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受付嬢 ルイゼリーン


 先程と同じようにトレーを持って入ってくると、テーブルにトレーを置く。


 トレーの上には革袋が有り、革紐で綴じられている。


 ルイゼリーンが紐をといて中から金貨を取り出すと、3枚ずつトレーの上に重ねていくと、重ねられた金貨が3個になる。


「先程の金塊ですが、買取金額は金貨4枚となりました。 それに上乗せ金額の5枚を合わせて金貨9枚となります」


 今度は、メンバー達が息を呑む。


 先程、上乗せ価格が金貨5枚と聞いていたので、金塊の通常の買い取り価格より、上乗せ金額の方が高いとわかる。


 また、その金貨を見て金額の多さに実感が湧いてきたのだ。


 そんなジューネスティーン達を見つつルイゼリーンは言葉を続ける。


「純度もかなり高く重量も有りました。 妥当な金額と考えております」


 ルイゼリーンにそう言われてもメンバー達はコメントし難い状況にある。


 金貨9枚を前にして、その金額に言葉を失っている。


 ジューネスティーンは、他のメンバー達の顔を眺めつつ、どう対応したら良いのかと思うが、何も言わずに受け取るわけにもいかないので本音を話すのだった。


「すみません。 あまり、このような大金を見た事が無いので、なんともコメントしづらいというかぁ。そのー」


 それを聞いたユーリルイスが、笑い出す。


 笑うユーリルイスを、ジューネスティーンもメンバー達も何事なのかとユーリルイスを見る。


「いや、すまなかった。 あれだけの大物の魔物を倒して平然としていた君達が、金貨9枚を見たら年相応の反応を示したので、ついな。いや、本当にすまなかった」


 それを聞いて、アンジュリーンが口を開く。


「そりゃそうですよ。 これだけの金額が有れば、豪邸の一つ買ってもお釣りが来ます。 私達は、高等学校を卒業したばかりの駆け出しなのですから、初めて見る大金にビックリするのは当たり前です」


「いやいや、駆け出しどころか、Aランク以上の実力なのだから、この位の金額なら、とっくに稼いでしまったのかと思ったんだ」


「トータルしても、その金額になるとは思いませんが、設備投資に金額が掛かっているので、纏まった金額を見るのはこれが初めてですぅ」


 アリアリーシャが口を挟んだ。


 1人で10年以上かけて学費と生活費を稼いだのだ、金銭面についてジューネスティーンもシュレイノリアも甘さがあるが、早くから金銭感覚に優れていたので、ジューネスティーンがパワードスーツの開発に掛かった費用面については、ジューネスティーン以上に詳しい部分がある。


「そうだったな。 だが、その設備投資のお陰で纏まった金額を目にする事が出来たのではないかな。 これから同じようにドロップアイテムが出れば、毎回纏まった金額を手にする事になるのではないかな」


 ただ、今回のように上乗せの報酬が出るわけでは無いが、その辺りは伝えない。


「そういう事になりますね。 でも、そんなに東の森の魔物が頻繁に現れるなんて事になったら、帝国の治安が問題になってしまうのではありませんか?」


 東の森の魔物は、帝国軍も持て余し、ギルドのAランクパーティーでも持て余す。


 そんな魔物が帝国領内にゴロゴロと現れたら、帝国の存続に関わる事になる。


 今までは東の森の防衛ラインで撃退と言うより、森に追い返すことでなんとか維持していたのだが、最近は森を抜け出す魔物が出てきている。


 帝国軍も警備体制の見直しはするだろうが、それでも間に合ってなかったので、帝国付近の街道でジューネスティーン達が東の森を抜けた魔物を倒したのだ。


 もし、何体の魔物が抜け出してしまったら、対処するにしても大変な被害の出る可能性が高い。


「帝国軍も手に余しているし、Aランクパーティーも手に余る魔物だからな。 東の森の警備軍の情報だと森から出てくる魔物が最近は増えているとの事だ。 警備軍と言っても森を全周に渡って警備をしている訳ではないからな。 駐屯陣地が何箇所に在ってその間を警ら隊が警戒している。 魔物を見つけたら、信号で知らせて駐屯隊が駆けつけて討伐するか、森に追い返す事になるが、どちらかというと後者の場合が殆んどだ。 だから駐屯軍が出た後は陣地の付近が手薄になる。 その時に森を抜けられたら終わりだろうな」


 少し深刻な話になる。




 先ほどの戦闘の話を聞くと知能が高い魔物だと分かる。


 もし、魔物の目的が帝国領に入る事に徹したなら、揺動で駐屯軍を誘き寄せてその隙に別働隊が帝国領に入る。


 そのような連携をされたら帝国はひとたまりも無い。


 また、今までは魔物が単騎で出て来ているので、その魔物に対応するだけだったが、複数の魔物が連携して襲って来た場合はどうなるのかと考えたら、恐らく今の帝国軍に勝目は殆んど無い。


 勝てたとしても甚大な被害を出して、次の襲撃に対応出来るか問題が生じる。


 現時点では、単騎で現れる魔物に対応した防衛行動と言って良い。


 複数の魔物にどれだけ対応出来るのか? と、言うより対応出来ない可能性の方が高い。


 これから先は、東の魔物に対抗できる冒険者パーティーの育成が大ツ・バール帝国のギルド支部の急務となる。


 現時点で東の魔物に対応できるパーティーは、ジューネスティーン達のパーティーだけとなるので、今は頼る他ないが、その後の事を考えると絶望に近い。


(ジューネスティーン達が居なくなった時にどうするかが課題か)


 そう考えるユーリルイスだったが、立ったままどうしようかと悩んでいるルイゼリーンに目があった。


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