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東街道に出た東の森の魔物 〜ルイネレーヌの調査〜

 

 メンバーがカミュルイアンをみている表情を見ると、さっきの話の暗い雰囲気も無くなったので、ルイネレーヌは自分の仕事に戻る事にする。


「じゃあ、お仕事に戻るわね」


 そう言って魔物を倒した場所に移動する。




 ルイネレーヌがなんで興味を持ったのか気になり、ジューネスティーンもそれについて行く、ギルドがルイネレーヌに何を依頼しているのか見ておく必要があると考えたのだ。




 魔物が消えた場所は、何となく地面の色が変わっているのが伺える。


 その部分を入念に観察して、その先を眺める。


 そして地面から色の変わった草や土を採って袋に詰めると、今度は、ジューネスティーンが魔物に向けて放ったニードルガンの着弾点の方に向く。


 たどっていくと、その先には、何本か金属の針が地面に落ちたり刺さったりしている。


「あそこに落ちている針は貰っても良いか」


 何も言わずに拾ってもよかったのだが、近くに来ているので一応マナーとして声をかけてきたのだ。




 さすがにニードルガンの分散して散ってしまった針を全部回収するのは不可能な話だ。


 仮に見つけられた針を全て拾って回収しても半分も集まる事がないので回収は諦めていた。


「ええ、素材はどこにでも有る金属だから問題無いです」


 ルイネレーヌは、地面に落ちている針を見つけると何本か拾って、別の袋に詰める。


「でも、その針はただ針にしただけだから、針自身は調べても何も出てこないと思います」


「ギルドからの依頼だ。新しい魔物についての情報が知りたいようだ。何をどう調べるかは分からなかったが、依頼は依頼なんで、回収させて貰う。あいつらの事だ、表面に付着している成分とか調べるんじゃないか? 魔物については、未知の部分が多い。死んだ後に解剖もできないんだからな。それに、ギルド本部お抱えの研究員なんて、お前達と一緒で転移者が多い。私の理解できない学問とかを研究しているみたいだから、何か見つけられると考えているのかも知れない」


 確かに、転移者の中には、ジューネスティーン達のように冒険者にはならずに、研究者になる人も居る。

 そういった人達は、各国の大学等で研究をするより、ギルド本部お抱えの研究員になる方が多い。


 新たな技術開発によってそれをギルドが販売したり、各国に技術供与という形で流している。


 徐々にではあるが、大陸に住む住人の生活改善に繋がる技術もギルドから流れることが多いので、表に出てこない技術もギルド本部には有ると考えて良い。


 倒れた魔物周辺のサンプルを入手するとルイネレーヌは、話しかけてきた。


「そうだ使っていた剣も見せて貰えないか。剣については、気になるところがあれば報告して欲しい程度だからみるだけでかまわない」


 そう言われると、ジューネスティーンの装備は、収納魔法の中なので、レィオーンパードに剣を見せてやるように指示をする。


 アリアリーシャに頼むとまたどうなる事か分からないのでレィオーンパードにお願いする。




 レィオーンパードは左手で剣を抜いて、剣の背を右手で掴んでルイネレーヌに渡す。


 利腕である右手で剣を抜いたのを見られて敵対行為と捉えられる事のないようにした。


 その一連の行動を、誘惑するような顔つきで見ていたルイネレーヌがレィオーンパードに声をかける。


「さすがは、ジュネスのメンバーね。礼儀も弁えている。今度、お姉さんと良いこと教えて、あ、げ、る」


 赤くなるその姿を可愛いと思いながら、流し目で口を軽く開いて見ていると、さすがにジューネスティーンが口を挟む。


「あまり、免疫の無いのをからかわないでおいて下さい」


 含み笑いをするルイネレーヌは今度は誘惑するようにジューネスティーンをみる。


 ルイネレーヌの仕草を見てレィオーンパードは、恥ずかしさから顔を背ける。




 しかし、受け取った剣を見ると真剣な表情になるので、いつもの冷やかしだと直ぐにわかる。


 ルイネレーヌは、何か変わった事はないか真剣に見る。


 剣の裏表、光の反射具合を使って何か変わったところは無いか。


 刃の痛み具合がどうなのかを確認している。


 何か物思いにふけったかと思ったら、笑顔で剣の背を持って柄をの方をレィオーンパードに差出す。


「協力してくれて、あ、り、が、と、う」


 レィオーンパードは頬を赤くして剣を受け取ると鞘に納めて、いまだに鳥と戯れているカミュルイアンの方に行く。


「何か分かりましたか」


 ジューネスティーンがルイネレーヌに聞く。


「さぁ、私はギルドへの報告の為に見せて貰っただけだから、剣の状況だけを見ただけ。剣に何か痕跡のような物が有るか見ておいて欲しいと言われたけど、いつもの魔物を倒した時と一緒に見えたわ。私はそう報告するだけだから、そこから結論を出すのはギルドの仕事」


 その感じからすると、剣には何か変わった所は無かったのだろうと思う事にする。


 何か有ったとしても教えてもらえるとも思わなかった。


「そうですか」


「ただ、ギルドもこの魔物は警戒しているみたいだ。ギルドからの情報はお前さんにも話す事にするが、時間は掛かる。それは了解しておいてくれ」


 東の森の魔物は、ギルドも調査は進んで無いのだろう。


 大ツ・バール帝国にギルド支部ができたのは最近の事で、やっと、東の森の魔物についても調査が始まった段階なのだろう。


 戦ってみて人のような動きをする魔物なんてものは、今までに遭遇した事が無かった事も考えると、本当に魔物の調査はこれからなのだろうが、ルイネレーヌの話の感じからギルドでは、何か気になる点が有るように思えた。


 その情報を得るにもルイネレーヌは必要だと感じる。


「分かりました。よろしく頼みます」


 新たな情報を得るためには今後も友好に付き合う必要があると思う。


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