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後期の武道大会  決勝戦後の控室


 控室の扉を開けるとメンバー達が出迎えてくれた。


「にいちゃん、凄いよ! 本当に優勝しちゃったよ! 本当に凄かったよ!」


 早速、レィオーンパードが、大喜びで声を掛けてきた。


「ああ、ありがとう、レオン」


「おめでとうですぅ。一時はぁ攻撃を受けるだけだったからぁ、心配しましたぁ」


「ジュネス、おめでとう。オイラも自分の事のように嬉しいよ」


 3人が嬉しそうにジューネスティーンに声を掛けるのだが、そんな中、アンジュリーンは、腕を組み足を軽く開いて胸を張ってご満悦な表情をしていた。


「ジュネス、優勝おめでとう。私もメンバーとして鼻が高いわ!」


 誇らしげに声を掛けるアンジュリーンを、今ジューネスティーンに声を掛けた3人が残念そうな表情で見た。


 その視線に気がついたアンジュリーンは、3人が何で残念そうな目で自分を見ているのかといった表情をした。


「な、何よ」


「上から目線の賛辞ね」


 ジト目でアリアリーシャが言うと、レィオーンパードがヤレヤレといった態度をした。


「何だか、アンジュがにいちゃんを勝たせたみたい」


「……」


 そんな2人の言葉をカミュルイアンは黙って聞き、アンジュリーンの様子を伺っていた。


 ここで、カミュルイアンが、2人の言葉に便乗して同じような事を言ったら、その後のアンジュリーンがどうなってしまうのか気になったようだ。


「アンジュ、ありがとう。次席との対戦の様子を聞いていたから勝てたよ」


 ジューネスティーンは、場の雰囲気を変えるように声をかけた。


 その言葉を聞いて、アンジュリーンは顔を少し赤くした。


「それに、次席は、アンジュとの試合だったから槍を使ったみたいだね。きっと、剣より槍の方が得意だったみたいだから、アンジュの実力を認めていたんじゃないかな」


 その言葉にアンジュリーンは嬉しそうに、両手を頬に当て両足の内側を擦るような仕草をし何か言おうとすると、アリアリーシャが慌ててアンジュリーンに一歩近寄った。


「アンジュゥ、良かったですねぇ。あなたが次席とぉ対戦していた事がぁ、ジュネスに繋がったわね」


 アリアリーシャが、アンジュリーンの言葉を遮るように声を掛けた。


 アリアリーシャとしたら、アンジュリーンが何かとんでもない一言を言うのではないかと思えた。


 それは、これ以上喋らせては、場の雰囲気を壊してしまうと考えていたと、レィオーンパードにもカミュルイアンにも伝わっていた。


 アンジュリーンは、ジューネスティーンとアリアリーシャの言葉が嬉しかったので顔がかなり緩んでいた。


 その様子をレィオーンパードは黙って見ていたのだが、隣に居るカミュルイアンの耳に顔を近づけた。


「姉さん、良くわかっているよね。きっと、何かとんでもない事を言おうとしたんだぜ。アンジュは、考えないで喋るから、相手を怒らせたりするでしょ。だから、黙っている方がいいよね」


 レィオーンパードは、カミュルイアンに小声で話しかけた。


「黙っていれば美人で通るのに、余計な事を言うから男が寄って来ないんだぜ。綺麗な服もいっぱい持っているけど、デートするなんて話なんか聞いた事が無いじゃん」


 レィオーンパードは、ニヤついた表情でカミュルイアンを見ながら言うのだが、そのカミュルイアンは青い顔をしていた。


 レィオーンパードは、その表情が気になり、カミュルイアンの視線の方向に目をやった。


 そこには、鬼の形相のアンジュリーンがレィオーンパードを睨んでいた。


 2人の視線が合ってしまった。


 レィオーンパードは、内緒話のつもりでカミュルイアンに話したのだが、それはアンジュリーンに筒抜けだったのだ。


 エルフ属は耳が長い事もあり、レィオーンパードのようなヒョウの亜人より耳が良い。


 レィオーンパードは、聞こえないように小声で話したつもりだったのだが、アンジュリーンには筒抜けだった。


 ジューネスティーンとアンジュリーンのフォローは、レィオーンパードによってぶち壊されてしまった。


 その事に気がついたレィオーンパードは、慌ててカミュルイアンの後ろに隠れた。


 そんなレィオーンパードを怒鳴りつけようとした瞬間、咳払いが聞こえた。


「おい! ジュネス!」


 咳払いの主はシュレイノリアだった。


 アンジュリーンの前に出ると、そのままジューネスティーンの前まで歩いて行った。


「お前は、どこか痛い所があるんじゃないのか! あんな無茶な試合をしおって! このパワードスーツは、フルメタルアーマーを改造して作ってあるんだ! 身体の全ての関節をカバーしてない状態で、あんな戦い方をしたら、自身の身体に影響があったはずだ!」


 シュレイノリアは捲し立てるように言った。


 試合中、何度も踏み込んで間合いを詰めた時、その速度は常人の速度よりも早かった事から、人工関節の付いていない場所に力の反動が有ったとシュレイノリアは思っていたようだ。


「あ、いや、大丈夫、だと、思う」


 ジューネスティーンは、慌てて答えた。


「今は、アドレナリンが上がっているから、痛みを感じてないだけだ! さっさと装備を外せ! 直ぐに確認する!」


 そう言って、ジューネスティーンの手を取るとレィオーンパードを見た。


「レオン! お前は、装備を外すのを手伝う! そんな所で隠れてないで一緒に来い!」


 そう言って、ジューネスティーンを引っ張って控室の隅の方に移動して行ったので、レィオーンパードも慌てて、その後に続いた。


 シュレイノリアの剣幕に残った3人は呆気に取られてしまった。


 アンジュリーンもレィオーンパードの話を忘れてしまった様子で3人を見送っていた。


「全くもう、何だったのよ」


「まあ、オイラ達より付き合いは長いからね」


「あのジュネスの装備だってぇ、始まりの村で作ったのだからぁ、シュレもレオンもぉ、何もかも分かっているのですねぇ」


 3人は呆然と、その様子を見送ると、お互いの顔を見合わせてから、ジューネスティーン達の方に歩いて行った。


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