ルイネレーヌの意見
ルイネレーヌは、背中のニードルガンも気になったが、それよりも顔について気になった。
それは、頭が付いているが、頭だけで、顔のようなメリハリがある訳ではなかった。
肩の上に丸い卵とも、ただの筒状のようなものが乗っているだけだったので、目も無くて顔は完全にのっぺらぼうなので、かっこ悪いと思ったようだ。
(せめて目元に視界を見るためのスリッドが有れば、一般的な鎧にも見えるのだがな)
すると、ルイネレーヌは、不思議に思ったのだろう、パワードスーツの顔を見ながら、顔を顰めた。
(これ、どうやって、外を見るんだ? 表からは、外が見えないんじゃないか?)
一般的なカブトなら、目の前にスリット状の隙間があって、そこから外を見ることができるのだが、パワードスーツの頭の入る部分には、そんな外を見る事ができないような構造になっている。
周りを見る為に視界をどうやって確保するのか気になる。
「それより、その中にお前が入るんだろ。 顔の前が塞がっているけど、中に入ったら外が見えないんじゃないか」
それを聞いてジューネスティーンは、ルイネレーヌも気がついたと分かると、表情を変えた。
(ルイネレーヌさんも、気がついたな)
ジューネスティーンは、ホッとしたような表情を見せた。
「パワードスーツは、中からも外からも見えないけど、中にはいれば魔法紋のお陰で外は見えるんです」
ギルドの話では、ジューネスティーンは魔法については一般的な魔法職よりは上だが、もう1人のシュレイノリアの魔法は、ギルドの魔法関係の研究者でも舌を巻くと聞いていた。
その話を聞いてピンときたので思わず声に出てしまう。
「それも、シュレイノリアなのか」
ルイネレーヌは、驚きを通り越して半分呆れている。
魔法のセンスは、ギルドの高等学校の教員程度では、理解できな程に進んでいると聞いていたのだが、その魔法を使って、聞いた事の無い物を作ってしまったのだとルイネレーヌは思ったようだ。
そんなルイネレーヌの表情を、ジューネスティーンは、確認しつつ、話を続ける。
「あぁ、遠くを見る魔法や、夜目の魔法の応用らしいんです。 これの、お陰で首から上も、完全防御できてます」
顔の部分には、筒を付けただけのようになっている。
格好については、案外無頓着なんだとルイネレーヌは、思っていた。
「魔法で外が見えるのは良いんだがなぁ」
そう言って、そののっぺらぼうの顔を見つめる。
「この顔は無いと思うぞ。 もう少し顔を作った方がいいんじゃないか。 その、のっぺらぼうの顔だと威圧感に欠けるから、カッコイイマスクにして、特に目が有った方が強そうに見えるだろう。 ほら、闇の中で、猫とかのように、目が光ったりした方が、強いイメージが伝わってくるってもんだろう。 強そうに見せるのも大事な事だと思うぞ」
ジューネスティーンは、ルイネレーヌの指摘を受けて考える様子を見せた。
魔物と対峙して、顔に凄みが必要なのかとも思うが、見た目については、やはり必要な事なのかもしれないとも思ったのだろう、ジューネスティーンは、意見を求めるように、メンバー達を見る。
以前、レィオーンパードにも、指摘されたように記憶しているので、今後の課題として見た目も考える事にする方が良いのかと考えているようだ。
「うん。 検討してみます。 実用的な事しか考えて無かったので……。 そうか、顔で威圧するのか」
猫の目が夜に光って見えるのは、相手を威嚇するためでは無いだろうが、猫以外の猫科の動物や、肉食の爬虫類など、肉食系の動物を考えると、威嚇するような顔形をしているように思えるのだ。
ならば、顔の形についても考える必要があるのかもしれないと、ジューネスティーンも思ったようだ。
ルイネレーヌは、顔については、そんなところかと思ったのだろう、それ以上顔についての指摘はせず、このゴーレム型のパワードスーツの中に人がどうやって入るのか気になっていた。
最終的に、ジューネスティーンが、乗り込むのを見ていれば、直ぐにわかるだろうが、ジューネスティーンが、直ぐに乗り込みそうも無いので、気になり始め、好奇心がくすぐられているようだ。
ルイネレーヌとしても、話には聞いていたが、実物を見るのは初めてなので、どうやって装備するのか気になっているのだ。
ジューネスティーンは、パワードスーツの脇に有る手提げ袋を手に取ると、ルイネレーヌに着替えてくると言って馬車の後ろに行く。
それを見送ると、ルイネレーヌは、パワードスーツを、隅々まで見るチャンスと思ったのだろう、近付いて、周りをグルグルと回って、観察し始めた。
「それより、これどうやって装備するんだ。 入り込めそうな場所が見当たらないけど」
完全に組み立てられ、人の形をしているので、どうやって装備するのか気になる。
(どこを見回しても、出入りできる箇所が有るとは思えないな)
パワードスーツに乗り込む方法は、ジューネスティーンが装備する時にわかるだろうと思い、後にして外観構造について確認を始める。
頭は一回りしてものっぺらぼうだった。
頭から徐々に下に視線を下ろしていく。
胸の鎧の両脇から、別のパーツが肩を覆うように取り付けてあり、そのパーツから下に腕を形成する鎧が出ている。
腕は、肘を隠し外側を覆うように二の腕の方に伸びており、腕には外側にジョイントが付いており、盾につながっている。
盾の内側には、上から下までレールが付いている。
盾のレールは、盾の長手方向に並行に中央に2本付いており、腕のジョイント部分に接続されている。
胴回りは、鎖帷子で覆われており、そして、腹筋の上に装甲板を重ねるように5枚、鱗のように縦に重なっており、胴に取り付けられているが、装甲板は、胴に縦にワイヤーが2本走っており、縁がそのワイヤーに固定されているだけなので、胴回りの鎖帷子も含めて考えれば、軽く前に体を曲げることも可能だとわかる。
背中は、背骨のあたりを中心に、左右に分かれて2列に腹筋部分と同じように鱗のような装甲板が何枚も重ねて取り付けてあるので、これも体の動きに合わせて捻ったりできそうだと思える。
腰は胴より広くなっており、ジューネスティーンの体型を考えても広いと思う。
鎖帷子で覆われた胴が腰の剣道の垂れのように付いている何枚もの装甲板を考えても広すぎる腰回りと思い、鎖帷子を辿って視線を下に持っていくと、腰回りの鎖帷子は、外に広がっていた。
中のパーツの影響によって、鎖帷子が広がっている事がわかる。




