東街道に出た東の森の魔物 〜鳥〜
メンバー達には単独行動禁止と言ったが、帝国内でもルイネレーヌの監視兼護衛が着くと分かると、余程の事がない限り、自分達のメンバーを狙う組織は少なくなるのだろうとジューネスティーンは考えている。
そうなると、ルイネレーヌと帝国に居る間は顔を合わせる機会も多くなると考えると今のうちにお願いしておいた方が良いと判断する。
「それとルイネレーヌさん、帝国内でも、また、お世話になります」
それを聞いたルイネレーヌが違った方向に反応する。
「なに、そう言う事なら何時でもお相手するよ。 うちのメンバーだけと過ごすだけじゃつまらないからな。 何時でも言ってくれれば気の済むまでお相手いたしますわ❤️」
ジューネスティーンのお世話は、別の意味なのだが、ルイネレーヌは、わざと下ネタの方に解釈して、3人の女子を挑発すると、また、ムッとする女性陣に、また始まったと苦虫を噛んだような顔をする。
「すまないが、そう言う話は無しで」
「ハイハイ」
ルイネレーヌとすれば、重くなった空気を和らげようとしたのだが、もう少し別の方法で行なって欲しいとジューネスティーンは考える。
そんな話をしていると直ぐ後ろに羽ばたく音が聞こえる。
慌てて音の方にメンバーが顔を向けると、先ほど治療した鳥が、カミュルイアンの兜の上に止まった。
兜の上に何かが止まったのだが、自分では怖くてそれを確認できずに、カミュルイアンは青くなって固まった。
突然の事で全員の動きが一瞬止まる。
そんなメンバー達の態度を気にすることなく、鳥は頭からチョンと左肩のパットの上に移動して、羽をクチバシで繕い始める。
その鳥の行動を見て剣を抜こうとしていたメンバー達は、その動作をやめてため息をつく。
だが、1人だけ状況が分からないで、蒼ざめていたカミュルイアンは、顔の横にいるのが鳥のようだとわかるのだが、目だけを横に向けても視界の隅で捉えるだけなので、確信が持てない。
恐る恐る、誰に向かってでもなく尋ねる。
「ねえ、何があったの、これって、さっきの鳥?」
「あぁ、さっきの鳥だ。お前の事が気に入ったみたいだぞ」
「えっ!」
そう言って左肩に少し顔を向けて覗き込むと、鳥がカミュルイアンに顔を擦り付けてくる。
「何だか、和むわぁ」
その鳥がカミュルイアンに顔を擦り付けてきたのをみて、ルイネレーヌが思わず漏らす。
さっきまで蒼ざめていたカミュルイアンが肩に乗った鳥を右手で首の辺りを撫でてやる。
「コイツ、俺の事気に入ってくれたんか」
はしゃぐカミュルイアン。
「にいちゃん、コイツ連れてって良いか?」
「ほぉー、エルフ属は弓を使うけど、そう言った猛禽類と一緒に狩りをするって聞いた事が有るが、初めて見るなぁ。 鳥とエルフって相性が良いのかもなぁ。 それにその鳥は、頭も良いようだ。直接肩に止まるのではなく、一旦兜の上に止まってから肩に移った。 飛び降りたらその勢いで自分の爪が肩に食い込まないように金属の兜の上に止まってから肩に降りたからな」
カミュルイアンを見て、記憶を辿るルイネレーヌに、なんだか取り残されたような感じを抱くアンジュリーンがボソリとつぶやく。
「私もエルフだけど、そんな事知りません」
そんなアンジュリーンをジューネスティーンがフォローする。
「お前も、俺たちと同じで、ここにくる以前の記憶なんて無かっただろ。 知らなくて当然だ」
「まぁ、そうですけど、私もエルフですけど、なんでカミュルイアンに懐くのよ」
アンジュリーンは、自分もエルフなのになんで、カミュルイアンの方に行ってしまったのか納得できないでいる。
「そりゃぁ、さっき肉をくれたのがカミューだったからじゃないの。 お前が肉をくれてたらアンジュの方に止まったんじゃないの。 ここまで抱いてきたのもカミューだったし」
「うーん。 納得できない」
鳥とカミュルイアンをみてレィオーンパードが言うが、アンジュリーンはカミュルイアンに負けたような気になってしまったので、納得できないでいる。
こうも簡単に懐くのは、あり得ないのではないかと考えるジューネスティーンだが、どうしたものかと思うが、ここでおいておいても、相手は空を飛ぶので、後を追いかけられたら同じ事かと思う。
「まぁ、それだけ懐いているなら、何かの役に立つかもしれないし、まぁ、いいんじゃないか」
それを聞いて、レィオーンパードはニヤリとしているので、何かいたずら心を出したように思うと、やはり、変な事を言い出した。
「緊急時の食料に良いんじゃないの」
先程食べようと思っていたので、その延長としての発言のように見えるが、見たところ本心ではなさそうに見える。
2人は、ヒョウの亜人とエルフだが、同性で見た目は同い年程度に見えるので、よく連んでいる。
そのせいか、きつい冗談のつもりで言ったのだろうと思うが、カミュルイアンは、本気で答える。
「コイツは食料じゃ無い」
「チェッ!」
舌打ちするレィオーンパードを見ると、冗談でもなさそうに思えた。
友達が別の友達に興味を示して、自分との時間が減ってしまったのが、悔しいような感じなのかもしれないとジューネスティーンは思う。
そんなレィオーンパードを他所に鳥と戯れるカミュルイアン。
余程嬉しかったのだろう。




