なのですが、リーダーが誰かと一緒に飲み比べをしても、酒に酔ったところを見たことが有りません。 一緒に飲んでいた相手が潰れる事は良くありましたけど」
「はぁ」
「呉々も、つられて飲まない事です。ドワーフという種族は、アルコールで生きるような人達ですから」
そんな話をフェイルカミラがしているのを横でユーリカリア聞こえてないふりをして、2つ目のジョッキを空にしていた。




