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ウィルリーンとシェルリーン 2


 そんなアンジュリーンの考えとは、別の事を考える者が1人いた。


 カミュルイアンを、面白そうに見ていたレィオーンパードが、ニヤつきだすと、いたずら心を出した様子で、カミュルイアンに話しかけた。


「お前は、なんだか希少動物みたいだな。 珍獣としてオリに入れて、見世物にした方が、儲かるかもしれないぞ」


 そんな事を、レィオーンパードに言われて、カミュルイアンは顔をこわばらせた。


 その様子を見て、レィオーンパードは、さらに面白がった。


 しかし、レィオーンパードの話を聞いて、冗談でも言っていい事と悪い事があると、シェルリーンは思ったようだ。


 大変、失礼なことだと思ったのか、シェルリーンが、思わずウィルリーンの背中から顔を出すと反論をするのだった。


「そんなこと、ダメです。 エルフにとって男性は貴重なんです」


 ウィルリーンの横から顔を出したシェルリーンが言うと、すぐに顔を赤くして、また、ウィルリーンの後ろに隠れてしまった。


 すると、緊張しきったウィルリーンが口を開くのだが、話の流れとは全く違う事を口に出した。


「ま、まこ、誠に、い、言いにくいの、ですが、わ、我々、エルフ属は男性が、非常に少ないので、ぜ、是非、交流を深めたい、 のでぇ、そ、そのー、是非、御一緒に、お食事でも、したいのですが……」


 何とか交流を持たなければならないと、その事だけを考えていたので、今のレィオーンパードとシェルリーンの話が全く耳に入らなかったのだ。


 そしてウィルリーンは、最後の方は、声がひっくり返ってしまい、恥ずかしさから下を向いて、手持ち無沙汰で指を絡めて、それを言うために考えていただけなので、レィオーンパードの言葉は耳に入らなかったようだ。


 また、それを聞いていたアンジュリーンが、ユーリカリアに食事の話をしていた事を思い出し、どうなのだろうかという表情でジューネスティーンを見た。




 ただ、カミュルイアンのように、エルフの男性を今までに、見た覚えがないことを思い出すと、思わず自分の思っていた事を口に出してしまったのだ。


「私達は、この世界に来た時から一緒だったから、分からなかったけど、そういえば、私も男性のエルフに出会った事は無いわね。 いつも一緒だと、コイツの希少価値なんて、気がつかなかったわ」


「やっぱり、珍獣だ。 動物園に連れて行った方が良さそうだ」


 アンジュリーンのぼやきに、レィオーンパードが反応すると、それを聞いてカミュルイアンが、少し凹んだ様子になった。


「オイラって、珍獣だったのか」


 カミュルイアンが、希少価値とか珍獣とか言われてぼやくと、ウィルリーンが、レィオーンパードの冗談でも、そんな事は無い、言葉通りに受け取ってもらっては困ると思い、頑張って口を開く。


「そ、そんな、事は、無い。 わ、私の生まれた村では、産まれた、男の子は、村を上げて、大事に、育てていました」


 そう言うと、ユーリカリアが、しどろもどろのウィルリーンのフォローをする。


「私は、ドワーフの女なのでな、エルフとは違って、こっちは男が多い種族だから、私が居た村では、目茶苦茶モテたぞ。 ただ、私の場合は村一番の美男子じゃ無くて、村長の息子の嫁にさせられそうになってな、それがあまりに不細工で、食べる事しか興味が無いみたいなやつだっただけでなく、村長の息子だってことを、鼻にかけて強行策に出てきたんで、逃げ出したんだけどな。 私はドワーフの村なら逆ハーレムだが、あんたならエルフの里に行ったらハーレム状態だろうな。 村中の娘達がお前に種をねだりに、毎晩訪れるだろうな」


 少しにやけ気味にユーリカリアが言うと、話を聞いていたカミュルイアンが、顔を赤くして困ったような顔をしている。


 その表情を、ジューネスティーンが見て、カミュルイアンを助けるように言う。


「まあ、そう言った事は、当人次第なので、機会は持つようにしますから、その後は、彼女達の努力次第という事でよろしいですか? それに、うちのエルフは、どうも兄妹っぽいので夫婦とかではありませんから」


 ここで、断られたらどうしようかと思っていたウィルリーンとシェルリーンだったが、アンジュリーンとカミュルイアンが兄妹らしいと聞いて、ハードルが下がったことで希望を持っていた。


 夫婦のエルフだったら、夫人としてのアンジュリーンへの配慮が、色々と面倒であるのだが、その心配をする必要が無くなったのである。


 心配された、一番高いハードルが無くなった事になったので、2人のエルフは、少し安堵する。


 兄妹なら、アンジュリーンが姉か妹かという事であれば、それなりに友好を深めるだけで済むので、夫との交際を妻に頼むよりハードルは低くなる。


 今までに見た男性のエルフは、その村での女性エルフ達のガードが硬く、見つけたからといって、直ぐにこんなに近寄れることは無かった。


 むしろ、同じ村の女性エルフ達にガードされてしまい、声もかけられずに終わるか、そのガードをしている女性エルフを通じて接触を試みようにも、なかなか許可が降りない状況なので、今のような状況は極めて稀な状況と言って良い。


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