東街道に出た東の森の魔物 〜戦闘後の処理と反省〜
森へ行っていた3人が戻ってくる。
「無事に消火できましたぁ」
アリアリーシャが話しかけながら、歩いてくる。
「水魔法は、皆んな得意じゃないから、少しでまどったけど、ちゃんと鎮火させておいたわ。 それと、ついでに矢も見つけたから回収してきた。 おまけ付きてね」
カミュルイアンが抱きかかえていた鳥を、皆んなに見せる。
羽根を広げたら、1メートル以上有りそうな中型の猛禽類の鳥だが、羽根と背中に傷がある。
羽ばたいた瞬間に矢が、左羽根から背中、そして右羽根を貫いたみたいだ。
かなり弱っているのが分かる。
「2射目がたまたま当たったみたいで、ちょっとかわいそうかと思って、シュレに診て貰おうと思って連れてきた」
鷹ともトンビとも言えるその鳥は、ぐったりとしてレィオーンパードの腕に抱かれている。
「動物同士の戦いで怪我したのなら放置だったんだけど、自分達の矢で怪我してたから。 そのまま放置だとちょっと寝覚が悪そうなので、診てもらえないかなぁ」
ジューネスティーンも、自分達のとばっちりで怪我をしたのならと思い、カミュルイアンの希望通り手当をさせる事にする。
「あぁ、確かに俺達の都合で怪我したんだからな。シュレ、診てくれないか」
そうジューネスティーンが、シュレイノリアに言うと、そばに居たレィオーンパードがさっきから鳥から目を離していなかったので、どうしたのかと思っていると、腕で口元を擦るような態度を示したので、レィオーンパードは、食料になると見ているように思えた。
「お前は、食べ物じゃ無いんだから、そう言う顔をするな」
レィオーンパードは豹の亜人のためなのか、猛禽類でも鳥は好物らしく、食べたそうに見ていたのだ。
「今度、鳥料理を食べられるようにしてあげるから、今回は治療ね。 それに、肉は肉食系より草食系の方がうまいぞ」
「チェッ!」
残念そうにするレィオーンパードが舌打ちした。
ジューネスティーンはシュレイノリアに治療を促す。
「さあ、出番です。あなたの治癒魔法でこの鳥の怪我を治してあげてください。 それと、その鳥苦しそうだから、麻痺の魔法で痛みを和らげてから治療してあげてね。 強すぎる麻痺の魔法だと鳥は死んでしまうでしょうから、お前の魔法制御の練習にも丁度良いでしょう」
「わかった」
シュレイノリアはうなづいて、カミュルイアンに近づき、アンジュリーンが広げてくれた布の上にカミュルイアンが抱いていた鳥をその布の上に優しく寝かせる。
「じゃあ、始める」
シュレイノリアが、怪我をした鳥にそう話かけ、麻痺の魔法を掛ける。
魔法は、成功した様子である。
体は動かないが、意識は有る。
鳥の羽根を広げて患部を確認して、治癒魔法を掛けると、傷が徐々に癒されていく。
「これで大丈夫、後は、麻痺の魔法が解ければ、普通に動けるようになる」
「良かったな、じゃあ魔法が解けたらこいつを食べるんだよ」
そう言って、薫製肉を鳥のそばにカミュルイアンが置いた。
それを見たジューネスティーンが、カミュルイアンに注意する。
「餌付けは、ちょっと、まずいんじゃ無いか」
「でも、流した血の分は何か食べさせないと、可哀想だよ」
ちょっと悩むジューネスティーンだが、その程度ならと思う。
「まぁ、その位なら、仕方が無いな。 じゃあ、皆んな少し離れよう。 鳥が警戒するといけないから」
「そうだね」
そう言って、5メートル程離れ、ジューネスティーンがパワードスーツを脱ぐ。
パワードスーツの各部から空気の抜ける音がすると、両腕の盾がスライドして腕の先に移動してくるぶし辺りまで伸びると、スーツは、腰と背骨を繋いでるジョイントが外れて、腰が開き、上半身は前方に重心をずらし、体を手前に盾を立てるように盾を付くと、兜の後頭部が開き背中が開く。
背中のジョイントが外れ背骨を中心に観音開きになると、ジューネスティーンは腕を抜きながら上体を立てる。
腕を開いた背中に手を掛けて跳び上がるように足を抜く、パワードスーツの上にくの字というより前屈のような形になり足をパワードスーツから完全に抜いてしまい、今度は、爪先を後ろに上げ身体を横に振って、パワードスーツの横に飛び降りる。
パワードスーツの背中に手をかざすと、背中が閉まって上体が戻って、腰と背中のジョイントが固定される音がする。
パワードスーツの前に回って状況を確認しながら呟く。
「整備は今回の魔物の確認の後かな」
すると、シュレイノリアの方を向く。
「シュレ、パワードスーツを収納魔法にしまってくれないか」
そう言って、パワードスーツから離れると、シュレイノリアはジューネスティーンが十分に離れた事を確認すると、収納魔法を使ってパワードスーツを仕舞い込む。
パワードスーツが収納されると、先ほど倒した魔物についてジューネスティーンが話し出す。
「所で、今回の魔物なのだが、知能が高かった気がするんだが、皆んなはどう思う」
アンジュリーンが、直ぐに答えた。
「私の1射目だけど、今までなら確実に当たると思っていたけど、最小限の動きで躱されたわ。 まるでベテラン冒険者との対人戦を戦っている時のようだった。 カミューの放った矢に反応する為、次の矢に備えた感じで私の矢を交わしたような気がする」
「そう言われると、オイラの矢もギリギリで躱されても、付与した雷魔法の影響は出るんだけど、影響が出ないところまで、よけられていた」
「フン。 ヤッパリあんたの感性はそんなもんなのね。 お姉さんな私だから感性も違うのよ」
ムッとするカミュルイアンが、言い返そうとした時、ジューネスティーンが慌てて止める。
「今は、お前達の年齢の違いを聞く時では無い。 目的の内容だけにしてくれ」
そう言われて2人は黙ってしまうと、今度は、アリアリーシャが口を開く。
「私は、レオンの後からの攻撃だから、離れてから直ぐにあの魔物を見てたけど、ジュネスにぶつかるところが魔物の当たり方じゃ無かったと思いますぅ。 格闘技でも見ているような感じでしたぁ」
「あの魔物、にいちゃんと組み合っていた時、肘を使おうとしてたよね。 通常の魔物なら、爪を使うんじゃ無いかな。 でも、あの状態だったら、爪を使うより、肘の方が打撃を与えられるよね。 なんだか、魔物と言うより格闘家の動きに近かったように思える」
どの意見も魔物と戦っている時とは違う感じを受けている。




