魔物の情報とその対応策
ジューネスティーン達に、東の森の魔物を討伐してもらいたいと考えているルイネレーヌは、どうやって、ジューネスティーンの仲間にやる気を出してもらうか考えていた。
ルイネレーヌは、真剣な顔でカップを見て、本音の部分を話し出す。
「王国のギルド支部は、お前達の実力を、CランクやDランクとは思ってない。 それどころか、最上位のSランクでも足りないと思っている。 お前達とジェスティエンが現れた事で、ギルドは、その上に、SSランクとSSSランクの設立を、検討しているくらいだ。 王国のギルド支部では、Sランクを、お前達に与えようと考えていたのだが、学校を卒業したところなので、他国のギルド支部から横槍が入って、Cランク・Dランクにしているだけだ。 お前達の装備や魔法力と、在学中の実績には、現在のAランクパーティーでも、太刀打ち出来ないと、南の王国のギルド支部は考えているんだ」
そこまで話されてジューネスティーンが口を開く。
「要するに、その魔物を大ツ・バール帝国に行く駄賃に討伐しておけと言うのが、ギルドの意向なのですね」
ルイネレーヌは、良く分かっているといった感じで鼻を鳴らす。
「南の王国のギルド支部としての、本音はそうなんだろうなぁ。 お前達なら、問題無く討伐可能だと思ってギルド支部も、情報をお前達に伝える様に、私に依頼したんだろう。 これから先、この東街道が、魔物によって使えなくなると王国もこまるからな。 お前達に素通りされて、魔物が残ると流通の影響が出るから、ジュエルイアンも、お前達に魔物を倒してもらいたがって」
そこまで話すと、ルイネレーヌが、しまったと言う顔をする。
それを見たシュレイノリアが、ジュエルイアンとギルドと聞いた事と、さらに、今のルイネレーヌの表情を見て、ピンときた様だ
その様子を見て、シュレイノリアは、ルイネレーヌに指摘する。
「この女、同じ依頼をギルドと、ジュエルイアンから受けている」
それを聞いたアンジュリーンが、嫌な顔をしながら追い討ちをかける。
「うわぁ、これだからこの女は。 どうせ、両方から報酬を前払いで貰ってきたんでしょ」
ルイネレーヌは、図星を突かれてしまった。
お喋りが多いと、人はどうしてもボロが出やすくなってしまう。
バレてしまったとしても、どちらの報酬も重複しているからといって返却の必要はないのだ。
ルイネレーヌは、別にバレてもどうと言う事もないので、開き直った態度を見せる。
「アハ、バレちゃった。 テヘ」
そう言って、自分の頭を小突きながら舌を出す。
その態度に、キレたアリアリーシャが、そばに置いてあった剣の鞘を右手で掴み、左手を柄に掛けてルイネレーヌを睨みつける。
「この女、殺します」
慌ててアリアリーシャの左手を抑えるレィオーンパードと、ジューネスティーンが、アリアリーシャの前に手を出して止める。
「分かった。 この魔物の討伐は俺達で行う。 それにジュエルイアンさんが絡んでいるなら、貴女にも協力してもらう。 ジュエルイアンさんの報酬には、多分、俺達の手伝いも入っているはずだ」
あわよくばジューネスティーン達に、魔物を倒して貰って、自分は高みの見物をと考えていたルイネレーヌは諦めた様な表情を見せる。
「その通りさ。 お前はジュエルイアンと似ているから、直ぐに話の裏まで見透されちゃう。 どっちもベットの上で話してくれれば嬉しいんだけど」
ちょっとがっかりした様に言う。
「俺もジュエルイアンさんも、あなたとは仕事のパートナーとして考えているから、男と女の関係にはならないよ」
「そうなんだよな、そんな甲斐性だから、パーティーの女達と何も無いんだろうな」
その指摘は、ジューネスティーンも、あまり嬉しくは無いのだろう、少し表情を曇らせた。
「そういう関係は、仕事の中には不要なものだ。 本気の仕事をするなら、性別は関係無い。 むしろ邪魔になるから、俺もジュエルイアンさんも割り切るんだ。 そんな事より、今度の魔物にどう対処するかだな」
少しイラついた様子で、話を本題に戻した。
「森の中より視界の良い場所の方が有難いんだが、何処か有りましたか?」
ジューネスティーンは、ルイネレーヌに聞く。
「もう、作戦案に困った時にアイデアを出そうと思ってたのに、お見通しなのね」
ルイネレーヌは、やれやれといった態度と表情をする。
「この先に50メートル四方程度の木が無い所が有るから、そこでどうかな」
「じゃあそこで」
ジューネスティーンは即答する。
そんなジューネスティーンの態度を見て、ルイネレーヌは少し驚く。
「それだけで決めて良いのか?」
あまりに簡単に決めてしまったので、ルイネレーヌはジューネスティーンに聞く。
「もう、下調べは済んでいるんでしょ、それにどんな闘い方をするかも察しているから、そこを教えてくれたんですよね。 なので囮りはお願いします」
そう言われて、ルイネレーヌはやれやれという様に両手を軽く広げる。
ただ、それだけジューネスティーンが自分の事を信用しているのだとルイネレーヌは思った様だ。
そんな事をルイネレーヌが思っていると、ジューネスティーン達のメンバーは、自分の役割を考えて確認を始める。
「じゃあ、にいちゃん、俺は左からで良いね」
話を聞いていたレィオーンパードが、これから行われる魔物討伐について、ジューネスティーンに話しかける。
今まで食事用の狩は魔物討伐の訓練として行われていたのだから、自分の役目も分かっている。
また、以前の戦闘の応用だと考えたのだろう、レィオーンパードが尋ねた。
「あぁ、それで良い。 それと最初の一撃はお前だ」
ニタリと笑うレィオーンパード、その2人のやり取りを聞いていたアリアリーシャが、嬉しそうにルイネレーヌに言う。
「ラッキーですぅ。 囮り、よろしくお願いしますぅ」




