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メイリルダと少年の生活


 メイリルダと少年は、部屋に入ると入口の両脇は少し狭い通路になっており、その壁には左右に扉が一つずつあった。


 通路をすぎると、部屋の左右の壁際に2段ベットが置かれていた。


(なるほど、これなら4人が寝れるのね)


 ギルドの寮はそんなに大きな部屋は用意されてない。


 格安で使える分、スペースは有効活用されている。


 新人の冒険者が多く、そして、周囲の魔物のコアは、それ程高値で取引されているわけではないので、格安で泊まれるギルドの寮はパーティー単位で部屋を借りることが多い。


 そのため、ギルド側としても人を多く入れられるように、効率よく平面に配置するのではなく、上下に配置する2段ベットを設置していた。


 ただ、この場所は、ギルド職員が使うフロアーとなっているので、同じ建物ではあるが、一般の冒険者との区画は分かれており、自由に出入り出来る事は無い。




 2人は部屋に入ると、メイリルダは、荷物を下ろし扉と反対側にある窓を開いて、今晩使うであろうベットの毛布を窓にかけて日に当てた。


 そして、ベットの準備をするのを、少年はジーッと見ていた。


 メイリルダは、作業が済むと通路の終わったところに、簡単なスケジュール程度を書くことができる黒板を見つけた。


(チョークもあるから、これを使ったら、色々、教えられるわね。……。そういえば、管理人さんが計算をさせるなら転移者だとか言ってたわね)


 メイリルダは、少年の顔を覗き込んだ。


(だったら、最初に教えるのは数字よね)


 すると、メイリルダは黒板の左端に縦に数字を書いていった。


 上から、“0〜9”までの数字を書くと、数字の右側に、“1〜9”の横に数字の数だけ丸を書いた。


 そして、少年に向くと数字を指差した。


「ゼロ、いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな、はち、きゅう」


 メイリルダは、数字を指差して声を出して少年に伝え、何度か行って少年にも声に出して言わせるようにした。


 数字を言えるようになったら、今度は数字の横の丸を指差して、数字を“1”から順番に丸の数を数えた。


 丸を指差して、数字を小さい順番から言う。


 メイリルダは、数えることで数字を覚えさせてようと考えたのだ。


 すると、少年もメイリルダの後を追うように言葉にし始めた。


 そして、最初は数字を順番に指差して、少年に声を出して読ませ、ある程度、読めるようになったと思うとランダムに数字を指差した。


 最初は、時々、数字を間違えたが、その都度メイリルダが修正をしつつ数字を教えていった。


 数字が覚えられたと判断すると、右側の空いた隙間を利用して、今度は下から、1、10、100、1,000、10,000と、順番に桁上がりの数字をチョークで書いた。


 メイリルダは、1〜10億までの数字を下から上に書き、桁上がりの数字について教える。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、いちまん、じゅうまん、ひゃくまん、せんまん、いちおく、じゅうおく」


 メイリルダは、また、数字を指差しながら言葉にし、それを少年が、また、同じように言葉にした。


 数字を教えさせることは、今後、計算をさせた時に自分も知らない何かを見せてもらえるかもしれないと、メイリルダは期待をしていた。


(今日は、この位かな。数字は、大事だろうし、この黒板に書いたものは、しばらく、このままにしておこうかしら)


 メイリルダは、少年に笑顔を向けた。


(あとは、トイレと浴室を教えて、……)


 そして、メイリルダは、何か気になる表情をしながら天井を見た。


(この子は、今日、初めて、この世界に来たのよ。……。トイレもだけど、お風呂も使え、……)


 メイリルダは、もう一度、少年を見ると困ったような表情をした。


(この子に、トイレの使い方も、お風呂の使い方も教えるのかしら! ……。お風呂って、この子は男の子よ。……。女風呂に、この子を連れて入って、……)


 そして、メイリルダは入口の脇に扉が二つあったことに気がついた。


 メイリルダは、扉の前に行き、それぞれの扉を開けると、そこには、トイレと浴室が用意されていた。


(ああ、なるほど、生活することも一から教えないといけないのよね)


 メイリルダは、これからの生活が少年と2人、朝から晩まで何から何まで教える必要があるのだと理解したようだ。


(そうよね。お風呂も一緒に入って、最初は体を洗ってあげるのか。でも、トイレは、……。ああ、お尻を拭くことから教えなければならないのね)


 これから先のことを考えたメイリルダはガッカリした表情をした。


 そして、困ったような表情で少年を見た。


(えっ! ……。これ、お風呂も一緒に入ってあげないと、いけないのかしら)


 メイリルダは、顔を赤くした。


(もう少し小さかったら、良かったのだけど、この位の歳は、ちょっと微妙よね。もう少し小さかったら、恥ずかしさもないけど、この年齢だと、そろそろ、見られるのは、恥ずかしさが出てくるのよね。あと、2・3年経ったら、恋人でもない限り、一緒の浴室になんて入れないわね。……。そう考えると、この位の年齢が、一緒にお風呂に入れるギリギリなのかもしれないわね)


 そんなメイリルダの表情を、少年は不思議そうに見ていた。


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