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アンジュリーンの愚痴


 アリアリーシャは、自分の研いだ剣の切れ味を、ジューネスティーンの研いだ物と比較した事がある。


 ジューネスティーンから、刃先の研いだ方の反対側を、指で、シノギの方から刃先を抜けるように触れた時、指紋の山に引っかかる感触で、切れ味が分かると言っていたのだが、確かに自分の研いだものとジューネスティーンの研いだものでは、その違いが顕著に現れていた。


 それが、どうしてそんな違いが出るのか理解に苦しんでいた時の事を、アリアリーシャは思い出した。


「うーん、本当のことだけどぉ、……。 そこまで、ハッキリ言わなくてもぉ、……」


 事実を指摘されたと思うと、少し凹んでしまい、うさぎの耳が後ろに折れて小さくなってしまった。


 ジューネスティーンは、アリアリーシャの様子から、もう、これ以上、何も言われないだろうと思ったのか、話を切り上げようとしたようだ。


「まぁ、手入れの話はそれぐらいにしておこう」


 ジューネスティーンは、アリアリーシャの表情を見て、話を切り上げた。


 エルフのアンジュリーンの話に、ヒョウの亜人のレィオーンパードが乗ったことを考えると、これ以上2人に、アリアリーシャの剣の手入れの話をさせて、アリアリーシャが、逆ギレして言い争いに発展する可能性が有るので、ジューネスティーンがこの辺りで、話を打ち切らせた。




 だが、髪の長いエルフの少女であるアンジュリーンも、ジューネスティーンに愚痴をこぼしてきた。


「それより、私に付与魔法をさせるって、どう言う事なのよ。魔法は、シュレの十八番なんだから彼女を連れてきた方が楽だったんじゃないの。 魔法紋を描かないとできない魔法ってかなり面倒なのよ。 私の得意なのは火魔法なのよ。そっちなら、詠唱無しで使えるのにぃ!」


 得意でない魔法を使わされて不満を言う。


「そうなんだが、シュレの魔法は強力過ぎる。 あいつの場合は、2倍で構わないところを、20倍どころか、100倍以上にしかねないからな。 それだと、周りがスピードについていけない。 それに、勝手に別の魔法を使って、下手をして森がなくなってしまったとか、地図を書き換える必要が出ても困るから今回は留守番させたんだ。 でも、お前の火魔法でも、山火事になりかねないしな。 それに、アンジュも、付与魔法にも慣れておいた方がいいだろう」


 アンジュリーンは、人にかける付与魔法は得意な魔法ではない。


 いや、得意ではないと言うより、ギルドの高等学校を卒業した頃に覚えたので、まだ、慣れて無いと言った方が良いのだ。


 それを考えれば、実戦で使う事が出来るようにするため、このような食料調達時に練習がてら行うのは、納得できるのだが、なかなか、自分の中で整理がついてない。


「まあ、そうなんだけどぉ」


 アンジュリーンは、イマイチ、釈然としない表情をしている。


 そんなアンジュリーンの表情を見て、ジューネスティーンは、一声かけた。


「得意な事を伸ばすのもいいけど、不得意分野は、不得意にしておいたら、絶対に使えないからね。 こんな時にでも、使うようにして慣れておいた方がよかったと思ったんだよ。 大体、不得意なものほど、使わなくなる傾向になるから、無理して使う場所を用意したんだよ」


 そこまで言うと、アンジュリーンは、拗ねたような表情をしていたので、ジューネスティーンは、話を切り上げることにしたようだ。


「せっかく、火魔法以外を覚えたところなんだから、貴重な魔法士なんだから、しっかり使えるようにして、俺達を助けてほしいんだ。 美人の魔法士さん」


 そう言って、ジューネスティーンは、アンジュリーンに微笑みかけた。


「ん、もう」


 アンジュリーンは、ジューネスティーンの、“美人”に反応して顔を少し赤くする。




 アンジュリーンは、当人も周りも認める程の美人だ。


 小さな顔に、整ったパーツが左右対称に離れ過ぎず近すぎず、バランスが取れて配置され、学校でも有名な美人とされていたのだが、性格からくる、思った事を直ぐに口に出してしまう事で、不必要に相手の触れられたく無い部分を話してしまうのが災いして、周りからは敬遠されていた。


 当人としても、必要以上に人や亜人に接する気も無かった事もあり、最初に集まったこのメンバー以外とは、積極的に親交を深めてはいなかった。




 そんな、アンジュリーンの表情を気にかけるが、それより、倒した獣をキャンプに持っていくことにを考えなければならない。


 猪型の獣なのだから、獣の体重は、ここにいる3人分程度の重さはあるのだ、そう簡単に運べるようなものではない。


「それより、ご飯の準備だろ」


 獲物を見ると、首から出ていた血が止まっているので、全身の血がある程度出てしまったのだろう。地面が赤く染まっている。


 また、血の匂いを嗅いで森の中の肉食動物が狙ってくる可能性も有るが、それ以上に魔物が寄って来る事の方が問題である。


 5人は、血に染まった地面からその獲物を少し移動させて、軽く血を拭き取ると前脚と後ろ足を縛る。


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