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エルメアーナのベアリング開発  報告をするヒュェルリーン 2


 ヒュェルリーンは、ジュエルイアンがベアリングについて、開発に必要と言われたプレス機を購入の方向で考えていた事と、その後の販売についても考えており、その市場規模も理解していることから、ホッとするよりも、自分の考える以上の事を思っていた事が嬉しいかっただった。


 そして、ヒュェルリーンは、もう一つ報告する必要が有ると思ったようだ。


「ジュエルイアン。 ジュネスといつも一緒にいる、魔法職のような女性は覚えている?」


 ジュエルイアンは、何かを思い出すようにしていた。


(ジュネスと一緒にいたのは、転移してきて間もない亜人が1人と、ああ、居た。 人属の女だったな。 名前は、……。 そう、確か、シュレイノリアといったはずだ)


 人の話になって、ジュエルイアンは、興味を持ち始めたようだ。


(確か、エリスリーンの話だと、魔法がすごいらしいとか言ってたな。 俺達と会った時は、ジュネスの脇に張り付いて、黙っているだけで、話なんて一言も、いや、声も発してなかったはずだ)


 ジュエルイアンは、ジューネスティーンと出会った時の、シュレイノリアについて思い出していたのだ。


 だが、その記憶の中には、何も印象に残っているような事は無かったのだ。


「ああ、思い出した。 一緒にいた女の子だな。 でも、俺は、その子の声も聞いてないぞ。 まあ、エリスリーンから、魔法が凄いとは聞いていたから、多分、そっちの方面では力を発揮するだろうな」


 ヒュェルリーンは、ジュエルイアンが覚えていてくれたので、少しホッとした。


 ただ、ジュエルイアンは、大陸に覇をとなえる大商会の筆頭であり、一度、面識を持てば、殆どの人の事は把握している。


 そのジュエルイアンが、ヒュェルリーンのシュレイノリアを知っているかの質問に対して、僅かに間をおいて答えたので、ジュエルイアンの印象に残っていなかったのかと、内心、焦っていたようだ。


「ええ、その子が、今回のエルメアーナとのディスカッションで、かなり、踏み込んだ形で、エルメアーナに説明をしてくれました」


 ヒュェルリーンは、ジュエルイアンの表情が変わる事が判った。


 それは、今まで、大した興味を与えなかった人物が、実は、大物だった事が分かった時のような表情だった。


「ベアリングについて、エルメアーナは全くの素人でしたが、それを上手くジュネスと一緒になって説明してくれました」


 それを聞いて、ジュエルイアンは、更に表情が変わった。


(どういう事だ? 話を聞いていると、そのシュレという女の子が、黒幕で、ジュネスが表に出ているみたいじゃないか。 まあ、今回の場合は、黒幕とは言い難いが、状況的に、そんな様子だな)


 そして、ジュエルイアンは、何だか面白そうな表情をしていた。


 ジュエルイアンとしたら、人の内面が徐々に薄皮を剥ぐように内面が見えてくる事が楽しいのだ。


 それは、まるで、推理小説を読み、その探偵役が、犯人を徐々に追い詰めているような感覚にでもなったようだったのだ。


「そう言えば、ジュネスが、始まりの村で説明してくれた時だが、パワードスーツは魔法紋によって動くと言っていたな。 その魔法紋の開発は、その子が行っているのか?」


 そのジュエルイアンの質問を聞いて、ヒュェルリーンは苦い顔をした。


 それは、自分の知らない内容を、ジュエルイアンが、質問してきたので、その答えを持っていない事が苦痛に思えたようだ。


「申し訳ございません。 そこ迄は、把握しておりません」


 ヒュェルリーンは、申し訳なさそうに答えたが、ジュエルイアンは、その答えが戻ってくるとは考えてなかったようだ。


「ああ、別に気にするな。 お前のおかげで、ジュネスのパワードスーツの秘密が、また、一つわかったって事じゃないか。 これからは、ジュネスだけでなくシュレにも注意しておくことだ。 ……。 魔法紋の開発か。 ……。 案外、ジュネスのパワードスーツより、シュレの魔法紋の開発の方が、早く利益につながるのかもしれないな」


 ヒュェルリーンは、ジュエルイアンの言葉を聞いていて、最後の方の言葉が独り言なのか、話しかけてきているのか、微妙なニュアンスに少し困ったようだ。


 筆頭秘書官であるヒュェルリーンにとって、自分の上司への対応は必須なので、問いかけについては、はっきりと答える必要が有ったのだが、今の後半のジュエルイアンの発言は、何とも言えない様子だったのだ。


 独り言について反応されると、独り言を言った方としては、何とも言い難い少し恥ずかしい感情が出てしまう。


 ヒュェルリーンは、そのどちらともつかないジュエルイアンの発言に、どう向き合ったらよいのか困ったようだ。


「ヒェル。 俺は、どうも、そのシュレという子には、相性が悪いのかもしれない。 お前に言われるまで、記憶の底に封印されてしまってたからな。 だが、これからは、ジュネスと一緒に、そのシュレという子にも注意を向けておいてくれ。 その魔法紋の開発についても気になる」


 ヒュェルリーンは、ホッとした様子でジュエルイアンの言葉を聞いた。


「そうですね。 ジュネスとシュレは要注意ですね。 それと、残りの4人も気をつけて見ておく事にします。 何か有れば報告します」


 ジュエルイアンは、ニヤリとした。


「そうだな。 類は友を呼ぶと言うからな。 残りの4人についても、注意しておいて損はないだろうな」


 ジュエルイアンは、ヒュェルリーンの提案に乗った。


 そして、ジューネスティーンとシュレイノリアによって、もたらせられるであろう新たな商品について、ジュエルイアンは思いを巡らせるのだった。


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