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帝国で初めての会食 〜2人のエルフ〜


 ユーリカリアの、パーティーメンバーの6人だが、全員が冒険者風から、一般女性の服に着替えている。


 全員から、Aランクパーティーの風格が、伺えるような出立ちなのだが、その中の2人だけ非常に気合の入った衣装で歩いてくる。




 気合の入っているのは、エルフ属のウィルリーンとシェルリーンである。


 何とかカミュルイアンの気を引いておく必要があると判断して、衣装といい、化粧といい、髪型から身に付けるアクセサリーまで、自分が持っている中で一番良い物の中から選んできたのだろう、派手にはならず、若く見えるような物を選んで身につけて着飾っている。


 そして、カミュルイアンの年齢が、自分達より下だと思ったのか、ギルドで見た時より、若く見えるように工夫している事が、はっきりと分かる。


 カミュルイアンの実年齢は44歳だが、人属の見た目年齢からすると、16歳程度にしかみえない。


 そのカミュルイアンに合わせるように全身を使って、年齢差を周りから感じさせないように努力している事が、メンバーからは良く分かる。


 シェルリーンが、見た目19歳程度だが、実年齢は56歳となるし、もう1人のエルフ属であるウィルリーンにおいては、実年齢85歳なのだが、見た目は、20代半ば(24歳)に見える。


 2人とも見た目には、それ程差は無いが、実際には大きな年齢差がある。


 この世代の人属に有りがちな、大人びた化粧や衣装ではなく、その年齢より、少し若く見えるように化粧も薄く、衣装も控え目ながら、気品に満ちた感じを醸し出している。


 相手のエルフの見た目に合わせて、少し若く見えるように、一緒に居ても同じ年に見えるようにして、カミュルイアンに合わせるようにしている。


 また、ウィルリーンの実年齢85歳だが、人属の見た目年齢であれば24歳程度にしか見えないが、見た目でも、16歳と24歳では、人属の多い帝国なら、一緒に居ると、年齢差の離れたカップルに、見られる事になるので、かなり、若作りをしなければ釣り合わないと考えたのか、髪型をツインテールにし、服装も若く見える服に着飾っている。


 どちらも少し若くなるようにして、周りから、歳の差を感じさせないように、気を使っているのが、見ただけで分かる。


 それは、2人が重ねた時間が、相手に与える印象もだが、自分と一緒にいるカミュルイアンを、上手く引き立たせて見せる為に行っている。


 そのため、経験からくるオシャレは、付け焼き刃で表面的なものでは無く、仕草を含めて、全身からあふれ出る美しさを見せている。


 そのため、男性だけで無く、女性から見ても、ウットリとさせてしまう、美しさが醸し出されている。




 2人のエルフは、早速、アンジュリーンの前に行き、片足を後ろに引き、両手でスカートを摘んで、頭を下げた。


「「今日は、私達の願いを叶えていただき、このような宴を設けていただけた事、誠にありがとうございます。 我ら2人、心より貴女様の寛容さに、心より感謝いたします」」


 2人揃ってお礼を言うので、アンジュリーンはびっくりしたようだ。


「あっ、はい」


 アンジュリーンが、おどおどと返事を返すだけだった。


 だが、形式に則った返礼とはかけ離れているが、2人はその事には触れず、満面の笑みをアンジュリーンに向けた。


 カミュルイアンとアンジュリーンは、転移してこの世界に現れたので、エルフのしきたりには疎いと言うより、全く知らないと言って良い。


 いずれ、アンジュリーンにも必要になる事かもしれないので、ウィルリーンとシェルリーンとの接触は、アンジュリーンのためにも良いだろうと、ジューネスティーンは考えていたのだが、2人の態度が、かなり真剣に行なっているので対応に困っているようだ。




 男性エルフの希少性から、このような機会を設けてもらった際、その男性エルフの家族に対する、お礼の言葉を述べるのは、エルフ属の中では当たり前となっている。


 場合によっては希少な男性エルフは、極端な場合では殆ど外には出ず、血縁の無い家族の女性との、性行為の為だけの、種馬として居ることもある。


 エルフ属の種族的に男児の誕生が極めて少なく、10分の1から100分の1の確立しか無いと言われているので、場合によっては、村全体が全員女性の場合もあり、エルフにとっては男性の存在が非常に貴重な存在と言える。


 また、エルフの長命は、その男性出生率の低さによるせいとも言われている。


 その為、男性エルフの家族には、どのエルフも礼を尽くす。


 すると、2人はジューネスティーンの前に行き、同じように謝辞を述べると、メンバー全員に同じように謝辞を述べる。




 ジューネスティーン達のメンバーは、ちょっと驚いた表情を浮かべて、どういった対応をして良いのか困っていると、ユーリカリアが、話を進めなければと思い声をかける。


「まあ、エルフのしきたりはその位にしておこう。 今日は、交流を深める事が重要なんだ。 2人があの子を落とせるかどうかは、当人次第という事で、早速、何か飲もう」


 2人のエルフの態度に、びっくりしていたジューネスティーン達に、そう話しかけるのだが、“食べよう”ではなく、“飲もう”と、言ったことに、ジューネスティーンは、少し引っかかるといった様子を見せた。


 ただ、ロビーで、エルフのしきたりを、ずーっと眺めている気にはなれないので、ジューネスティーンは、ユーリカリアに同意する。


「ええ、そうですね」


 全員で、食堂に向かおうとすると、カミュルイアンの両脇をウィルリーンとシェルリーンが、脇に腕を回して歩き出すと、カミュルイアンは、一瞬何事かと驚きながらも、まんざらでもない様子で歩み出した。


 しかし、わずかに両腕に胸の膨らみが、歩く度に、わずかに感じているのか、顔を赤くしている。


 肉食女子なら、ここでシッカリと、カミュルイアンの腕に、胸を押し付けるのだろうが、何気無く歩く度に、僅かに触れる胸の感触を与える事で、経験の少ない雄の気を引くようにし、相手の出方を伺っているようだ。


 男と女の駆け引きを、仕掛けられているのだが、当のカミュルイアンは、その事には気がついてないようだ。


 カミュルイアンは、その感触を気にしてか、チラチラと、左右の腕を首を動かさないように、両腕の辺りを見ている。


 それに気付いたウィルリーンが、ヤッパリと言ったように、カミュルイアンを見て笑顔を作る。


 内心で、女性経験の少ない男子の反応だと、ウィルリーンは確信したようだ。


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