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帝国で初めての会食 〜種族の違い〜


 全員が座ると、ユーリカリアがジューネスティーンに、お礼を言う。


「今日は、うちのエルフの我儘を聞いてもらって、ありがとう」


「いえ、こちらこそ。我々は、まだ駆け出しですから、帝国に入って直ぐに、あなた方のような有名なパーティーとご一緒できるのですから、こちらからしたら願っても無い事です」


 ユーリカリアは、ジューネスティーンの言葉が、歳の割にしっかりしていると思う。


「そう言ってもらえると、こっちも助かるよ。 それより、この店には、私達も入った事がないんだ」


 それを聞いてジューネスティーンが提案する。


「だったら、食事はお店にお任せでよろしいですか?」


 ユーリカリア自身、特に、金糸雀亭で食べたいメニューがあったわけではなく、金糸雀亭の料理が食べたかったのだ。


 お店にお任せとなれば、腕によりをかけた料理が出てくるだろう。


 隣のフェイルカミラも、料理のリクエストが、無さそうなのを、ユーリカリアは確認すると、ジューネスティーンの提案に同意する。


「そうだな」


 それを聞いて、ジューネスティーンが、店のメイドの、奴隷である猫系亜人のミューミラを呼ぶ。


「これといった、料理のリクエストはないので、すみませんが、お店の、おすすめの料理をお願いします」


「かしこまりました。 料理長に伝えておきます」


 そう言って、厨房に向かって歩いて行く。


 ジューネスティーンは、ミューミラの尻尾が、スカートの中で揺れているのが、面白いと思っていた。


 それで、歩き方が、気になっていると、ユーリカリアが話しかけてきた。


「お前は、今の子みたいなのが好みなのか? お隣に、可愛い子を連れているのに、別の子に興味を示すなんて、結構隅に置けないな」


 そう言われて、ジューネスティーンは慌てた。


 そんなつもりで見ていたのではなく、尻尾に興味があっただけなので、その指摘を受けて困ったような表情をした。


「いえ、違います。 自分が気になったのは彼女の尻尾でして、ユーリカリアさん達に会えると言ったら、彼女達は喜んでたみたいで、スカートの中で尻尾を振ってたみたいなんですよ。 それが何だか可愛いっていうか、面白いっていうか、妙に興味をそそられて、目がいってしまいました」


「ああ、そみたいだな。 お前は変な物に興味を示すんだな」


 何だか、子供が自分のペットを見るような感じで、見ていたのかとユーリカリアは納得したようだ。


「ところで、向こう側にいいる、女1人の逆ハーレムテーブルは、お前の知り合いか?」


 ユーリカリアが示す方向には、ルイネレーヌと、そのパーティーが、食前酒を飲んでいる。


「ええ、南の王国の人です。 女の人が、ルイネレーヌさんと言います。 冒険者と言うより、情報屋と言った方が近いと思います。 今回の街道沿いの魔物も、あの人からの情報です」


 ルイネレーヌは、ギルドに所属しているが、様々な諜報活動や魔物の情報を集めている。


 場合によっては、冒険者の素行調査などを行っているのだが、それなりの腕とスキルが要求される為、一般的には、普通の冒険者が依頼として請負ったりするが、専門に情報を売り物にできる冒険者は、殆んど居ないのが実情であり、その中で情報屋と思わせるような冒険者は、Aランク以上の実力の持ち主と言える。


「へー、そうなのか。 時々、こちらを気にしていたみたいだったんでな。 あんたらの知り合いだったか」


 ユーリカリアが、何か考えるようなそぶりをしているので、ジューネスティーンは、そのユーリカリアの表情が気になったので尋ねる。


「どうかしましたか?」


「あ、いや、誰かに似ていると思ったんだ。 気のせいかと思ったのだが、あの女の顔立ちが、南の王国の末の王女に似ているような気がしたんだ。 ただ、私が見たのは、子供の頃の似顔絵だからな。 でも、その王女は10年位前に死んでいるはずなんだ。 ……。 多分、他人の空似だろう」


「……」


 ジューネスティーンが、そんな昔の事まで、よく覚えていると思っていると、ユーリカリアは、余計な話をしてしまったかと思い、言い訳をするように、ジューネスティーンに話し出す。


「ああ、私はドワーフだからな。 これでも85歳だ。 冒険者を始めて50年程になる。 そこの、ウィルリーンとは、同じ年なんだぜ」


 50年も冒険者として活動している事に、少し驚くが、ドワーフということを思い出して、見た目は、20代半ばに見えるが、85歳と言われて、見た目と実年齢の差があることに気がつく。


「そうだったんですね」


 ジューネスティーンは、年齢の話も身長の話も付けて、話そうかと思ったのだが、見た目はほとんど一緒なことと、ドワーフにしては、身長の高い話をして彼女が喜ぶとは思えなかったので、それ以上話す事ができなかった。


 そんなジューネスティーンに構わずユーリカリアは話を続ける。


「ドワーフは700年、エルフなら400年は生きるからな。 その分、人種より成長が遅いんだ。 だから、こんななりでも年齢はいっているだよ。 それに30年後の事を考えた事があるか? あんたは50歳位だから、その時期位には、冒険者を引退することも視野に入れているだろう。 その時、俺もウィルリーンも115歳になる。 人属の見た目年齢からしたら、俺は20半ばで殆ど今のままだ。 多分、女性が産まれ難い種族なのだろうから、出産適齢期が他の種族より長いんだろうし、エルフのあいつでも、見た目の年齢は、27か28程度だ」


 そう言って、ウィルリーンを指差す。


「だから、あいつも私も、今と殆ど変わらない顔形と体型で、その辺を動き回っているんだ。 おたくのエルフだってそうだろう」


 確かに種族毎の年の取り方は違う。


 種族的に男性に偏るドワーフは、女性の出産適齢期が200年から300年と言われており、女性に偏るエルフにおいても、出産適齢期は、100年間有ると言われている。


 男女比が、ほとんど変わらない亜人や人においては、70年前後の寿命な事を考えれば、人や亜人の出産適齢期は、エルフやドワーフに比べると、はるかに短い期間だと分かる。


 それは男女比の偏りが、種の存続の為に、出産適齢期が伸びたことで、寿命を伸ばしているのではないか。


 最初は、100年未満の寿命だったとしても、世代交代していくうちに、その種に適した種の変化が起こってくる。


 それが、男女比の偏りが影響して、寿命が伸びたとも言えるので、出産適齢期の長さは、男女の出生比率の違いが生んだ、種の存続を遺伝子レベルで行われたのではないか。


 そんな事を考えさせられてしまう。


「詳しくは聞いてませんけど、うちのエルフもいい歳だと思います」


「その時にどうするのかは、考えておいた方が良い。 多種族と付き合うと、同じように歳を重ねる事ができないんだ。 その事を肝に銘じておいてくれ」


「そうですね。 それまでには考えておきます」


 ジューネスティーン達のパーティーには、カミュルイアンとアンジュリーンという、2人のエルフが居る。


 自分が、60歳になった時の事を考えると、2人のエルフは、82歳になるのだが、エルフの82歳は、人の24歳に相当する。


 自分の顔に皺が出て、白髪が混じる頃になったとしても、エルフの2人は、成人して少し経った程度となる。


 更に、10年20年が経てば、自分の体は、今のような動きができるとは到底思えないが、しかし、エルフの2人は、若く魔物と戦っているだろうと思うのだった。


 その時、2人と、どう接していけば良いのかと、ジューネスティーンは考える。


 その真剣な表情を見ていたユーリカリアは、種族的に異なる、絶対的な問題を、この若さの青年に、問いかけたことを後悔する。


「まあ、種族的な問題は、お前が、これから先20年・30年掛けて考えれば良い。 俺達だって、同じ事なんだよ。 ただ、今は頭の隅にでもおいておいてくれ」


 そう言っていると、テーブルにビールが運ばれてきた。


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