ギルドの思惑
ギルドが、大陸の東の調査に行き詰まっていた。
それは、大ツ・バール帝国にギルド支部が出来たとしても、東の森の魔物を倒せる冒険者が居なかった事で、苦慮していた。
それが、始まりの村より現れた、ジューネスティーンのパワードスーツが有効活用できるのではないかと判断されたのだ。
当初は、フルメタルアーマーの延長線上あるのだろうと、軽く考えていたのだが、実際にパワードスーツの調査を行って評価が一転した。
当初は、始まりの村のギルドマスターから報告を受けていた内容を元に、王都のギルドの高等学校への、入学と特待生としての依頼を、ギルド本部はあ、拒絶したのだが、エリスリーンの強い要望に負けた形で、特待生として許可している。
話は、始まりの村に転移してきた冒険者に、不思議なフルメタルアーマーを使うジューネスティーンと、一緒に居る強力な魔法職がいると報告を受ける。
始まりの村のギルドマスターであるエリスリーンから、通常のフルメタルアーマーの概念を覆して、魔法によって通常の能力の数倍の威力を出せる事と、今まで、魔法でどんなに筋力強化をしても体の骨格が持たないと言われていたので、フルメタルアーマーを使った防御特化の盾役と軽装の攻撃役に分かれて作業分担していたものを覆す発明だと報告があった。
フルメタルアーマーは、防御用のパーツを体に、一つ一つ取り付けていくことになるので、稼働部分については、防御パーツの隙間を開けて動きやすくしていただけだが、体の動きに連動する外装骨格をベースに人工筋肉を使って付与魔法以上の効果を出し、その上に装甲を纏う事で、フルメタルアーマーの弱点を克服している。
骨格を補強する為のアーマーを考えているが、通常のフルメタルアーマーを改造して作ったのでは、肩や股関節の動き、体全体に骨格を覆う事が出来ないが、新たに考えたパワードスーツなら、体全体の骨格までカバーできるものを設計したと報告を受ける。
ただ、その設計は、寮の黒板を使って描いた為、どんな物なのか、本部に送る事はできなかったのだが、エリスリーンの強い嘆願から、本部は人を派遣する。
しかし、ジューネスティーンの機械工学についての知識が、ギルド本部の職員には思いもよらない内容だった事で、その設計がどれだけの成果を生むかまで判断できなかった。
ただ、エリスリーンの強い嘆願に本部職員は、妥協案を出す。
2人をギルドの高等学校に特待生として入学させるが、卒業までに寮の黒板に描いたフルメタルアーマーを完成させ、研究成果として納品する事を条件とされた。
エリスリーンは、無謀な事のように思えたのだが、ジューネスティーンとシュレイノリアに話をすると、2人はすぐに快諾してくれた。
ジューネスティーン達にしてみれば、パワードスーツを作る事、王都にあるギルドの高等学校に入る事が、当面の目的だったのだが、資金的な問題から、両方を一緒に達成することは困難だったので、エリスリーンの申し入れは、ギルドの高等学校への入学という、目的の一つが達成されることとなる。
しかし、卒業までにパワードスーツを作るには、資金的な問題があったので、入学しても卒業までに完成させることが困難になると告げる。
それについても、エリスリーンが、卒業までに納品するフルメタルアーマーの費用の全てを、ギルド本部が持つことを了承させるが、ギルド本部ももう一つ、今使っているフルメタルアーマーも一緒に納品させる事を条件とした。
ただ、この時の設計では、パワードスーツのホバー機能やホバーボードのアイデアは無かったので、地面を走ったり歩いたりしなければ、移動は出来ないパワードスーツとなっていた。
そして、ジューネスティーンは、かなり早い段階でパワードスーツを完成させていたのだが、納品は卒業の直前に、学校で作ったパワードスーツを研究成果として、ギルド本部に納品した。
そのジューネスティーンの考えた、新たなフルメタルアーマー (パワードスーツ) の納品で、東の森の先の話は一転した。
ギルドとしても、そんな夢物語の装備が出来るのかと思っていたのだが、納品されたパワードスーツの調査が始まると評価は一転した。
納品されたパワードスーツをギルド本部の調査で、現在、ギルド本部が把握している魔物では、パワードスーツの防御を突破できないと判断された。
防御力に優れたパワードスーツならば、魔物の攻撃を防いで中の人間に致命傷を与えるには、東の森の魔物より強力な魔物でなければ不可能だろうと、ギルド本部の研究結果が出た。
それなら、東の森の魔物の攻撃を受けても、大きなダメージを負う事はないと判断されたため、東の森を突破して、その先の調査に向かう事が可能と判断された。
ギルド本部は、ジューネスティーンの囲い込みに入るのだが、卒業後、ギルドに依頼を受けに来る事が無かったジューネスティーンを探す手掛かりがなくなる。
ジューネスティーンは、在学中にジュエルイアンと接触しており、在学中から卒業後に使うための自分用のパワードスーツや、ホバーボードを校外で並行して作っていた。
校内で作っているパワードスーツは、特待生として費用免除と引き換えなので、卒業すれば、ギルド本部に渡ってしまう。
ジューネスティーンは、卒業後、資金を貯めながら、自分用のパワードスーツを作る事になるので、冒険者として本格的な活動を始めるのは、数年先になると思っていたのだが、ジュエルイアンから外装骨格と人工筋肉と引き換えに、パワードスーツ製造の資金援助の申し出があり、それをジューネスティーンが合意して、エルメアーナの工房で、新たなパワードスーツの製造を、校内のパワードスーツの製造と並行して作り始め、卒業後は、本格的なパワードスーツの製造に着手した。
そのため、ギルドの依頼を引き受けずにエルメアーナの工房と、ジュエルイアンが用意してくれた付近の宿とを往復する日々を送った。
ジューネスティーンの卒業後、ギルド本部は事の重要性に気がついて、ジューネスティーンをジェスティエンのように取り込もうとしたが、見つける事ができずにいた。
ギルドの高等学校を卒業した生徒は、平民なら、冒険者として活動するので、どこかのギルドで、依頼を受けたり、魔物のコアを売ったりする為、必ず、ギルドの情報網に引っ掛かる。
その捜査網に引っかからないため、ギルド側は焦っていた。
しかし、ひょんな事からジューネスティーンを見つける事ができた。
ただ、見つけた時には、ジュエルイアンが後ろ立てとなって、新たなパワードスーツとホバーボードを完成させて、更に5台のパワードスーツを作ろうとしている事をギルド本部は聞きつける。
ジューネスティーンの囲い込みにギルドは失敗するが、ギルドと交流が深いジュエルイアンが、交流している事で、ギルド本部は、ジュエルイアンに協力することにする。
そして、ギルドに納品されたパワードスーツには、ホバー機能が無い事に気がつくが、入学前の設計には、そのような設計が盛り込まれて無かった事に気がつく。
入学前の条件の中には、ホバー機能は無かったため、ホバー機能の技術をジューネスティーンから聞き出す方法をギルド本部は思案する事になる。




