戦闘準備
パワードスーツを、初めて見たルイネレーヌは、2メートルのところまで近づいて、パワードスーツの前からジロジロと、舐めるようにパワードスーツを見る。
「随分と軽装備で旅していると思ったら、こう言う仕掛けだったとは……。 てっきりパワードスーツは王国のギルドに預けてきたかと思ってたよ」
金属の塊のような、パワードスーツの話は、ルイネレーヌも聞いていた。
その重装備ゆえに、高さ、2メートルも無いとは言え、かなりの重量になると思っていたのだろうが、ジューネスティーン達の馬車には、そんな重量物を乗せている形跡も見当たらなかった事もあり、今回は、パワードスーツは見る事ができないとルイネレーヌは思っていたようだ。
(ギルドの連中、シュレが収納魔法を使えるなんて話は言ってなかったぞ。 あいつら私に隠し事をするとはいい度胸だ)
収納魔法から出てきた装備の中には、ゴーレムのような形をしている一体型の防具が、パワードスーツである。
首は無く肩から胸を覆っている鎧と、兜とマスクが一体となっている物が肩の上に付いている。
(首を回す事はできないようだな)
ルイネレーヌは、頭の方から、細かく確認するように眺めている。
胸から背中に掛けて金属製の鎧で覆われており、胴の部分は、腹筋の部分に3枚の金属製の板が縦に並んでいる。
ルイネレーヌは、横に回りながら、徐々にパワードスーツに近づいていきながら、腹筋部分を確認する。
背中にも腹部と同じような板状の小さな装甲板が数枚背骨を中心に2列、瓦のように重なっており、腹部の側面は鎖帷子になっている。
二の腕は、胸に繋がっている肩当てのパーツから、筒状に下に伸びている。
肩のパーツの隙間を覗くと、二の腕は、胸のパーツと直接ではなく、肩当てのようなパーツを介して関節的につながっている。
肩当てのパーツが、胸と繋がっているので、肩を前後に回せるようになっていて、二の腕の筒状のパーツが、その肩当てのパーツと繋がっているので、そのジョイント部分が、腕を左右に開くように設計されている。
肩の、複雑な動きに合わせる為に、肩のパーツを付けているのだと、ルイネレーヌは理解したようだ。
腕は、肘の部分に大きな丸い蝶番で接続され、肘の外側を覆いそして二の腕を外側から覆う装甲が上に伸びており、その腕の通常ならガントレットの部分には、大きな盾が装備されて、肘から脚のくるぶし部分をガードするように地面に付いている。
ただ、ガントレットと盾の接続なのだが、腕の外側にほぼ、腕と同じ長さで、高さ10センチ程の分厚い突起が付いて、腕に取り付けた盾にしては、腕から離れているように思える。
盾は体より若干前に接地している事からバランスを取って倒れないようにしていると分かる。
盾の長さ1メートル強、地面から肘の部分まであり、上下の先端の幅が20センチで中央にいくほど広くなり、中央部は30センチ程ある長細い六角形をしている。
盾は横から見ると中央部を中心にくの字になっていて、表面は平面ではなく、僅かにRになっている。
ただ、一般的な盾は、盾の中央を腕に取り付けるがこの盾は、盾の端が腕に付いて足元まで伸びており、肘から足のくるぶし辺りを覆うように立っている。
何でこんなところに取り付けてあるのか、これだと盾の意味が無い事と、盾で攻撃を受けても抑える事はできない。
ルイネレーヌは不思議に思うが、とりあえず様子を見る事にする。
左腰には鞘の大きさから想像するだけだが、刃渡り80センチ程の剣が鞘に収まって下がっている。
その鞘は少し反っている事から、鞘の中に収まっている剣は、曲剣で斬り裂く為の剣と、すぐに分かる。
また、その鞘は、手元から先端まで、太さが変わってないことから、中の刃も鍔から切先までほとんど刃幅が変わらないのだろうと予想がつく。
ただ、一般の刀と異なる部分は、柄の部分の長さが50センチ程有り、一般的な剣の柄より長いことと、鞘が先程ジューネスティーンの持っていた物より太い事から、刃幅が広いのだろうと想像が付くが、パワードスーツの大きさからすると、片手剣程度の刃幅なのかと思えるが、柄が50センチと長めな事から両手剣とも取れる。
片手剣の刃幅の両手剣のような剣である。
柄はパワードスーツで握る際に両手で握る事も考えて、柄の部分が長くなっており、パワードスーツによって筋力強化された事で、重い武器でも問題無く扱えると思えるが、そんな感じは見受けられない。
(この剣だが、南の王国で噂になっているエルメアーナの店の剣に似ている、いや、その剣と同じと言っていいな。 そう言えば、ジュネスの付けていた剣もそうだった。ジュネスとエルメアーナも繋がっているのか。 多分そういう事なんだろうな)
ジューネスティーンのメンバー達は、パワードスーツと同時に出てきた装備をメンバーのそれぞれが手に取り、今迄付けていた軽装備を外して、出てきた装備と少し離れた所に置いていく。
出てきたパーツの残りは、パワードスーツ用の物になるが、大きな盾とライフル銃のようなものが有る。
ジューネスティーンは、そこからライフル銃のような物を取るとパワードスーツの後ろに周り、背中のアタッチメントに取り付けている。
背中に付けたライフルを見てルイネレーヌは、ジェスティエンと同じ物をなんで持っているのか気になった。
「ほぉ、お前さんもジェスティエンと同じ物のを持っているのか。 確か、ライフル銃とか言ったな」
取付けているライフル銃を見て、ルイネレーヌの目付きが変わる。
ジューネスティーンは、ルイネレーヌにライフル銃と言われて、ジェスティエンの事も知っていると分かると、惚けるわけにはいかないと思ったようだ。




