ルイネレーヌのホバーボード
以前に、ギルドからの依頼で作ったホバーボードは、仕様しか聞いてなかったので、納品後どうなったのかは分からなかったが、ルイネレーヌが持ってきた事で、仕様の要求事項について、ジューネスティーンは納得したようだ。
そして、2台要求された事も何となくであるが理解できたようである。
「あぁ、そうさ。 私のような情報屋稼業には良い物をもらったよ。 ありがとうよ」
ルイネレーヌは、素直にありがたさを伝えたのだが、その言葉が、ジューネスティーンの女子メンバーには、気に入らなかったようだ。
「でも、ちゃんと使えるのかしら」
ムッとしたように、アンジュリーンが、独り言のように言うが、ルイネレーヌの耳には届いた。
「最初は戸惑ったけど、コツさえ掴めば馬より具合が良かったぞ」
少し勝ち誇ったようにルイネレーヌが言った。
アリアリーシャは程々だったのだが、特にレィオーンパードは、調整を含めてホバーボードのテストパイロットとなっていたのだ。
そのため、レィオンパードは、ホバーボードを乗りこなすのに相当苦労していたのだ。
ホバーボードの開発には、ジューネスティーンとシュレイノリアが2人で行っている。
ホバーボードのアイデアは、ジューネスティーンが考えたのだ。
しかし、ジューネスティーンがボードを作ると、その後は、付与する魔法紋の開発となる。
ジューネスティーンは、パワードスーツの開発もあったので、その後の魔法紋の開発に関して、シュレイノリアは、魔法紋を何度も書き換えて調整を行なう必要があった。
その開発時に、テストパイロットとして乗せられたのが、2人の弟分であるレィオーンパードで、かなり、苦労したのを、アリアリーシャもアンジュリーンも見ている。
ただ、アリアリーシャについては、レィオーンパードの開発実験に付き合っていたので、開発が完了した後の2号機の試乗はスムーズに進んだ。
前情報無しで乗りこなせる物では無いと、ジューネスティーンのメンバー達は、認識していたので、ルイネレーヌが乗りこなしてしまっているのは、特に女子メンバー達は、面白くはなかったのだ。
アンジュリーンが、ムッとしているので、何かを言い出す前に、ジューネスティーンが、ルイネレーヌに話しかける。
「それより、そちらのメンバーの皆さんは?」
ジューネスティーンが話しかけたことで、ルイネレーヌは、視線をアンジュリーンからジューネスティーンに移した。
「大勢で押し掛けるわけにもいかないからな。 置いてきた」
何となく予想がつく、周りに配置して、この接触の邪魔が入らないように、配置をしているのだろうとジューネスティーンは想像がついたようだ。
魔物の襲撃や、旅人が近づかないように、手配をしているのではないかと、ジューネスティーンは、そんな事を考えながら、ルイネレーヌに答えるのだった。
「そうでしたか。 ところで、どのようなご用件ですか?」
ルイネレーヌが、ここに来たという事は、何らかの情報を持ってきている事は予想が付くのだ。
今まで、南の王国を拠点にして活動していたルイネレーヌが、南の王国を出て自分達の所へ来たのだ。
それに、ジューネスティーン達は、ルイネレーヌに、大ツ・バール帝国に行くことは、伝えてはいないし、伝える必要も無い相手なのだ。
ジューネスティーンにとって、ルイネレーヌとは、何か新しい魔物を倒す時などに、魔物の情報を売ってもらうか、ギルドの依頼の情報を買う相手であって、それ以上の関係ではない。
それが、追いかけてきて接触して来たのだ。
自分達への接触時には有益な情報を携えているのだが、彼女の性癖から女性陣のウケが悪い。
「そう、焦らなくても、急いで、お前達を追いかけてきたんだから、ちょっと離れた所でゆっくりしてからでも」
そう言うと、シュレイノリアが、ジューネスティーンの前に出て睨みつける。
「なあに、シュレイノリア。 貴女も一緒じゃ無いとダメ? 私は構わないわよ。 1人の男に2人の女が乗り合うのも悪く無いからねぇ」
その言葉に、顔を真っ赤にして、シュレイノリアは言い返すのだった。
「お前に、ジュネスは、指一本触らせない!」
凄んで見せるシュレイノリアに、ルイネレーヌは、半分、面倒くさいと思いつつも、シュレイノリアの相手をした。
「おお、コワ。 じゃあ、この話は、またこんどね。 それより、何か飲ませてくれない。 こっちは急いで来たから、喉がカラカラなのよ」
そう言われて、今迄食事をしていた場所に有る、ポットを指差した。
ルイネレーヌでなければ、アリアリーシャが、何も言わずにお茶を出すのだが、気に入らないので、不貞腐れたようにして、聞こえないふりをしている。
ジューネスティーンは、女子の態度を見て困ったと思うのだが、同性から見たルイネレーヌは、嫌なタイプなのだろうと察する。
だが、ジューネスティーンに、ちょっかいを出したのが気に入らないのか、不満そうな顔をしているシュレイノリアを、このままでは話が進まないので制するように言うのだ。
「せっかく、仕事の話をもってきてくれたんだ、ゆっくり聞こうじゃないか。 それに、その人の相手は周りに展開しているメンバーの人達が居るから、本気にするんじゃないの」
ジューネスティーンが、そう言うとシュレイノリアは渋々従った。




