獲物の移動と、もう1人のメンバー
ジューネスティーンは、森の中を見渡して、手頃な木を見つけると、その木の前まで行って木のシナリ具合を確認する。
確認が終わると、木と自分の距離を測る様に下がり、左足を軽く後ろに下げて右肩を左に回す。
右手で剣の柄を掴むと、左手は剣の鞘を抑える程度に添える。
一瞬、体が下がった様に思った瞬間、右手が剣を抜いて体を右に捻る。
右腕は、その勢いを借りて、剣を持った手を一気に右に払う。
一般の人なら、気が付いた時には剣が抜かれて右手に有ると思うだろう。
剣先の動きが目で追えない程の速さで剣を払った。
すると、ジューネスティーンの前に有った木は、ゆっくりと倒れる。
立っていた木を居合斬りで切ってしまったのだ。
木が倒れると、剣を鞘に収めて、腰の後ろに付けていたナタを取り出して、倒れた木の枝を払い、適当な長さのところで、先を払って一本の棒にした。
その棒を獣の縛った前足と後ろ足に通すと、ヒョウの亜人と、髪の短い中性的なエルフの2人に声を掛ける。
「後ろ足はお前達が持ってくれ。 馬車の所まで戻るぞ」
2人が少し嫌そうな顔をするので、ジューネスティーンは話を続ける。
「これだけの獲物なんだから、男3人で運んだ方が良いだろう」
そう言うと、ヒョウの亜人のレィオーンパードが愚痴を漏らす。
「にいちゃんは背が高いから、バランス悪いんだよなぁ」
その愚痴に、髪の短いエルフのカミュルイアンも便乗するようにジューネスティーンに言う。
その声音は、女性の声ではなく、甲高い感じはするが、少年の声と判る声音だった。
「そうだよ。 低い方が重さを感じるよ」
ジューネスティーンの身長は、180センチメートル有るのだが、レィオーンパードとカミュルイアンは、2人とも165センチメートルと、ジューネスティーンとは、15センチメートルの身長差がある。
確かに、有りそうな話だと、ジューネスティーンも思った様子を表情に示す。
しかし、この2人に後ろを持たせるの決定事項なので、渋々でも、納得させる必要があると思ったのだろう、次の手を打つ事にする。
「じゃあ、アンジュとアリーシャにお願いしようか?」
そう言って、女子2人の方をさすと、レィオーンパードとカミュルイアンが女子2人の方を見る。
女子2人は、笑顔で男子2人を見ている。
その笑顔の底には、私たちに、その天秤棒を担がせる気かと、訴えているのが、男2人にも分かる。
アンジュリーンの身長が162センチメートルで、アリアリーシャの身長が130センチメートルと32センチメートルの身長差があるのだが、カミュルイアンとレィオーンパードは共に、165センチメートルと同じである。
後ろを担ぐにしても身長差の無い2人なら、担ぐのに苦労は無いが、女子2人の身長差では担ぐ事は不可能に近い。
それに、女子2人に担がせたら、後々、何を言われるか、そう考えると、自分達で担いだ方が無難だとカミュルイアンとレィオーンパードは判断する。
カミュルイアンとレィオーンパードは、2人で後ろを担ごうと目で合図する様にお互いを見ると、ため息を吐き、ジューネスティーンに了解したと答えて、天秤棒の後ろを2人で担いでくれた。
ジューネスティーンの前を先導する様にアリアリーシャが、そして殿をアンジュリーンが務めて、来た方向に帰っていく。
5人は、途中で止めてある移動用の馬車の所に帰るのだった。
馬車は森の手前の河原で、川の石がゴロゴロしている手前の土手に止めてある。
5人が止めてあった馬車に戻ると、馬車の側にもう1人少女が、馬車をひく地竜の世話をしていた。
遠目で見ると、身長が低いこととスレンダーな体型からローティーンかと思えるが、近寄ってみると顔付きからハイティーンと思える。
鮮やかなオレンジ色のシャツは、ハイネックで、腕は肩から広がった生地が、二の腕の中央あたりまで広がっており、袖はヒラヒラとした生地が広がって、風でユラユラとなびいている。
胸周りは、生地が少し余裕があるが、ウエストは、体の線に合わせた様にくびれている。
スカートは黒色で、裾は膝上10センチメートルのミニスカートだが、足は、厚手の黒のレギンズを履いており、脛の中程までのブーツを履いている。
髪は黒く、前から見るとショートカットかと思うが、後ろの髪は、襟足の部分で段カットにしてあり、カットされてない髪は肩甲骨の下まで伸びている。
顔は小さめな顔立ちで、目は、大きな黒い瞳な為、遠目に見ると幼く見えることもある。
地竜は馬車からはずされており、周りの下草を食べている。
そのそばには、黒髪の少女がバスケットを持ってしゃがんで、野草を摘んでいた。
その後ろ姿は、赤のワンピースなのだろう、しゃがんだ後ろ姿から、僅かに地面にスカートの縁が付いているので、それ程長くないワンピース型のスカートだとわかる。
そして、ウエストには黒の太いベルトが巻かれている。
その少女は、5人に気がつくと、食べられそうな野草を集めていた手を止めて、戻ってきた5人を見ると話しかけた。
「獲物、獲れたな。 早速、解体して食事用と保存用に」
5人にその少女が、早速指示を出した。




