パワードスーツ
仕方が無いので、当たり障りのない範囲で説明する事にする。
「あーぁ、でも、ジェスティエンさんの銃は、火薬を使っていますけど、こっちは、火薬の作り方が分からなかったから、違う方法で撃ち出しています。 それに、射出される弾も違います」
「ほぉ。 お前、ジェスティエンと面識があったのか」
「ええ、一度だけですけど、出会えた時に、銃もライフルも見させてもらえました。 これは、その時に見せてもらった銃を参考に作ったんです」
ルイネレーヌは、ジューネスティーンが、ジェスティエンのライフル銃に付いて詳しい事を知っていると分かって、鋭い目に一瞬なった。
ルイネレーヌは、この世界で生まれたただの人属だが、ジューネスティーン達は転移してこの世界に来たのだ。
(ジュネスが、ジェスティエンを知っているとは思わなかった。 お互いに転移者なのだから、私のように、この世界で生まれた人間より、詳しく見れたのかもしれないな。 ジェスティエンのライフル銃についてもジューネスティーンが知っているなら、私が見た時以上の事をジューネスティーンが話してくれる可能性があるかも)
ルイネレーヌは、どんな質問をすれば良いのか、何を聞いていいのか、悩んでいるのか、ジーッと見ては、何か言いたそうにしながら、ジューネスティーンの作業を眺めている。
ジューネスティーンは、ライフル銃のような物を、パワードスーツの背中に取り付けるのを、ルイネレーヌは、興味深く見ているので、ジューネスティーンは、仕方なさそうに説明をする。
「この銃の弾は、細い金属の針を何百本か束ねた物で、それを魔法で撃ち出しています。 射程はそれ程長くはないけど、細い針だから、当たった的はミンチになってしまいました。 自分はこれをニードルガンと呼んでます」
ジューネスティーンが作ったニードルガンは、弾丸の代わりに細い硬質の針を弾丸の代わりに入れてある。
薬莢の中の、飛び出る弾丸の代わりに、何本もの針が所狭しと入れてあり、火薬の代わりに魔法紋によって、火魔法の応用で、爆発を起こしてその針を射出する。
通常のショットガンの弾は、小さな球体だが、その代わりに細い金属の針になっており、先端が尖っているので貫通力が高い為、当たったっ部分は抉り取られ、その抉り取られた部分は、細かく砕かれてしまう。
ただ、針が真っ直ぐ飛ぶ距離はそれ程長くは無く、撃ち出した針は徐々に広がっていき、中には、横になってしまう針もあるので、遠距離射撃になればなる程、的に当たる針の本数は減り、威力も落ちる。
ジューネスティーンは、ルイネレーヌが、何か言っているのかと思ったが、何も言ってくる気配がないので、自分の話を続けた。
「まだ、始まりの村で魔物を狩っていた時に、ジェスティエンさんに、助けてもらったことがあったんです。 その時に、弾丸と銃を見せてもらえたんです。 撃鉄で弾のお尻を叩いて、弾の中の火薬に引火させて、その火薬が爆発する力で銃弾を撃ち出すと、ジェスティエンさんは言ってましった。 ジェスティエンさんの話だと、火薬は、ギルド本部が作っているって言ってたから、始まりの村のギルドに、火薬か弾丸を売ってもらえないか聞いてみたけど、始まりの村のギルドは、そんなものは知らないの一点張りで、話にならなかったんです。 仕方がないから、諦めていたんですけど、シュレから、爆発させるだけなら、火薬でなく魔法を使えば良いと言われて、協力して貰って作ったんです」
その話を聞いてルイネレーヌは、驚きよりも半分呆れてしまう。
話を聞いただけで、構造を理解した事にも驚いたが、火薬を手に入れることができないからと言って、別の方法を考えてしまった事に、驚きを通り越して呆れてしまったのだ。
「それだけ聞いて、同じような物を、お前は作ったのか。 今年度の首席と次席は、天才を通り越しているなぁ」
ルイネレーヌは、ジューネスティーンの天才的な考え方に、当てられて、頭を掻きながら苦虫を噛むような顔をしている。
(これで、今回のギルドからの依頼の意味が分かった。 新人パーティーに遠巻きの護衛になんで駆り出されたのかと思ったが、これで合点が行った。 こんな連中だけで帝国に行ったら殺されて装備をそっくり持って行かれたらひとたまりもない。 このパワードスーツもだが、ニードルガンとかも持っていかれたら、一気にツ・バール帝国の軍事力が上がってしまう。 ギルドも面倒な仕事を押し付けやがった。 ん、だからあれだけ気前良く前払してくれたのか)
ルイネレーヌは、南の王国のギルドから、ジューネスティーン達の護衛の依頼を、もらった時の話を思い出しつつ、何で新人の護衛に、自分が付けられたのか理解できたと思ったようだ。
ルイネレーヌは、納得したような表情をする。
そして、南の王国の商会主であるジュエルイアンからも、ギルドと、ほぼ同じ依頼を受けている。
同じ依頼を同時に2箇所から引き受け、どちらからも前払いで報酬をもらっているのだ。
最初は、ラッキーだと思ったのだが、今、こうやってパワードスーツを見てしまうと、ギルドもジュエルイアンも、真剣にジューネスティーン達が、自分達の手の届かない所にいっては困ると感じていると理解し始めた。
そんな思いを巡らしながら、なんで弾ではなく針の束を使ったのか気になった。
「なあ、ところで、何で弾を針にしたんだ? ジェスティエンに見せてもらってそれだけの物を作ったのなら、弾も同じ物にすれば良かったんじゃないのか?」
ジューネスティーンは、苦虫を噛んだような顔をると、話したくなさそうにしているのだが、ため息を一つつくと話し出す。




