ルイネレーヌ
階段を降りて、ロビーに着いてもユーリカリア達は、まだ、金糸雀亭に来てかった。
流石に上位パーティーのユーリカリア達を待たせるのは良くないと思っているので、待たせてないと分かると、少し安堵したようだ。
ユーリカリア達をロビーで待つ事にすると、ロビーに備え付けのソファーに腰を下ろした。
すると階段からルイネレーヌとそのメンバーが降りてきた。
東の魔物を倒した時のような、戦闘用の服ではなく、街中を歩くような出で立ちで降りてくる。
帝国風の衣装で、ルイネレーヌのスタイルを綺麗に見せるデザインのワンピースを着て、階段を降りてきた。
残りのルイネレーヌのメンバー達も、ルイネレーヌに合わせた服装になっている。
少し広めの階段なので、3人並んでも問題無い程度の広さが有るのだが、ルイネレーヌを先頭に2・2・2とフォーメーションでも組んでいるように悠然と降りてくる。
ジューネスティーンが、ルイネレーヌを確認すると、ルイネレーヌもジューネスティーン達を確認する。
ジューネスティーンは立ち上がって、ルイネレーヌを迎えるように、ソファーの外に出る。
すると、シュレイノリアも後に続き、ジューネスティーンの横に立つと、アンジュリーンも立ち上がって、2人の後ろに立つ。
シュレイノリアとアンジュリーンは、明らかにルイネレーヌを、警戒するように立ち上がった。
そんな、2人の女子の様子を見て、ルイネレーヌが、自分の連れを制してから、ジューネスティーンに向かって歩いてくる。
近づいてきたルイネレーヌに、ジューネスティーンから話しかけた。
「あなた方も、こちらに宿を取っていたのですね」
ルイネレーヌたちが泊まっているのは、ギルドマスターのユーリルイスから聞いているが、知らなかったように、そう言うと、ジューネスティーンは、自分の胸の内ポケットに手を入れる。
ジューネスティーンが、何をするのか理解できた、ルイネレーヌはニヤッとする。
「おや、やっぱり、お前はする事が早いね。 でも、用意が良すぎるのは、私達が同じ宿に泊まっていると知ってたってことじゃないのかな」
ルイネレーヌは、ジューネスティーンが、自分達が金糸雀亭を使っていると知らなければ、このタイミングで、情報料を渡すことはできないはずなのに、渡すように準備をしていた事を見逃さない。
このタイミングで、情報料を渡せるという事は、ルイネレーヌが金糸雀亭を使っている事を、ジューネスティーンが知っていた事になる。
そこまで見越していて、ルイネレーヌは、ジューネスティーンに、自分達が泊まっていることを聞くが、ジューネスティーンは、それには答えないで笑顔を返す。
「それでは、情報料をお渡しします」
そう言って、取り出した皮袋を渡す。
ルイネレーヌは、同じ宿に泊まっている事について、それ以上は追求せず、受け取った皮袋の革紐を緩めて中を確認する。
中には金貨が2枚入っている。
中身を確認したルイネレーヌが、ジューネスティーンに礼を言う。
「ありがとうよ。 確かに受け取った」
そう言ってから、ジューネスティーンやメンバーの顔を見て、からかってやろうかと、思ったようだが、場所を弁えているので、そんなことはしない。
『まぁ、金貨10枚なんて、気前の良い事だ』
本来なら、そう言って、シュレイノリアとアンジュリーンを、揶揄うつもりだったのだが、ここで、そんな話をして、言い合いになったら、金糸雀亭に迷惑がかかる。
そんな事を言えば、アンジュリーンやアリアリーシャが、喰い付いてくるだろうと思ったのだが、着ている服の様子から、誰かに会うのだろうと思ったのだ。
長引いたら、そのジューネスティーン達の、連れにも迷惑をかけることになる。
ジューネスティーン達が、誰と一緒に食事をするのか、分からない状況で、余計なことはしないのだ。
この場で、揶揄うと、デメリットの方が大きいと、ルイネレーヌは、判断したのだ。
しかし、ルイネレーヌは、ジューネスティーン達の行動は、確認しておく必要があるので、断られる事を承知で、夕食に誘う。
「どうだ、これから食事なのだが、一緒に食べないか?」
断る事を前提とした食事の誘いに、ジューネスティーンも、わかっていて、それなりに答える。
「いえ、今日は先約が有りますので、また次の機会に、ご一緒させて下さい」
ルイネレーヌは、思った通りの回答に満足する。
「ほー、帝国に来て、早速、誰かと会食とは、お前達も隅に置けないな。 ところで、誰と約束しているんだ?」
ルイネレーヌは、本命の質問をした。
ジューネスティーンは、一瞬躊躇うが、ルイネレーヌも、食事の為に降りてきた事を考えれば、食堂に入った時に、分かってしまうので、隠す必要も無い。
むしろ、隠して後から誰と会食していたか、分かった時の事を考えると、正直に話した方が、今後の為に、良い結果を生むと判断して、この後の予定を伝える。
「ユーリカリアさんのパーティーと会食です。 さっき、ギルドでお目に掛かった時に、誘われました」
ルイネレーヌは、ジューネスティーンの行動力に感心する。
(ほー、早速、帝国の上位ランカーとの会食か。 どうやって接触したのかは分からないが、ちゃんとしたパーティーと接触できたな。 私の知らない誰かの紹介か? ……。 いや、おそらくギルドの誰かの紹介だろう。 ギルドも、それなりに接触させるパーティーを考えているのかもしれないな)
ジューネスティーンの話を聞いて、ユーリカリアとの会食の機会を、早速作った経緯について、思いを巡らせる。




