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男達の身だしなみ


 カミュルイアンは体が弓反りになって後ろに下がりながら引き攣った顔で聞いている。


 アリアリーシャはやれやれと思いつつ、困ったものだと思っているが、シュレイノリアは我関せずと、ボーッとアンジュリーンの話を聞いていると、アンジュリーンが、突然シュレイノリアに向き直る。


 シュレイノリアは、何事かと、呑気にアンジュリーンの視線を受け止めている。


「何を、自分は関係無いような顔をしているのかな」


 そう言われても、自分に思い当たる事が無い。


(何で? えっ、私?)


 自分は、男達が、風呂に入っている間に着替えて、その時に、アンジュリーンに、着替えを手伝ってもらったりしており、自分の服装に、落ち度はないはずと思っていたのだが、突然、アンジュリーンに、突っ込まれてなんだろうと思っていると、右手の人差し指を自分に向ける。


「この馬鹿どもの頭を、あんたの魔法で何とかしなさい。今直ぐ乾かして」


 その言葉に男3人が青い顔をする。


 髪の毛を乾かすのにどの魔法を使うのか? 使ったとして、シュレイノリアの魔力で、行われたら黒焦げになるのではと、焦る3人に、ポンと手を叩いて納得する。


 シュレイノリアが、ソファーから立ち上がって、男3人の方に歩き出す。


 それを見た、男3人が、後ろに下がろうとしたのを見たアンジュリーンがそれを制す。


「男ども! 動くんじゃ無い。 シュレの手元が狂ったら命の保証は無い」


 その威圧にビビり固まってしまう。


 ヤバイと、思いつつも、アンジュリーンの言葉に、ビビった3人は、体の動きが止まると、3人の前まで来た、シュレイノリアが、満面の笑顔で、3人に話しかける。


「大丈夫、死なない程度に抑える」


 更に、ビビる男3人。


 サーッと、血の気が引いていくという感覚を、初めて体験したと、ジューネスディーンは思ったようだ。


 カミュルイアンとレィオーンパードは、膝がガクガクと震え出している。


「じゃあ、始める」


 そういうと、右手の、手のひらに向かって、息をフッと吹きかけると、掌を反射した息がカミュルイアンの耳にかかり、顔の周りを、暖かくて清々しい風がグルグルと周り出す。


 廻り出した風は、顔・右耳・後頭部・左耳を回って顔の方に戻っていく、その風にあおられて、髪の毛が靡いていると、風は徐々に側面を上に上がっていき、頭頂部まで行くと上に抜けるように四散していく。


 その風は、髪が乾き切ると風が消える。


 3人は、気分爽快といった感じで、ため息をつく。


 手元が狂ったら命の保証が無いというのは、言葉の綾だったのだろうが、爽快感からそんな事は、忘れてしまっているようだ。


 男3人が、そう考えていると、シュレイノリアは、自分の仕事が完了した。


「髪の毛は、完全に乾いた」


 魔法を見守っていたシュレイノリアが、アンジュリーンに報告する。


 アンジュリーンは、男達の前に、仁王立ちで胸を突き出すように立ちながら、右手を男3人に向けて、人差し指と親指を、ピンとのけぞるように伸ばし、残りの指はしっかりと握っている。


「服装を整える! ズボンはベルトを外してからシャツを入れる。 指摘された所は全て直す!」


 言われるがままに服装を整え始める。


 整え終わると、1人1人の服装チェックが始まる。


「ジュネス、OK!」


 そう言って、シュレイノリアの方へ行けと、顎をシュレイノリアの方に振る。


 ジューネスティーンは、ホッとしながら、その場所から移動するが、残り2人が、ベルトを緩めて、シャツを綺麗に、ズボンの中に押し込んで、ベルトを閉めようとするが、緊張のあまり、手が震えて上手くベルトを止められなかったり、余ったベルトの処理に戸惑ったりしている。


 上手くいかないと、更に焦ってしまい、何とかベルトを収めても、今度はボタンが締まらないでいるので、アンジュリーンが、ヤレヤレといった感じで、ソファーでその光景を見ていたアリアリーシャに助けを求める。


「ごめん。 この2人は、薬が聞き過ぎたみたいだから、ボタン付けるの手伝ってもらえる」


 そういうと、アンジュリーンは、カミュルイアンの着替えを手伝いに、アリアリーシャも仕方なさそうに、ソファーから立ち上がって、レィオーンパードを手伝いに行く。


 2人とも手伝ってもらって、着替えが終わると、その着替え終わった姿を見たアンジュリーンが、まあまあ、納得したようにいう。


「まあ、こんなもんでしょう」


 そう言ってから、ジューネスティーンに、次の行動に移るようにと話しかける。


「じゃあ、これで、ユーリカリアさん達を迎えましょう。 あちらは、格上のパーティーですから、待たせる訳にはいかないから、急ぎましょ」


 その言葉で、やっと、アンジュリーンから、解放されたと、ため息をつく、カミュルイアンとレィオーンパードだった。




 仕事というのは、不完全な仕事は誰も望まない。


 それが、スピードを重視されてもなのだ。


 急いで雑な仕事、間違った仕事をしても、誰も喜ぶものは居ない。


 むしろ、早く仕上げることを理由に、雑だったり間違ったとすれば、依頼した側はその後始末を行わなければならなくなる。


 依頼した側は、必要以上の労力を使って、尚且つ、短時間で後始末を、する事になるので、負担は大きい。


 それなら、少し遅れても完璧にしてから渡して、遅れた事を詫びるだけにする。


 遅れるだけを詫びると、ギリギリで、でっち上げた事で、ミスの有る仕事、でっち上げ仕事で尚且つ時間も遅れてしまったなら、結果は、依頼をした側からすれば、遅れても、きっちりと仕事をしてくれた方が、はるかに助かるのだ。


 時間に迫られているから、遅れているから、急いで仕事をするのは当たり前だが、その前提として、完璧にこなして、ミスが無い事、見た目が雑にならない事、それは絶対条件なのだ。




 アンジュリーンは、急いで雑な着替え方で、だらしなくなっていた男達が気に入らなかったのだ。


 特に、格上である、ユーリカリア達を迎えるにあたって、全員の身だしなみを整える必要があると考えて、きつい事を言ったのだ。


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