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メイリルダの母親


 メイリルダの母親は、興味深くメイリルダの連れてきた少年を見ていた。


 そして、その少年は言葉が理解できてないと見破っており、それがなんでなのか気になっているように見ていた。


 メイリルダは、母親のそんな姿を見て残念そうな表情をした。


(ああ、お母さんの表情は納得する答えが出るまで質問し続けるパターンね。気になって仕方がない時の、お母さんだわ)


 メイリルダは、ため息を吐いた。


「お母さん。その子は、今日、保護された転移者なのよ。それで、私が、この子の担当になったの。これから、言葉を教えたり生きていくための事を教えてあげる事になったから、今日から泊まり込みで、この子に教えていく事になるのよ」


 メイリルダの母親は、メイリルダの説明を聞きいている時も少年を見て様子を伺っていた。


 少年は、その母親の視線を返すだけで、メイリルダと母親の話を聞いても意味が分からないので、何を喋っていても右から左に聞き流していた。


 しかし、少年の視線はジーッと見てきたメイリルダの母親を凝視していた。


「ふーん、初めて見たよ。これが、転移者かい。……。普通の子供と変わらないね」


 メイリルダの説明を聞いている間も、メイリルダの母親は少年を見続けていた。


「転移者ねぇ」


 少年を見つつ、メイリルダの母親はゆっくりと呟いた。


「て、ん、い、しゃ?」


 母親の顔を見つつ少年も呟いた。


「へー、本当に、喋れそうな話し方じゃないね」


 今度は、文字数が多かったのか喋りが早かったのか、口に出す事はなくジーッとメイリルダの母親を少年は見ていた。


「ああ、まだ、発音も、ままならないのよ。短い単語だけだったり何度も同じ単語を言って言い換えさせたりよ」


「ふーん」


 メイリルダの話の最中も、メイリルダの母親は少年から目を離さずにいた。


 そして、何か閃いたようにニコリとすると、メイリルダの母親は自分を指差した。


「お姉さん」


 少年に言うと、その様子をメイリルダは驚いたように見た。


(うっわーっ! いい歳こいて、自分の事、おばさんじゃなくて、お姉さんって呼ばせようとしている!)


 メイリルダは、自分の母親を見て少し引き気味になった。


 ただ、母親の喋り方が早かったのか、少し考えるような表情をしていた。


「おねえさん」


 メイリルダの事は気にする事なく、少年の様子を見ていた母親は、今度は、さっきよりゆっくりと話しかけると、少年は分かったというように表情が緩んだ。


「お、ね、え、さ、ん」


 少年が答えると、メイリルダの母親は、満面の笑みを浮かべると、うんうんと頷いていた。


「お、ね、え、さ、ん」


 少年は、また、同じ言葉を喋るとメイリルダの母親は少年の腰を抱き締めるようにし持ち上げていた。


「ううーん、なんて、いい子なんだい、この子は、……。ああ、久しく聞いてなかった言葉だわ」


 そして、片手は少年の腰に回したまま、もう片方の手は、背中に回すと、少年の頬を自分の頬に擦り付けていた。


 そして、少年の体を密着させて、その小さなすべすべの頬の感覚を味わっているようだった。


 母親は、頬を擦り付けるので少年はくすぐったそうにして、離れようと手で押そうと何気に密着していたメイリルダの母親の体を押した。


「おや、この子ったら案外積極的なのね」


 メイリルダの母親は、視線を下の方に向けた。


 少年は離れようと体の間に手を入れていた、その片手がメイリルダの母親の胸を鷲掴みにしていた。


 流石に、その様子を見たメイリルダが、びっくりした様子で母親から少年を取り上げた。


「ちょっと、お母さん。それは、流石にやり過ぎでしょ」


 そう言いながら、取り上げた少年を床に下ろした。


「もう!」


 メイリルダは、母親に向いた。


「この子の面倒を見るから、今日からギルドの寮に泊まるわ。だから、着替えとか取りにきたのよ。用意するまで、この子を見ておいてほしかったけど、……。やめとく! 私の部屋に連れていくわ」


 メイリルダは、準備の間少年の面倒を見てもらおうかと思ったのだが、母親の最初の言動と、先ほどの自分を少年に「お姉さん」と呼ばせた事もあり、少年の世話を任せて変な言葉を覚えさせられるのではないかと思い、とんでもない言葉を教えられてしまう事を恐れた。


「あら、メイリルダったら、やきもちなのかい。もう、嫁になったつもりだったんだね」


 その母親の言葉に、メイリルダはイラッとした表情になった。


「母さんの、そんな態度が心配なのよ。私が居ないところで何を教えるのか心配なのよ!」


 そんなメイリルダの言葉をキョトンとした様子で、メイリルダの母親は聞いていた。


「あら、残念。メイリルダに夜這いの掛け方を教えてあげようと思ってたのに」


 その言葉に、メイリルダは青い顔をするとジロリと母親を睨みつけ、少年の手を引いて自分の部屋に行ってしまった。


「まったくもう、言葉の通じない少年に夜這いの掛け方なんて教えられないだろう。本当に冗談が通じないんだから」


 メイリルダの母親は、ボソリとメイリルダが立ち去った方を見て言った。


 そして、ヤレヤレといった表情をすると、メイリルダの母親は台所に入っていった。


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