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起動


 開いた背骨に両手をかけて、スーッと腰までパワードスーツの中に入り、手前に倒れ込んでいる胸の両脇に開いている穴に両腕を入れるようにして前屈みになる。 


 両腕を通してから胸をパワードスーツの内側に当てるようにすると、魔力を流して前屈みになっていたパワードスーツの背中が閉まり、前に倒れていた兜も戻って後頭部が閉まる。


 前屈みだった、パワードスーツの体が直立に戻る。


 形が戻ると、腰の辺りから鍵がかかるような金属音がすると、空気が穴から勢いよく流れる音がする。


 空気の流れる音は直ぐに消えると、腕から足元までを隠すように付いていた盾が本来あるべき場所、盾の中央が腕の中央の位置になるようにスライドしてくる。 


 両腕に取り付けられた盾は、パワードスーツに乗り込む際に、前に倒れないように支える為に下にあったのだが、人が入って起動すると、本来の位置に戻った。


 ルイネレーヌは、盾の内側にレールが付いていた事が理解できようだ。


「おやおや、装着前は変な位置に盾があると思ったら、ちゃんと使えるような場所に動くんか。 これで目があって、その目が光れば最高なんだがな」


 ルイネレーヌが感心して独り言のように喋る。


 すると、若干、機械的な感じのジューネスティーンの声がする。 


「その目が光るってアイデア、もらう事にします。 それと夜に光る猫の目ってのが気に入りました」


「あぁ、カッコいい方がいい。 強そうな感じが伝わってくる」


 何気に、ジューネスティーンが、ルイネレーヌの独り言に反応したのだが、それを当然のようにルイネレーヌは、応対したのだが、なんで、普通に話ができるのか疑問に思ったのだろう、表情が変化する。


「ん、って、おい、そんな中にいても、こっちの声が、聞こえるんかい」


 ルイネレーヌは呟いただけなので、人に聞かせるつもりは無かった言葉に反応したジューネスティーンにツッコミを入れた。


「あぁ、良く聞こえています。 外の音も聞こえるようになっているので、普通に聞くことができます」


「それも、シュレの魔法紋のおかげかぁ。 お前達の同期生はこれ見て自信無くしたんだろうなぁ」


 ルイネレーヌは、パワードスーツには視力も聴力も備わっていると思うと、その至れり尽くせりの性能に、ため息を吐く。


 そんなルイネレーヌを放置してジューネスティーンは、パワードスーツの動きをチェックがてら、後ろに5歩下がる。 


 動きもスムーズで、人の動きのように、左右の足を交互に動かしながら、後ろ歩きで下がった。


 元の場所から離れると、シュレイノリアに声をかける。


「シュレ、残りはしまってくれ。 それとルイネレーヌさんは、そこに有る装備から少し離れてください」


 ルイネレーヌが下がると、シュレイノリアが残った装備を収納魔法で収納する。 




 済んだところでジューネスティーンは、ルイネレーヌに声をかける。 


「それじゃあ、さっき教えてくれた場所に案内してもらえますか。 それとここの留守番もお願いします」


「分かった。 留守番は、うちのメンバーが行うから安心してくれ」


 ルイネレーヌは、初めて見るパワードスーツに、目を丸くして、顔に表情も浮かべられず、ひきつらせてしまうが、片手を上げて何かサインを送っているように見える。


 おそらく、周囲に展開しているルイネレーヌのメンバーに指示を送っていえるのだろう。 


 サインを送ると、ルイネレーヌは、パワードスーツの性能について、外も見えて音も拾う事ができ、後ろに歩く感じも違和感なく感じるので、フルメタルアーマーより、かなり使い勝手が良いように思えたようだ。


 ルイネレーヌは、この外に取り付けられている装甲が本物なら、東の森の魔物でも中の人間を傷付ける事は不可能に近いと感じつつ、目的の場所へ案内をする。 




 ルイネレーヌの言っていた場所に案内される。 


 囮役になってしまったルイネレーヌは、ジューネスティーンに話しかける。 


「じゃあ、魔物は、あの方向から引っ張ってくる」


 そう言うと、来た方向と反対側を指差す。 


 途中で少し大回りをしたようだが、目的地に到着する前に魔物に見つからないように魔物とは正反対の方向から目的地に入らせていたのだ。


「それから、私ができるのは、囮りだけで、戦闘には参加しない」


 そう言うと、何か反論されるかと思ったが、ジューネスティーン達のメンバーの表情には不満は無かった。 




 ジューネスティーン達のメンバーとしては、連携して全員で魔物を倒すつもりでいたのだろう、ルイネレーヌが入ってきて、連携が崩れる事の方が問題だったのだ。 


 一緒に戦った事の無いルイネレーヌが一緒に入って、彼女の動きがどう動くのか考えつつ行動する必要がある。 


 その考える一瞬が、判断を狂わせてしまう事もある。 


 ジューネスティーン以外の装備は、一般的な冒険者と大差は無い装備なので、強力な魔物なら、爪の攻撃で触れられただけでも、大きな傷を負ってしまう可能性も考えなければいけない。 


 それなら、不確定要素となるルイネレーヌは、近くにいてほしくないというのが、ジューネスティーン達メンバーの本音である。 




 その事に気付いてかルイネレーヌは、軽く含み笑いをしてから、森の中に入っていく。 


 予めルイネレーヌによって、魔物の居る方向は分かっているので、その方向に向かってジューネスティーン達がパワードスーツで迎え撃つ。 


 そのための配置につく。 


 ジューネスティーンの右にアリアリーシャ、左にレィオーンパードがホバーボードを持って並ぶ。 


 ジューネスティーンがパワードスーツで相手の動きを封じると、この二人が魔物の足を止めるための攻撃を与える。 


 ジューネスティーンの後ろに離れて、相手から隠れるようにシュレイノリアが立つ。 


 彼女は、全員に付与魔法を与えられるようにと、自分の魔法の影響を与えらる範囲を考えて、後ろに下がる。


 状況に応じて攻撃にも加われる範囲ということで、10メートル程下がった場所に位置する。




 エルフの2人、アンジュリーンとカミュルイアンは、ジューネスティーン達とシュレイノリアの中間に位置して、長距離攻撃と場合によってはシュレイノリアの護衛を行えるように備える。


 このエルフの二人による、魔法が付与された矢の攻撃で終われば、一番簡単で良いが、今回の相手はそうもいかないと、ジューネスティーンは思っているようだ。




 最悪の場合を考えると、奥の手の一つや二つは用意しておいた方が良いと考えたので、背中のアタッチメントにはライフルタイプのニードルガンを取り付けてあるのだ。


 配置についたので、後は、ルイネレーヌが上手く東の森の魔物を連れてくるだけとなった。


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